インタビュー

性成熟期における健康問題

性成熟期における健康問題
麻生 武志 先生

東京医科歯科大学 名誉教授

麻生 武志 先生

この記事の最終更新は2016年06月12日です。

記事2『思春期における健康問題と性』では、思春期における健康問題や性行動に対する問題についてお伝えしました。ここでは「性成熟期における健康問題」について東京医科歯科大学名誉教授 麻生武志先生にお話をお伺いしました。

性成熟期の女性が健康であるための第1条件は、排卵を伴う月経周期が規則的にあり、かつ日常生活に支障を来すような月経に伴う症状・障害がないことがあげられます。しかし現状は、月経困難症子宮内膜症は大きな健康問題の一つであり、月経困難症は月経のある女性の約30%、子宮内膜症は生殖年齢女性の約10%は罹患しているといわれています。ある研究グループが報告したデータによると、月経困難症により1年間で約1兆円の経済的損失があるとされています(平成12年度厚生科学研究「リプロダクティブヘルスからみた子宮内膜症等の予防、診断、治療に関する研究」による)。その損失の内訳には、痛みでどれくらいの時間や日数仕事ができないか・それによりどれくらいの労働損失金額があるか・月経痛に対する診断や治療にどれくらい費用がかかっているのかなどがあり、年間約1兆円に及ぶ経済的損失は、もはや女性だけの問題ではなく、社会全体の問題であるのではないでしょうか。

月経について不安を持っている女性が、どのような対処法をとっているかについてインターネットを用いて調査してみると、友人・知人・家族に相談する女性が大半で、医療機関を受診する女性の割合は限られていました。

 

月経に関連する問題はひとり一人で大きく異なりますので、この結果は多くの女性が正しい対処法に結び付く情報を十分に得ていないことを示唆しています。また月経痛に対する治療経験では、多くの女性が鎮痛薬を使用する対症療法の一時的な効果に頼っています。

 

 

どこに原因があるのかを診断し、適切な治療方法を選択する踏み込んだ治療経験がほとんどないのが現状です。

月経困難症に対する治療方法として最近注目しているのが低用量ピルです。避妊を目的に使用されていますが、それに加えて多くのメリット:副効用があることがわかってきました。月経周期を整える・月経困難症の改善・経血量の調整による鉄欠乏性貧血の改善・骨盤内感染症の予防・卵巣がん・子宮内膜がんの予防などが挙げられます。

しかし副作用として、現在一般的に使用されている低用量ピルでの発症頻度は低いとされていますが、悪心・嘔吐・体重増加・肝機能異常・静脈血栓症・虚血性心疾患・脳血管性疾患などがありますので、使用にあたりリスクについての検討が必要です。例えば喫煙をしている40歳以降でのピルの使用は、血栓症のリスクを高くします。メリット・副作用・自身の生活習慣に合うかなどをチェックし、ピルの効果が最大限に発揮される使用法を啓発・指導することが必要です。

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