性にまつわる話は他人に相談しにくい内容ですが、特に女性では陰部の臭いに悩んでいる方が多いようです。これから数回にわけてご紹介するのは、この陰部の臭いの原因となる細菌性腟炎(BV:bacterial vaginosis)という病気です。 性感染症治療の第一人者である尾上泰彦先生に、細菌性腟症の症状や臭いについて紹介していただきました。
年齢:30歳
性別:女性
主訴:おりものの増加と臭いの変化
私の医院にいらしたときには(パニック障害の安定剤や花粉症などの)複数の薬を服用されているとのことでした。数か月間にわたって帯下(たいげ。おりもののこと)が多く、 臭いも変化した状態が続いているとのこと。帯下が増えた不快感だけでなく、臭いによっ て周囲の人たちにも気づかれているのではないのかという心配も抱えている状態でした。
年齢:19歳
性別:女性
主訴:陰部の臭いを指摘された
パートナーの方に、性行為のときだけに独特な臭いがするという指摘をされたとのことでした。詳しく話を聞いてみますと、何かしらの性感染症を抱えているということはありませんでした。清潔志向や臭いが気になるあまり腟内部を洗ってしまうことで雑菌が繁殖、かえって臭いなどの症状を悪化させてしまうことがあります。しかし、この方は腟内部を洗ってないということでした。
年齢:21歳
性別:女性
主訴:性感染症の検査結果は陰性だったが、帯下の臭いが気になる
この女性は陰部の臭いが気になり性感染症の検査をしたところ、結果は陰性だったものの「カンジダ(真菌)になっている」との診断を受けたそうです。このカンジダ症と臭いとの関連を気にしていました。
これまでご紹介した患者さんに共通する症状は「陰部の臭い」ですが、どのような臭いのときに細菌性腟症を疑うのでしょうか。
細菌性腟症の約半数は無症状で、たとえ自覚症状があったとしても帯下の不快感は軽いものであることが多いです。腟分泌物は灰色であることが多く、粘度が低く均質性のものとなります。 細菌性腟症の特徴は「魚臭帯下」といわれる悪臭の強い帯下ですが、これは「アミン臭」と呼ばれる、スルメや魚のような臭いと例えられることが多い臭いです。このアミン臭は、特定の細菌が原因で生じるものではありません。腟内の環境が崩れているときに常在菌(通常時から体内にいる細菌)が過剰に繁殖することで発生します。そのため、細菌性腟症とは特定の細菌による性感染症というよりも、ストレスや洗いすぎなどにより腟内に住んでいる乳酸菌が減ってしまうことで雑菌が繁殖し、臭いなどの症状が現れた状態ということができます。
ケース1の患者さんですが、最初の患者さんは年齢的な面から考えて、帯下が多いことに対してそれほど心配する必要はありません。若い女性では子宮腟部にびらんがあるために、帯下が多くなるという可能性も考えられるためです。
ケース2の場合、独特な臭いがするといわれたのは性交時の時のみで、腟内部を洗ってい ないことからも、細菌性腟症の可能性は低いと考えました。この方のように陰部からの臭いがする場合には、すそ腋臭の可能性も考えられます。産婦人科やレディースクリニックなどで詳しい先生に相談されると何かしらの改善策が見つかるかもしれません。
ケース3のカンジダ症との関連を心配されていた方ですが、カンジダ症の原因となるカンジダ・アルビカンスという細菌は、健康な方の体内にも存在している常在菌です。そしてカンジダ症の症状は臭いではなく、外陰部の掻痒感(かゆみ)や白い腟内容物となります。こうしたカンジダ症の症状が現れていないときには、治療を行う必要はありません。この方の場合、何かしらの原因によって腟内の常在菌のバランスが崩れてしまっているこ とが考えられます。
カンジダ症の症状について。詳しくはこちらをご参照ください「カンジダ症は女性に特有の疾患」
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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