インタビュー

子どもの肺炎の原因―さまざまなウイルスや細菌により起こる

子どもの肺炎の原因―さまざまなウイルスや細菌により起こる
川野 豊 先生

元 埼玉県地域医療教育センター 副参事、埼玉県立小児医療センター感染免疫・アレルギー科

川野 豊 先生

目次
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子どもの肺炎の原因は、ウイルス、細菌、誤嚥(ごえん:食物などが気管に入ってしまうこと)などさまざまです。原因によっては、子どもが重症化する場合もあるため注意が必要です。

また、肺炎を起こした病原体を見つけるための検査方法がない場合は、原因不明となります。

今回は、肺炎の原因について元埼玉県立小児医療センターの川野豊先生に詳しくお話を伺いました。

子どもの肺炎の主なものには、以下の6種類があります。

肺炎の原因となる代表的なウイルスは以下5つです。

  • RSウイルス
  • インフルエンザウイルス
  • アデノウイルス
  • ヒトメタニューモウイルス
  • ライノウイルス

重症化しやすいウイルス①―RSウイルス

大人もRSウイルスにかかりますが鼻風邪程度で終わることが多く、肺炎になることはまれです。しかし、小さい子どもの場合は重い肺炎や気管支炎につながり、場合によっては命にかかわることもあります。

重症化しやすいウイルス②―ヒトメタニューモウイルス

ヒトメタニューモウイルスは、肺炎の症状が重くなりやすいウイルスです。

2014年より検査が簡単になったウイルスであるため、検査される頻度が上がるとともに肺炎の原因ウイルスとして頻度が上がっています。

肺炎の原因となる代表的な細菌は以下3つです。

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ菌
  • 黄色ブドウ球菌

肺炎球菌とインフルエンザ菌は、小さい子どもがかかりやすい細菌です。

しかし、肺炎球菌とインフルエンザ菌による肺炎は、予防接種が普及したことからかなり減りました。

黄色ブドウ球菌による肺炎は、頻度は少ないですが、症状が重くなることが多いため要注意です。

マイコプラズマという微生物が原因で発症します。

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマの感染者が周囲にいると感染します。

1〜2歳の子どもはあまりかからず、だいたい6歳以上の子どもがかかりやすい肺炎です。

誤嚥(ごえん)、誤飲したものは、何であっても肺炎の原因となりえます。

特に何でも口に入れてしまう1歳ほどの小さい子どもは、誤嚥性肺炎を起こしやすいです。また、誤嚥性肺炎の発症に体の抵抗力は関係なく、元気な子どもであっても発症することがあります。

食べ物の誤嚥

ピーナッツ

食べ物の誤嚥と共に病原体が体に入ることもありますが、食べ物そのものが

喉に詰まって炎症の原因になることもあります。

また、喉に詰まった食べ物の成分が溶けて、肺や気管に害を与えて肺炎になることもあります。

自分の胃液を誤嚥

小さい子どもは、食後すぐにお腹が圧迫されてしまうと、胃から食道へ自分の胃液や食べたものが逆流しやすいです。それが気管に入り肺炎を起こすことがあります。

化学物質の誤飲

タバコの吸い殻

化学物質を誤嚥した場合は、病原体が入らなくても、それ自体が気管や肺を障害するため肺炎になってしまいます。

冬にみられるのは、灯油の誤飲です。子どもが灯油を間違えて飲んで、肺が傷んでしまい肺炎になることもあります。

子どもの手の届くところに、口に入ると危険なものは置かないことが重要です。

家に一般的にある誤嚥、誤飲の危険があるもの
  • 灯油
  • 洗剤
  • たばこ
  • 殺虫剤などのスプレー類
  • 化粧品 など

クラミジア肺炎は、クラミジアという病原体が原因となって起こります。

鳥類、は虫類、馬などクラミジアを持っている動物と触れ合うと、感染する可能性があります。動物を触ったあとは、手を洗うことが重要です。

肺炎の原因となる代表的な真菌(カビ)は以下4つです。

  • 白癬(はくせん)菌
  • カンジダ
  • アスペルギルス
  • クリプトコッカス
  • ムーコル     

白癬菌、カンジダ、アスペルギルスの3つは空気中にどこにでもいるカビです。

原発性免疫不全症などの体の抵抗力が弱まる病気がない限り、真菌性肺炎にかかることはまれです。健康な子どもは基本的にはかからない肺炎と考えてよいでしょう。

喘息アレルギーなどがある子どもは、病気のない子どもより病原体への抵抗力が低いといわれています。

特に喘息の子どもは、体内に入ってきたウイルスや細菌を外に出すシステムが上手くはたらかず、気管や気管支が痰(たん)で詰まりやすいため、肺炎になりやすいです。

生まれつき免疫不全症候群の子どもは抵抗力がなく、非常に肺炎になりやすいです。肺炎になったことがきっかけで、免疫不全の病気がわかることもあります。

肺炎の原因となるウイルスや細菌により風邪をひき、重症化した結果、肺炎になります。そのため、熱や咳など風邪の症状から始まります。

ウイルス性の風邪は症状が軽い場合が多いですが、細菌性の風邪の場合は症状が重くなることがあります。風邪の段階で治すことが重要です。

タバコを吸っているお父さん

たばこを吸うこと自体が、気管や肺の粘膜を傷つけます。

健康な気管の粘膜の場合、ウイルスや細菌を防ぐ自浄作用がはたらきます。しかし、粘膜が傷ついている状態だとウイルスや細菌が体内に入りやすくなります。

子どもの前でたばこは吸わない、たばこのある場所へ行かせないなどして副流煙を避けてください。葉巻たばこの副流煙だけではなく、加熱式たばこも念のため避けたほうが安心です。

肺炎は、細菌やウイルスなどの病原体が原因で起こります。

一方で、咳喘息は、ハウスダストなどへのアレルギー反応が原因で起こる気管支の病気です。喘息のようにゼイゼイ、ヒューヒューなどの呼吸音や呼吸困難になるほどの咳が出ることはないですが、悪化すると喘息になります。

主に風邪の症状が重くなり気管支炎を発症し、さらに重くなると肺炎になります。そのため症状は、気管支炎のほうが軽く、肺炎のほうが重いです。

肺炎と気管支炎は症状が似ており、胸のレントゲンを撮り区別をしています。

原因となる病原体や体質によっては、急に肺炎になることもあります。

このように肺炎の発症には、さまざまなウイルスや細菌などがかかわっています。

そのウイルスや細菌のなかには、子どもが重症化しやすいものもあります。肺炎と思われる症状が3日以上続く場合は、早めに受診することが重要です。

子どもの肺炎の詳しい症状については『子どもの肺炎の症状—主症状は熱・咳・痰(たん)』をご覧ください。

  • 元 埼玉県地域医療教育センター 副参事、埼玉県立小児医療センター感染免疫・アレルギー科

    日本アレルギー学会 アレルギー専門医日本リウマチ学会 リウマチ専門医日本専門医機構 小児科専門医日本小児科学会 小児科専門医日本臨床免疫学会 免疫療法認定医日本小児神経学会 小児神経専門医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター

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