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インタビュー

切り傷・擦り傷など子どもの怪我の治り方-傷口は何日ぐらいで治る?病院の受診は必要?

切り傷・擦り傷など子どもの怪我の治り方-傷口は何日ぐらいで治る?病院の受診は必要?
萩原 佑亮 先生

東京都立小児総合医療センター 救命救急科

萩原 佑亮 先生

記事1『子どもが怪我を負ったとき緊急処置が必要になるケースとは』では、子どもが怪我をしたときに見る注意点についてお話ししました。今回は、子どもの怪我で代表的な切り傷・擦り傷の一般的な経過について、東京都立小児総合医療センター 救命集中治療部救命救急科の萩原佑亮先生にお伺いしました。

子どもはあらゆる物に興味を示して触ったり動いたりします。たとえばそこで転んだときに、切り傷・擦り傷を作ります。切り傷とは、鋭利なもので切れた傷やぶつけて切れてしまった傷などのことをいいます。擦り傷とは擦過傷ともいい、箒(ほうき)で掃いたようにできた傷のことです。

傷の治療には、自然治癒力を妨げないようにすることが重要になってきます。そのためには、傷が感染・乾燥しないよう注意が必要です(応急処置については記事3『子どもの傷に対する家庭での処置方法』を参照)。

記事1『子どもが怪我を負ったとき緊急処置が必要になるケースとは』でもお話したように、親御さんが心配に思う場合は受診して構いません。また、以下の場合も病院を受診しましょう。

・傷口が大きい・深い

・血が止まらない

・傷口に異物が入り込んでしまっている

「子どもに傷跡を残したくない」という思いは、皆さん同じでしょう。一般的な擦り傷(擦過傷)であれば1週間から10日程度、少し深い傷の場合が2週間程度で、乾燥したピンク色の新しい皮膚が出現してきます。これを上皮化(じょうひか)といいます。上皮化が完了するまで、傷口は多少滲出液(しんしゅつえき:傷口からにじみでる液体のこと)で濡れているかもしれません。浸出液の量は、最初の数日間は多いのですが、約5日経過すると適正な量に減少してきて、10日程度で乾燥します。

滲出液が多い時期は、滲出液をある程度吸収しないと周りが液でぐちゃぐちゃになってしまうため、傷口にくっつかない特殊なガーゼで患部を覆います(一般的なガーゼでは傷口からの滲出液を過度に吸収してしまい、傷口にくっついてしまう恐れがあります)。滲出液が少なくなったら市販の傷用パッドをあてます。

傷用パッドは吸収できる液の量が少ないため、滲出液の量が落ち着いてこないと何度も交換しなければならず、手間がかかります。滲出液の量がそれほど多くなれば、はじめから傷用パッドを用いても構いません。

傷口が感染した場合は、治るまでの期間が少々長引くことがあります。しかし、適切な対処をしていればほとんどの傷は感染せずに治癒します。そのため、すべての傷に対して予防的に抗生物質を投与する必要はありません。

縫合(ほうごう:縫い合わせること)が必要となる開いた傷については、場所によって異なりますが、傷口自体は1週間から10日程度でくっつきます。子どもの傷の種類は、ぶつかってできた傷(挫創:ざそう)が圧倒的に多いので、傷口の周りには必ず擦り傷(擦過傷)があります。一方、ガラスの破片やカッターなど鋭利なもので切れた傷(切創)は頻度が低いです。

開いた部分がくっついた後残った擦り傷(擦過傷)の治癒過程は、先ほど述べた経過と変わりません。

縫合が必要な傷には、スパッとナイフのようなもので切れた傷(切創)と、ぶつけて切れた傷(挫創)などがあります。

切れて開いている傷でも、傷が浅ければテープやシアノアクリレート(医療用瞬間接着剤)で処置できます。しかし、これらは傷が浅くなければ対応できません。深い傷は糸で縫合する必要があります(髪の毛の生えている頭部であれば、浅い傷に限り髪の毛を糸の代わりにして縫合する方法もあります)。

縫ったほうが確実に処置できることは確かですが、処置には局所麻酔が必要で痛みを伴うため、患者さんの状況にあわせて処置を選んでいます。

ちなみに、医療用瞬間接着剤は目の周囲では使用しづらく、またテープの場合、頻繁に汗をかく部位や毛髪のある部位などには使用できません。

私の場合、切り傷や擦り傷(擦過傷)の縫合処置については親御さんだけでなく、子どもにも必ず説明します。説明もなしに突然針を刺されたり、体を固定されたりしたとしたら誰しも恐怖を感じるでしょう。

まずは局所麻酔が必要になるので、「これから魔法の薬(ここでは麻酔薬のこと)を入れて、傷を触っても痛くならないようにするね。最初のお薬が入るときだけ少し痛いけれど、傷をしっかり治すため一緒にがんばろうね。お薬が入ったら、もう魔法が効くから痛くないよ。」と言います。

局所麻酔薬を痛いと感じさせないための3か条は、「なるべく細い針を使う」「なるべくゆっくり薬をいれる」「薬を人肌にあたためること」といわれています。痛みは注射液が皮膚に入る圧で生じます。この3つがきちんとできていれば、局所麻酔薬の注射による痛みはかなり軽減できるのです。

局所麻酔薬を入れた後は傷口を洗浄し、「バイキンもいなくなったから、これから傷口をぴったんこするね。」と言って縫合します。親御さんは針数(何針縫ったか)を気にされますが、針数と重症度は一致しないので、それほど気にする必要はありません。丁寧に縫合するほど針数も多くなります。

ほとんどの場合、子どもの傷はぶつけたことによってできるものなので、後日内出血することが多いです。内出血を予防するため、受傷当日は傷口の上からガーゼなどで圧迫止血します。

ここでは東京都立小児総合医療センターの例を挙げましたが、治療法の詳細は、子どもの傷の状況や医療機関の方針によって違う可能性があります。

傷の部分は処置を終えた後も最低1日1回水を流してきれいにしましょう。皮脂や汚れがあると細菌が繁殖しやすくなります。感染を疑うような症状(赤み、熱、腫れ、悪臭の膿など)があれば早めに病院を受診します。

傷口を縫った場合の抜糸時期は部位によって様々なので、いつ抜糸のために受診するかは、医師の指示に従いましょう。

また、傷跡の紫外線対策も大切です。

傷口にできた新しい皮膚は紫外線に対する感受性が高く、日焼け(正確には色素沈着)しやすいことが知られています。ただし、紫外線予防をどの程度の期間行うべきか、はっきりとしたエビデンス(医学的な根拠)はありません。

私の場合、紫外線予防は最低限ワンシーズン続けることをお勧めしています。具体的な紫外線予防は、夏場、動物園への遠足などで一日中外出するとき、スキー場など紫外線の強い場所に出かけるときに、日焼け止めを塗ったり、日が傷に当たらないように遮蔽したりするといった工夫が挙げられます。顔など目立たせたくない部分の傷跡であれば、紫外線対策をもう少し長期間行うと安心です。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

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