インタビュー

小児消化器疾患と内視鏡検査の適応基準

小児消化器疾患と内視鏡検査の適応基準
細井 賢二 先生

東京都立小児総合医療センター 消化器科 医長

細井 賢二 先生

目次
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腹痛や下痢などの症状をきたす子どもの病気の原因は、乳児期、幼児期、学童期など年齢によっても異なりますが、多くは胃腸炎などの感染症です。胃腸炎などの感染症の多くは、一過性の経過で、自然に治ることが多く、診断・治療に内視鏡検査・処置は必要となりません。

しかし、そのほかの消化管ポリープや胃十二指腸潰瘍()炎症性腸疾患などの一部の病気の際は、診断・治療に内視鏡検査を必要とします。今回、東京都立小児総合医療センター 消化器科 医長の細井 賢二(ほそい けんじ)先生に内視鏡検査の詳細について伺いました。

内視鏡検査は成人の患者さんでは健康診断などでクリニックでも気軽に行われる一般的な検査ですが、小児では安全に行うために全身麻酔*や鎮静下での実施が推奨されており、入院で行うのが一般的です。このため、下痢や腹痛などの消化器症状のある小児患者さん全員に内視鏡検査を行うことは適切ではありません。従って、内視鏡検査を実施することによる効果とリスクを患者さんごとにしっかりと判断することが必要であり、小児消化器を専門とする医師による診察が重要であると考えます。

*麻酔科標榜医:西部 伸一先生

子どもの消化器疾患は、炎症性腸疾患などの指定難病から感染性胃腸炎便秘症などの一般的な病気まで幅広く存在します。感染性胃腸炎や便秘症などの病気は、診断や治療に内視鏡検査・処置は必要ないため、行うことはほとんどありません。内視鏡検査の適応となる病気には、潰瘍性大腸炎クローン病を含む炎症性腸疾患や好酸球性消化管疾患、消化管ポリープ、胃十二指腸潰瘍などが挙げられます。

(詳しくは東京都立小児総合医療センター 消化器科 診療内容ページを参照ください)

これらの病気では、食べ物や飲み物の飲み込みづらさ、長引く下痢、反復する腹痛、血便、体重減少などの症状を認めます。これらの症状を認めた場合には、お子さんに侵襲(しんしゅう)の少ない血液検査や便検査、X線検査、超音波検査などを行い、内視鏡検査・処置の必要性を検討します。

上部消化管内視鏡検査胃カメラ)は、経口的にカメラを挿入し、食道・胃・十二指腸を観察する検査になります。またリチウム電池や鋭利なもの、消化管内で停滞してしまう恐れのある大きなものを誤飲してしまった場合には内視鏡スコープで異物を摘出したり、上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの消化管出血の場合には、止血処置(クリップ止血や薬剤噴霧など)を行ったりすることもできます。スコープの太さは小児では最大外径が5〜11mm程度のものを使用します。体格や実施する処置によって使用するスコープの太さも変わりますが、細径スコープを使用すれば乳児でも実施可能です。子どもの状態や体格に合わせて、全身麻酔もしくは鎮静下で実施します。決定します。処置などが必要な場合や小さいお子さんの場合には全身麻酔で実施することがすすめられます。

下部消化管内視鏡検査大腸カメラ)は、経肛門的(けいこうもんてき)にカメラを挿入し、大腸全体と小腸の一部(回腸末端部)を観察することが可能な検査です。大腸ポリープに対するポリープ切除術や大腸内異物除去術、大腸出血に対する止血術などの処置も行うことができます。肛門から近い大腸の一部の観察であれば、生後1か月未満でも行うことができる検査です。体動などがあると出血や穿孔(せんこう)(穴が開くこと)の危険性があるため、上部消化管内視鏡検査と同様に全身麻酔もしくは鎮静下で行います。

粘膜生検とは、消化管の内腔(粘膜面)の組織を生検鉗子で数mm程度採取し、顕微鏡で観察する検査です。粘膜の中で起こっている炎症の程度や細胞・組織の異常などを検出することが可能です。上部・下部消化管内視鏡検査では、消化管の内腔(粘膜面)を観察することができますが、粘膜の観察だけでは診断できない病気もあります。特に子どもの病気では、がんなどの頻度は少なく、炎症性腸疾患や好酸球性消化管疾患などの粘膜内に炎症を起こす病気やヘリコバクター・ピロリ感染症など診断に粘膜生検が必要な病気が多いため、内視鏡による粘膜の観察と同時に粘膜生検を行います。

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