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インタビュー

突然の視力低下や失明を引き起こす糖尿病網膜症とは?原因と症状・治療について

突然の視力低下や失明を引き起こす糖尿病網膜症とは?原因と症状・治療について
山下 英俊 先生

山形大学 医学部眼科学講座 教授

山下 英俊 先生

糖尿病網膜症は、日本人の後天的な失明原因の2位に挙げられる、失明要因としてメジャーな疾患です(日本眼科学会雑誌2015年報告による)。年間3000人もの方が糖尿病網膜症によって失明しているとのデータもあります。糖尿病網膜症はどうしてこれほどにも失明する可能性が高いのか、糖尿病網膜症の原因や症状、治療法、そして糖尿病網膜症の患者数や失明する方の割合などについて、ご自身も眼科医であり、山形大学医学部長の山下 英俊先生にお話をうかがいました。

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と並ぶ糖尿病による合併症です。血糖値が上昇することで、網膜の血管がダメージを受ける病気です。

日本人の後天的な失明原因の第2位にも挙がっており(第1位は緑内障)、早期に適切な治療を施さなければ失明のリスクが非常に高くなります。

糖尿病網膜症のメカニズム

眼底には眼球を覆っている網膜という部分があり、外界の光を感知して電気信号に変えて脳に伝えます。その結果、私たちはものをみることができます。つまり、網膜は視力を司る重要な部分といえます。

網膜には視細胞が密集しているため、多くの血管が走っています。糖尿病になると血糖値が上昇し、網膜の血管が詰まったり破れたりしてしまいます。すると出血によって視界が狭くなったり、網膜に十分な栄養が届かなくなったりしてしまい、視力低下や最悪の場合、失明につながるのです。

目をこすっている人

糖尿病網膜症の難しいところは、病状が進行するまで自覚症状がほとんどない方も多くいらっしゃる点です。自覚症状がなければ患者さんは眼科を受診するきっかけがありませんから、病状がどんどん進行し、視力低下や失明が起こります。

糖尿病網膜症が進行すると、

  • 視力の低下(視界がぼやける)
  • 飛蚊症(糸くずや蚊のようなものが見える)
  • 視界が暗くなる
  • 視野が狭くなる

といった症状が現れます。これらの症状は網膜の血管からの出血や、硝子体出血、黄斑浮腫(網膜の中心にある、視細胞が密集した箇所のむくみ)が原因で起こります。

しかしここまで病状が進行してしまうと、治療を開始しても思うように治療効果が得られないことも少なくありません。

レーザー治療

早期に治療することで視力低下・失明を防ぐことのできる治療法が、網膜光凝固術です。レーザーを網膜に照射することで網膜の酸素不足を解消して新生血管の発生を防いだり、すでにできてしまった新生血管の活動性を減らしたりすることができます。新生血管そのものを消すことはできませんが、出血しにくくなります。

また、早期に網膜光凝固術を行うことで、将来の失明の確率を1〜2%まで下げることができます。

しかし網膜光凝固術は病状の進行を食い止められても、すでに低下した視力を回復させることはなかなかできません。あくまで将来の失明を予防するための手術という位置づけです。

網膜光凝固術で糖尿病網膜症の進行を抑えられなかったり、すでにかなり病状が進行し、硝子体出血網膜剥離が生じたりした場合には、硝子体手術が適応になります。

眼球に小さな穴を開けて器具を挿入し、眼球内の出血や増殖した血管の除去、剥離してしまった網膜を再度接着する作業を行います。

最近では極細の器具が開発され、器具を挿入するために切開する部分を、0.5ミリ径など、従来より小さくして手術ができるようになりました。

今では、硝子体出血などが起きるほど重症化しても、技術の向上により硝子体手術によって視力回復の可能性が高くなりました。我々、山形大学眼科の成績では、視力0.1以上に回復する確率はおおよそ8割、視力0.5以上に回復する確率は7割を超えています。ここまで手術で回復できれば、めがねなどで視力矯正することで日常生活に必要な視力を得ることも十分可能です。

近年注目されている治療法が、抗VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor:抗血管内皮増殖因子)薬による治療です。抗VEGF薬は新生血管の発生や出血などを防ぐことで、病状の進行を抑制します。この抗VEGF薬による治療は、黄斑浮腫を改善する効果があるため、視力回復が期待できる点も注目されています。

目

2017年現在、国内の糖尿病患者数はおよそ950万人で、糖尿病予備軍の方は約2000万人いると推定されます。糖尿病患者950万人のうちのおよそ3分の1、約300万人が糖尿病網膜症に罹患していると推計できます。

さらに、現在の糖尿病網膜症患者の約300万人のうち、およそ100万人に実際に視力低下や失明が起きていると考えられます。つまり、糖尿病の患者さんの約10人に1人が、糖尿病網膜症によって視力に何らかの影響が出ているのです。

糖尿病網膜症を発症する確率は、糖尿病の罹病期間が長くなればなるほど高くなります。今では治療法の進歩によって、糖尿病を患っても長く生きられる方が多くなりました。その一方で糖尿病の罹病期間は延び、糖尿病網膜症のリスクを持つ方、そして糖尿病網膜症によって視力低下や失明に至るリスクを持つ方の数は増えています。これは深刻な事態といえるでしょう。

糖尿病の患者さんは糖尿病予備軍を含めると日本には約2000万人いますから、このままでは将来、国内で糖尿病網膜症にかかる人数、そして失明のリスクを抱える人数は今後もどんどん増えていくと予想されます。「糖尿病網膜症が原因で自分は失明しないだろう」ということは決していえない時代がきているのです。

糖尿病網膜症による失明を防ぐには、糖尿病であるとわかった時点で早期に眼科を受診し、糖尿病網膜症の検査を受けることが非常に大切です。早期発見し適切な治療ができれば、網膜光凝固術によって失明する確率を1〜2%程度にまで抑えることができます。

次の記事では、糖尿病網膜症による失明の具体的な予防策や課題、糖尿病網膜症治療の今後の展望についてお伝えします。

 

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