
「多発性骨髄腫」は、身体を異物から守る免疫系で重要な役割を担っている「形質細胞」という細胞が「骨髄腫細胞」にがん化してしまう、治療の難しい病気です。多発性骨髄腫では、貧血・骨折などさまざまな症状があらわれます。多発性骨髄腫の症状とそれが起こる理由について、国立国際医療研究センター(当時。現・東京女子医科大学)の萩原將太郎先生にお聞きしました。
初期症状としては腰痛と「不意な」骨折が多いです。例えば、「ゴルフのフルスイングをした後に中高年の男性の骨がボキっといった。調べた結果、実は上腕骨が折れていた」というケースがありました。ゴルフのフルスイングは全身の骨格をフルに使いますが、それでも普通はありえない骨折なのです。このような病的な骨折や腰椎の圧迫骨折などに、実は多発性骨髄腫が隠れていることがあるので注意しなければなりません。
骨の細胞には「骨芽細胞」という骨を作る細胞と「破骨細胞」という骨を溶かす細胞があります。これらは、骨を作っては表面をなめらかにするということを繰り返しています。骨髄腫細胞がふえてくると、骨芽細胞を抑制するホルモンが出てきます。さらには、破骨細胞を活性化して骨を溶かす刺激をしてしまいます。つまり、骨を作れないのに骨が溶けていくという状況となってしまうのです。また、骨が溶けると後述する高カルシウム血症になります。
高カルシウム血症になると、吐き気や意識障害などを催します。身体中がだるくなることもあります。
息切れなどの貧血に伴う症状で気づくことも多いです。この原因は、骨髄腫細胞がIL-1、TNFなどという炎症性のサイトカイン(特殊なたんぱく質)を出すことにあります。これにより赤芽球(赤血球の元となるもの)がうまく増えず、赤血球を作れなくなってしまうのです。サイトカインにはヘプシジンという物質を増やす働きもあり、それにより鉄代謝の異常も起きてしまいます。鉄は赤血球を作るためにとても大切な役割を果たしています。(後述するように、腎臓がやられると赤血球を作るための「エリスロポエチン」というホルモンも出なくなってしまいます)
多発性骨髄腫によりMタンパクが血液中にたまってくると、血液がドロドロになります。これを「過粘稠度症候群(かねんちゅうどしょうこうぐん)」といいます。この状態になると、頭痛やめまいなどの症状が現れてきます。
腎臓は細い管(血管や尿細管)の集合です。その細い管に、骨髄腫細胞の出すMタンパクがつまってしまいます。そして、腎臓の細かい血管にも栓をしてしまいます(「キャストネフロパチー」といいます)。さらには、後述する「アミロイド」が沈着をします。骨髄腫細胞が直接浸潤していく(腎臓に広がっていく)こともあります。また、ときどき逆に腎機能障害から多発性骨髄腫が見つかることもあります。自分自身の経験では、人工透析を専門とする病院から「原因不明の腎機能障害」でコンサルトを受けたところ多発性骨髄腫が見つかったこともありました。
以上に述べたケース以外にも、肝臓や脾臓が腫れてくることも稀にあります。これは数年に1回見るか見ないかという頻度です。
多発性骨髄腫ではMタンパクだけでなく、アミロイドという繊維状のタンパクも大いに悪さをします。Mタンパクが何らかの変化をすることにより、アミロイドというタンパクになります。そしてアミロイドは、様々な臓器(腎臓や末梢神経、心臓など)に対してたまっていきます。
心臓にアミロイドがたまると、拡張障害(広がらなくなること)を引き起こしてしまいます。こうなってしまうと、心不全の末期状態になります。
また、舌にアミロイドが沈着してしまうと「巨舌症状」が出ます。舌が大きくなってしまい、例えるなら口の中にトノサマガエルが一匹入り込んでいるくらいの大きさになることがあります。舌が大きくなりすぎて呼吸ができなくなることもあります。
腎臓・肝臓にアミロイドがたまると、腎機能障害・肝機能障害を引き起こします。また、皮膚にアミロイドがたまることもあります。そのようなときにはお腹の脂肪を調べるとアミロイドがたまっているのを見ることができます。
東京女子医科大学 血液内科講師
萩原 將太郎 先生の所属医療機関
周辺で多発性骨髄腫の実績がある医師
東京女子医科大学 血液内科講師
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順天堂大学大学院医学研究科 血液内科学 主任教授
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