院長インタビュー

地域の方々にとって身近な病院をめざして―大阪医療センター

地域の方々にとって身近な病院をめざして―大阪医療センター
是恒 之宏 先生

国立病院機構大阪医療センター 院長

是恒 之宏 先生

この記事の最終更新は2017年09月19日です。

独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センターは、1945年に旧大阪陸軍病院として、大阪府河内長野市に設立されました。1947年に現在の大阪府大阪市に移転し、国立病院として国の政策医療や災害医療を行いながら、地域の方々へ高度医療を提供し続けています。

694床という大規模でありながら、新しい治療方法を開発するための臨床研究も行っている、同センターが現在、取り組んでいることや、病院としての強み、今後めざす病院像などについて、院長である是恒 之宏先生にお話を伺いました。

 

当センターは、国立病院機構が管理する全国に143か所の医療機関のひとつです。2004年に、独立行政法人化されました。

当センターが位置する大阪市は、政令指定都市のなかでも人口が2番目に多い都市です。それにともない、さまざまな疾患に対応できるよう、30の診療科と救急救命センターなどの充実した診療体制を整えています。

また、国立病院機構の組織であるため、臨床研究センターを設け積極的に研究活動を行うと同時に、研修機関として医師や看護師などの養成も行っています。

 

当センターの救急救命センターでは、以前は三次救急を中心に行っていました。その体制を変更し、2016年5月からは二次・三次救急のすべての患者さんを受け入れる体制に変わりました。

現在ではこのすべて断らないという方針が整い、救急搬送数が増加しています。2017年6月には、月間の救急車搬送数が300件を超えるほどになりました。

大阪市では救急搬送システムが整っており、ある程度疾患を予測して、搬送を受けられる病院がリストアップされるシステムです。そのリスト順に救急隊が連絡を取るので、近隣から運ばれてくることが多いです。しかし、当センターに1度でもかかったことがある患者さんは、県外からも搬送されてきます。

夏になると、熱中症や交通事故で負傷した患者さんなども増えてきます。どんな状態であっても、断らずに受け入れることが大切であると考えています。

 

当センターでは、全身の血管の治療に強みを持っています。なかでも注目されるものが、以下の2つです。

 

当センターでは、脳卒中内科と脳神経外科が協力して脳疾患の対応をしています。脳梗塞や、脳出血くも膜下出血など、救急も含めて幅広い疾患に対応できるのが特徴です。

そのなかでも注目されているのが、脳動脈瘤に対して行うフローダイバーターステント治療です。全国でも20か所、大阪では2か所しか行っていない治療です。

脳動脈瘤は、大きくなり圧迫症状をきたすと従来の瘤内コイル塞栓術では治療困難であり開頭手術を要することも多くなります。しかしこの治療では、コイル留置や開頭手術を行わずに特殊なステントを血管内に入れることで、大きな動脈瘤を血栓化させ、縮小させることができます。

 

当センターでは、脳卒中の原因となる心房細動の専門外来を、1988年に立ち上げました。

当時はアブレーション治療もできず、国内で脳梗塞の予防が十分できていなかった時代です。そのため、国内における標準になるような治療を実践していこうという目的で、この専門外来が立ち上げられました。

その流れがあって、当センターは、新しい抗凝固薬の開発にも中心的役割を果たしてきました。もちろん、心不全治療、冠動脈疾患や不整脈のアブレーション治療のほか、植え込み型除細動器やペースメーカーによる治療など、心臓疾患全般的に対応しています。

 

当センターは、大阪に7か所あるがん診療連携拠点病院のひとつです。近年ではご高齢の患者さんも多く、がん以外に循環器疾患や腎臓疾患、糖尿病などを合併していることも少なくありません。そういった、より高度な治療を必要とする患者さんをご紹介いただくことが多いです。

がんの領域に関しては、がん手術、抗がん剤治療、放射線治療、がん緩和ケア、がん専門看護師など、多くのスペシャリストがいます。そのため、あらゆる臓器の様々な進行度のがんに対して専門的診療が可能です。

 

整形外科ではほとんどの領域をカバーしています。そのため、あらゆる疾患への対応が可能です。骨・軟部腫瘍、いわゆる骨のがんを専門にしている医師も在籍しているうえ、そのほかの医師も各々専門分野を持っています。

それらの専門分野に合わせて、骨・軟部腫瘍や股関節・膝関節、脊椎、小児整形など7つの専門外来を設けています。

 

当センターの眼科の特徴は、白内障はもちろん、黄斑部疾患や網膜剥離といった網膜硝子体疾患の手術と、緑内障に対する外科的治療を多く行っていることです。特に緑内障治療はよく知られています。

今年1月から新しい手術方法を導入し、より低侵襲な手術が可能になりました。

 

当センターの耳鼻咽喉科は、特に難聴の治療に強いのが特徴です。内耳の手術ができる医師が2名いるため、地域の医療機関、開業医からの紹介も多くがん治療以外の耳鼻咽喉科の全領域に対応しています。

 

 

国立病院機構には143の病院があり、そのうち12の病院に臨床研究センターが、約50の病院に臨床研究部があります。当センターはそのなかで、常に1-2位の研究業績を誇っています。現在、行っている研究のなかでは、慶応義塾大学医学部の研究チームと共同で行っている、神経再生医療の研究が注目されています。この研究は、脊髄損傷の患者さんを対象としたものであり、このまま進めば2018年(平成30年)には臨床応用が始まり、そのあとさらに脳梗塞の再生医療も行う予定です。
これは、半身不随の方に早期に該当の治療を行うことができれば、まったく動けない状態から少しでも回復が可能になるかもしれない、という夢のある研究です。

 

当センターは国立病院機構の病院のため、国が提供する政策医療や災害医療を担うという特徴があります。

当センターは近畿ブロックのエイズ診療拠点病院のほか、防災拠点病院としても指定されています。また、東京都立川市の災害医療センターにDMATの統括本部があります。そこが機能を維持できなくなった場合の第二の拠点にもなっています。

災害の際にDMATが出動するのはもちろん大切ですが、統括部門が機能しないと、DMAT隊も身動きがとれません。熊本地震のときには、当センターからこのマネジメントの役割を担う統括部隊を派遣しました。

そのほか、全国のDMAT隊が参加する研修も、年に4回行なっています。

 

当センターでは、さまざまな場所でボランティアの方に活躍していただいています。患者さん向けの病院案内や医療通訳から、病院内外の花や緑の管理、音楽コンサート、小児患者さんへの絵本の読み聞かせなど、その内容は多岐にわたります。

ボランティアとして活動している方のなかには、元患者さんという方や、患者さんのご家族などもいらっしゃいます。こういったたくさんの協力があり、当センターの心地よい空間が保たれています。

 

 

当センターでは、中高生を対象に、病院でどのようなことを行っているのかを知ってもらうための、「アドベンチャーホスピタル」というイベントを年に1回開催しています。

ここで知ることができる職種は、看護師や医師だけではありません。さまざまな職種や領域を体験してもらえるように工夫しています。

もっとも人気があるのは、手術体験です。実際に手術室に入ってもらい、手を洗って、手術衣を着て、外科手術の体験をしてもらっています。そのほかにも、災害時のDMATのシミュレーションや、iPS細胞を顕微鏡でみるなど、さまざまな体験を用意しています。

 

当センターは、国立病院機構のなかでは医師の数が多いほうです。しかし全体をみてみると、近畿エリアのさまざまな病院で医師不足が叫ばれています。また、北海道や東北エリアをみても、かなり不足している状態です。

こういった状況では、医師が足りない病院への支援も必要です。当センターからも、医師の派遣を含めて、国立病院機構全体を維持していく役割を担っていかなければなりません。
また、当センターには研究部門があるので、臨床も研究もしたいという医師がやってきます。そういった意志を持つ先生に今後も来てもらえるよう、当センターの取り組みを明確にしていくことも大切だと考えています。

 

当センターは急性期病院ですので、救急疾患はもちろんみていかなくてはなりません。しかし、それだけでは不十分だと考えています。

高齢になると、さまざまな病気を合併した患者さんが増えてきます。この病気しかみない、というのではなく、患者さんの全体を治療できる病院が求められてくると考えられます。そういった病院をめざしていかなければならないと考えています。

さらに今後は、急性期は当センターの医師が、普段の診療は開業医の先生がみて、何かあったらまた当センターで診療する、という地域連携が求められてきます。依頼があったら迷わず引き受け、この病院でよかったと患者さんに思っていただけるような対応が大切だと思っています。

 

是恒 之宏先生

私は何ごともバランスよく、ということをいつも頭に置いています。医師の方々には、臨床だけ、研究だけと偏るのではなく、その両立をめざしていただきたいと考えています。また、後輩の指導も積極的に行ってもらえればと思います。

初期研修で当センターに来る先生は、救急も含め充実した研修ができるのが特徴です。各診療科の医師の数が多く、また診療科間の垣根も低いため、働きやすく学びやすい環境です。こういった環境で積極的に学びたいという研修医の方に、ぜひ来ていただきたいと思います。

また、地域のかかりつけ病院や人間ドックを行う施設などを訪ねると、多くの方に当センターは敷居が高いといわれます。

しかし、当センターはまったくそのようなことはありません。何かお困りのことがあったらぜひ、気軽に相談してください。みなさまの身近にある病院として考えていただけたら幸いです。

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