鼻水が茶色い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
国際医療福祉大学成田病院 耳鼻咽喉科 教授
岡野 光博 先生【監修】
鼻水は病気だけでなく、涙を流したときやあくびをしたときなどにも現れる症状であるため軽く考えられがちです。
しかし、鼻水は思いもよらない原因によって引き起こされることも珍しくなく、長引く場合は注意が必要な症状でもあります。特に、“茶色い鼻水”は体に何らかのトラブルが起きているサインかもしれません。
これらの症状が見られた場合、原因としてどのような症状が考えられるでしょうか。
茶色い鼻水は、日常生活での好ましくない習慣によって引き起こされることがあります。
鼻の粘膜は非常にデリケートなため、頻回に強く鼻をかみすぎると粘膜にダメージが加わって出血を起こし、茶色の鼻水が出ることがあります。
鼻をかむときは、やや下を向いてティッシュなどで鼻を押さえ、軽く息を吐きだすようにしましょう。力任せにかむと鼻の粘膜だけでなく、耳にダメージを与えることもあるので要注意です。
鼻の粘膜は粘液で覆われており、適度な湿度を保っています。そのため、冬場など空気が乾燥しやすい時期は鼻の粘膜が乾燥してダメージが生じ、茶色の鼻水の原因となる出血が生じることも少なくありません。
鼻粘膜の乾燥を防ぐには、第一に加湿器などを用いて適切な湿度をキープすることが大切です。また、空気が乾燥しやすい季節では、外出時にマスクを着用するのもよいとされています。
日常生活での習慣を改めても茶色の鼻水が改善しない場合は、何らかの病気が原因の可能性があります。中には重篤な病気が潜んでいるケースもありますので、軽く考えず一度は病院で相談するようにしましょう。
茶色の鼻水が病気の症状のひとつとして現れることがあります。茶色の鼻水が出る代表的な病気は以下の通りです。
茶色の鼻水は、鼻や副鼻腔に生じる炎症によって生じることがあります。
副鼻腔内にウイルスや細菌などが侵入して炎症を引き起こす病気です。鼻づまりや顔の痛み、頭重感などの症状を引き起こしますが、炎症が慢性化すると副鼻腔内に膿が混ざった粘液がたまるようになります。たまった粘液は鼻の中を通って鼻水として排出されますが、副鼻腔や鼻の中の粘膜が荒れて微小な出血が生じると、酸化して茶色くなった血液と混ざって鼻水の色が茶色っぽくなることがあります。
花粉やハウスダストなど、アレルギーの原因となる物質を吸い込むことによって生じる病気です。鼻の粘膜が刺激されるため、さらさらとした透明な鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状が現れます。
また、症状が長引いて何度も鼻をかんだり、鼻を触ったりすることで鼻の粘膜にダメージが及ぶと、粘膜からの古い出血が鼻水に混ざって茶色っぽい鼻水が出ることも少なくありません。
いわゆる“かぜ”と呼ばれるもので、鼻や喉の粘膜にウイルスや細菌が感染することによって引き起こされる病気です。発熱や倦怠感などの全身症状とともに、喉の痛み、鼻水や鼻づまりといった症状が現れます。
鼻水は発症して間もなくの頃は透明でさらさらした性状ですが、時間が経過するとウイルスや細菌、白血球などの死骸が含まれるようになるため、粘り気のある白色や緑色へと変化していきます。また、頻回に鼻をかむなど鼻粘膜にダメージが加わって微小な出血が生じると、鼻水と混じり合って茶色の鼻水として排出されることがあります。
鼻の中に綿、髪、ナッツや小さなおもちゃなどの異物が入り込んでしまう病気です。主に小児や認知症の高齢者などに起こり、鼻の閉塞感や鼻血などの症状が現れます。しかし、目立った症状がないまま発見が遅れると、異物によって圧迫された鼻の粘膜が炎症を起こしたり出血したりすることで、茶色く悪臭を放つ分泌液が鼻水として排出されることがあります。通常は左右の鼻のどちらかに症状が現れます。
茶色の鼻水は、鼻や副鼻腔に生じる病気によって引き起こされることがあります。
鼻や副鼻腔に発生するがんのことで、比較的珍しい病気です。
がんが発生する部位によっても異なりますが、早期の段階ではほとんど症状がないのが一般的です。しかし、進行すると鼻づまりや顔の痛みなどを引き起こします。また、がんの組織は脆いため、空気の乾燥など些細な刺激で出血を起こしやすく、酸化した血液が茶色い鼻水として現れることも少なくありません。また、鼻水は悪臭を伴うのも特徴です。
副鼻腔の中にカビ(真菌)が入り込む病気です。糖尿病のある方などで免疫力が低下すると、真菌が粘膜の中に入り込みます。血管にも真菌が入り込むと出血し、茶色い鼻水が排出されることがあります。真菌が鼻から脳や目に入り込むと、髄膜炎、動脈瘤、視力障害などを生じることがあり、命に関わる重篤な病気です。
茶色の鼻水は、鼻や副鼻腔内で生じた出血がある程度時間を経て酸化した状態で排出されるものです。鼻の粘膜はデリケートなため出血を起こしやすく、茶色の鼻水はよく見られる症状です。中には思いもよらない病気が背景にあるケースもあるため看過できない症状でもあります。
とくに、茶色の鼻水以外にも喉の痛みや鼻づまりなどの症状があるとき、茶色の鼻水が頻繁に出るとき、悪臭を伴う茶色の鼻水が出るときはできるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
受診に適した診療科は耳鼻咽喉科です。ただし、小児の場合はかかりつけ医の小児科で相談するのもひとつの方法です。また、成人の場合でも通院中の内科などがある場合、まずはかかりつけ医に相談するのもよいでしょう。
受診の際には、いつから茶色の鼻水が出ているのか、随伴する症状はあるのか、茶色の鼻水が出る前に何か症状はなかったのかについて詳しく医師に伝えるようにしましょう。