手のしこり:医師が考える原因と対処法|症状辞典
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授
門野 岳史 先生【監修】
手のしこりは、手の皮膚や皮膚の下の組織にできる隆起した塊です。原因により大きさはさまざまで、軟らかいものも硬いものもあります。
こういった場合に考えられる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
手のしこりの中には、病気が原因となって起こっているものもあります。
手の皮膚にできる良性の腫瘍がしこりの原因となっている場合があります。
ガングリオンは、関節の周辺にゼリー状の粘液が詰まった腫瘤ができる病気です。多くは、手の甲や指の付け根に発生します。爪の根元にできることもあり、この場合粘液嚢腫とも呼ばれます。
大きさは米粒ほどからピンポン玉ほどのサイズのものまでさまざまで、軟らかい場合も硬い場合もあります。通常、痛みなどの症状はありませんが、発生する場所によっては神経を圧迫して痛みやしびれが出たり、手を動かしづらくなったりします。
手のひらに硬いしこりができ、徐々に皮膚がひきつって指が伸ばしにくくなる病気です。特に薬指・小指周辺に多く生じます。多くの場合、痛みなどの症状はありませんが、悪化すると指が曲がって伸ばせなくなり、日常生活に支障が出ることもあります。
脂肪腫は、脂肪細胞から発生する良性の腫瘍(脂肪の塊)です。通常1~10cm程度の大きさで、背中や肩、首、上腕、お尻、太ももなど体幹に近い部分に多く発生しますが、脂肪のある部位なら全身のどこにでも生じます。
腫瘍は軟らかく、ほとんどの場合、痛みなどの症状はありません。命にかかわる腫瘍ではありませんが、見た目が気になる場合や悪性である可能性が否定できない場合は治療が検討されます。
手の皮膚がウイルスなどに感染し、しこりのようなできものが生じる場合もあります。
手足や指によく生じる一般的ないぼで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により発生します。ヒトパピローマウイルスは正常な状態の皮膚には感染しませんが、傷があると皮膚の細胞の中に入り込んでいぼができます。
いぼの大きさは豆粒程度までで、表面はざらついています。同時に複数のいぼができることもまれではありません。
粉瘤は、皮膚の下に袋のようなものができ、内部に角質や皮脂などの老廃物がたまってしこりのようになる腫瘤です。多くの場合、顔や首、背中、耳の後ろに生じますが、手のひらや足の裏にできることもあります。
手のひら・足の裏にできる粉瘤は、外傷などによる傷がきっかけとなって発生します。また、いぼと同様にヒトパピローマウイルスが発生に関わっていることも分かっています。
まれに、悪性の腫瘍が原因で手のしこりが生じている場合もあります。
皮膚や消化管、腺組織といった上皮性組織から発生する悪性腫瘍を“がん”と呼び、それ以外の骨や軟部組織(体を構成する軟らかい組織)から発生する悪性の腫瘍を“肉腫”と呼びます。中でも、脂肪、筋肉、神経などの軟部組織から発生する肉腫を軟部肉腫と呼びます。しこりや腫れが生じても、多くの場合は痛みがありません。
軟部肉腫の中でもっとも頻度が高いのが、脂肪に発生する脂肪肉腫です。脂肪肉腫はさらに以下のような種類に分けられます。
脂肪腫などの良性の腫瘍であれば命にかかわることはありませんが、痛みや手のしびれなどの症状がある場合、しこりによって日常生活に支障が出ている場合は医療機関に相談しましょう。特に、しこりが大きい場合や以前より大きくなっている場合は、良性か悪性か検査するためにも早めの受診が推奨されます。
受診に適した診療科は皮膚科、形成外科、整形外科などです。手外科など、手を専門に扱う診療科がある場合もあります。
受診の際は、いつからしこりがあるのか、痛みなどの症状はあるか、大きさや形に変化があるかを医師に伝えるようにしましょう。
日常生活上の原因によって手のしこりが生じている場合もあります。
蚊やブユなどの虫に刺されると皮膚が腫れてかゆくなり、しこりのようなものができることがあります。特に、ブユに刺された後に掻きむしってしまうとかゆみのあるしこりが長期間残る場合があり、これを“痒疹”と呼びます。
痛みやかゆみが強くない場合は、市販のかゆみ止めなどで様子を見てもよいでしょう。多くの場合は1~2週間以内に症状が治まってきますが、症状が強い場合や治らない場合は皮膚科を受診しましょう。
虫刺され予防としては、屋外での活動時、特に虫の多い水辺や藪に行く際は肌を露出する服装を避け、虫除け効果のあるスプレーやローションも使用しましょう。
手の皮膚の一部分に圧迫や摩擦などの慢性的な刺激が加わると、皮膚の組織が盛り上がって厚くなり、たこ(胼胝)ができる場合があります。通常の場合、押しても痛みはないか軽度です。指にできる“ペンだこ”が代表的ですが、職業や生活習慣によって手のさまざまな部位に生じます。
特に治療は必要ありませんが、気になる場合は市販の軟膏を塗って様子を見てもよいでしょう。医療機関では、角質剥離薬やメスなどでたこを取り除く治療が行われることもあります。ただし、もっとも重要なのは、たこの原因となっている生活習慣を見直すことです。
日常生活での対処を行っても手のしこりがよくならない場合には、思いもよらぬ原因が隠れていることもあります。手のしこりの明らかな原因が思い当たらない場合や痛みなどの症状がある場合、大きさや形が変化している場合などは医療機関に相談しましょう。