
「多発性骨髄腫」とは、身体を異物から守る免疫系で重要な役割を担っている「形質細胞」という細胞が「骨髄腫細胞」にがん化してしまうという、治療の難しい病気です。多発性骨髄腫の高齢者向けの治療について、引き続き国立国際医療研究センター(当時。現・東京女子医科大学)の萩原將太郎先生に前々回・前回に引き続きお聞きしました。
一般的に66歳以上の方や、65歳以下であっても重い肝機能障害・腎機能障害などがある方の場合には、造血幹細胞移植は行ないません。
このような移植非適応の患者さんに対する治療は、「寛解導入療法」とそれに引き続く「維持療法」によって行います。
移植非適応の場合での寛解導入療法では、移植適応患者に対する「寛解導入療法」と同様にボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミド、デキサメタゾン等を骨格として使いますが、造血幹細胞採取を行わないため、これらに加えてメルファランを最初から使うことができます。
維持療法では、サリドマイドやレナリドミド、ボルテゾミブなどを用います。維持療法は、病勢が再び悪化するまで、あるいは1-2年間続けます。
高齢の患者さんでは、個人によって体力が随分異なります。そのため、個人の状態、体力に合わせて抗がん剤の量を調整する必要があります。
上の表は、高齢者の方に多発性骨髄腫の治療薬を投与するときの指標です。高齢であっても元気で心臓や腎臓などの臓器に障害がなければ、抗がん剤の減量はそれほど必要ではありません。しかし、日常生活に介助を要するような状態であれば60代の患者さんでも抗がん剤は減量した方がよいと思われます。このように3つのリスクファクターのうち、いくつ当てはまるかで評価していきます。レベル0、レベル1、レベル2と徐々に抗がん剤を減らしていきます。
少し前まで、多発性骨髄腫の治療といえば「ビンクリスチン・ドキソルビシン塩酸塩・デキサメタゾン」の3種の薬を用いるVAD療法や、「メルファラン・プレドニゾロン」の2種を用いるMP療法が中心でした。しかし、数年前から新しい薬剤が続々と開発され、今後大きく治療が変わっていく可能性はあります。
「サリドマイド」「レナリミド」「ボルテゾミブ」に加え「ポマリドミド」が2015年5月から保険収載され、さらに今後「パノビノスタット」「カーフィルゾミブ」「エロツズマブ」「ダラツムマブ」「イクサゾミブ」など新薬の治験が進んでいます。
多発性骨髄腫に対しては様々な新規薬剤が出てきており、選択肢が増えてきました。今は難病であることは間違いありません。それでも、予後(治療後の見通し)は大きく変わっていく可能性があります。
そんな中でも引き続き必要になりそうな薬が「メルファラン」です。新規薬剤とメルファランの組み合わせがよく効きます。メルファランは1950年代に開発された長い歴史を持つ薬です。古い薬ですが、移植非適応の患者さんでの寛解導入療法だけでなく、新規薬が効きにくい再発の際などで、メルファランだけは有効なこともあります。
多発性骨髄腫は、骨にある「破骨細胞」という骨を破壊する細胞を刺激することにより骨が徐々に溶け、骨折を起こしやすくなる病気でもあります。骨の病変が進むと体の痛みが強くなり、時に歩行障害をきたします。
このような骨病変の進行を予防するためには、ビスフォスフォネート(ゾレドロネート)あるいは抗RANKL抗体(デノスマブ)などを定期的に投与することが必要です。同時にカルシウム製剤およびビタミンDを毎日内服するべきです。
ひとつ注意しなければならない点は、ビスフォスフォネートや抗RANKL抗体は、顎の骨を傷めることがあり、重症になると顎の骨の壊死をきたすことです。これは、歯槽膿漏や歯周炎があると起きやすいため、これらの薬剤を開始する前に必ず歯科を受診して十分な検査と治療を行っておく必要があります。
多発性骨髄腫では、正常な免疫グロブリンの分泌が低下するため、さまざまな感染症に対する抵抗力が低下します。とくに、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌には極端に弱くなるため、注意が必要です。多発性骨髄腫の患者さんは必ず肺炎球菌ワクチンを打つべきです。
東京女子医科大学 血液内科講師
萩原 將太郎 先生の所属医療機関
周辺で多発性骨髄腫の実績がある医師
東京女子医科大学 血液内科講師
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順天堂大学大学院医学研究科 血液内科学 主任教授
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