院長インタビュー

質の高い医療を提供し続けるために-済生会川口総合病院の取り組み

質の高い医療を提供し続けるために-済生会川口総合病院の取り組み
佐藤 雅彦 先生

埼玉県済生会川口総合病院 病院長

佐藤 雅彦 先生

この記事の最終更新は2017年12月10日です。

社会福祉法人恩賜財団済生会支部 埼玉県済生会川口総合病院は、1940年に恩賜財団済生会埼玉県川口診療所として開設されました。徐々に規模を拡大し、1964年に総合病院となり現在の名称に改称しました。2004年に現地建て替え、2015年に増改築し、ICU14床、NICU・GCU6床ずつを含む424床の病院に生まれ変わりました。

地域の基幹病院として多くの役割を担う同院では、どのような取り組みが行われているのか、院長である佐藤 雅彦先生にお話を伺いました。

当院は、全国に79か所ある社会福祉法人恩賜財団済生会の病院のひとつです。済生会は、明治天皇の済生勅語に基づいて設立されたものであり、生活に困窮した恵まれない人たちを救おうという考えが基礎にあります。

その精神は脈々と引き継がれており、生活状況に応じて、無料あるいは低額で医療を提供するという仕組みは現在も残っています。生活困窮者には金銭的な面でも医療を援助しようというのが、済生会の精神です。

当院ももちろん、その精神に基づいて医療を行っています。埼玉県は、医師も病院も少ない地域です。そんな地域の要求に応え幅広い疾患に対応できるよう、25の診療科とさまざまな医療機器をそろえて診療にあたっています。

当院の診療科のなかでも特に強みとしているのが、整形外科です。当院のような中規模の病院だと、地域の中核として救急医療や高度な二次医療を提供するのが本来の姿です。しかし、整形外科に限り当院は特殊であり、脊椎と上肢の疾患に特化した診療を行っています。

特に脊椎疾患に関しては、多くの手術実績があります。変形性脊椎症脊柱管狭窄症などに対して行う、金具を使った手術も実施しています。

膝や腰などそのほかの疾患の診療をしていない点は賛否両論ありますが、脊椎外科はスタッフも豊富にいるため、高度な診療を行っていると自負しております。

当院は、埼玉県の二次救急指定病院として地域の急性期医療を担っています。内科と外科の当直のほか、循環器内科と脳神経外科、産科、小児科は別に当直体制をとっているため、当直医は全部で8名です。24時間、救急患者さんの受け入れが可能です。

脳神経外科の医師が常に待機しているので、脳梗塞のt-PAによる血栓溶解療法や、血管内治療による血栓回収療法などにすぐ対応できます。循環器も心筋梗塞など、虚血系疾患に対する冠動脈の血管内治療は速やかな対応が可能です。

また、消化器に関してはオンコール体制をとっているため、吐血や下血、急性腹症など、夜中でも対応できます。

よりスムーズに患者さんを受け入れられるよう、2015年の増改築時に救急初療室を広くしました。2年ほど前までは救急搬送数は年間3,000台を切るほどでしたが、昨年は5,000台近くまで増えています。

当院は地域がん診療連携拠点病院にも指定されており、がんの診療にも力を入れています。特に力を入れているのが、消化器科と泌尿器科です。

消化器は上下部消化管から肝胆膵疾患まで、まんべんなく対応しており、患者さんの負担が少ない低侵襲な腹腔鏡手術を多く行っています。

泌尿器科でも、腹腔鏡手術を多く行っています。前立腺の治療はダヴィンチを使って行っていることが多いですが、非常に高度な技術を持っているチームですので、腹腔鏡でも同レベルの診療を行えます。

また、MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法という厚生労働省に承認を受けた先進医療を行っているのも、当院の泌尿器科の特徴です。

呼吸器内科は、気管支鏡に超音波を活用しての組織生検、体表からの超音波による生検など、充実したがん診断を行っています。

また、呼吸器外科に関しては、順天堂大学医学部附属順天堂医院と連携して診療をしています。当院で診断を行い、軽度な症例は当院で対応し、重症例に関しては順天堂医院で対応するという形です。呼吸器も内科系を中心に充実した診療を行っています。

2017年11月には、放射線治療システムを新機種に入れ替え、がんの状況をリアルタイムに判断して放射線をがん標的に正確に照射することができ、治癒率の向上と副作用を軽減することができるようになりました。

当院は年間900件超の分娩を取り扱っています。小児科にNICU・GCUを備え、年間50件ほどの母体搬送も受け入れています。母体合併症を伴うハイリスク妊娠についても、総合病院として各科と連携して対応しています。

今後の課題となるのが、スタッフの確保です。当院は25診療科で医師の数は137名、看護師は500名ほど在籍しています。今のところはある程度充足していますが、高齢化が進んでくると、日常生活の援助業務が増加し看護師の負担が増えてきます。質の高いあたたかい医療と看護を提供し続け、地域に貢献するためにも、スタッフはしっかり確保していきたいと考えています。

「地域のための病院」とは、よく聞きますが、同時にめざすものは「職員のための病院」です。組織でもっとも大切なものは職員という意味で、職員は組織の宝ですから、働いて満足できるような組織をめざしたいと考えています。

ここは病院という組織なので、医療を提供することが使命です。当院の医療従事者たちが限られた能力のなかで、最善の医療と看護を提供することが必要です。

働いている職員は全員、どういうふうになりたいという理想の姿が頭にあると思います。専門職としてそれぞれが研鑽し、自己実現をしていくことで満足してもらえるような組織づくりができればと考えています。

近年、社会全体として人間関係が希薄になりつつあるのではないかと感じています。やはり職員同士でのコミュニケーションは大切です。特に、医師とメディカルスタッフとの人間関係がよいかどうかで、現場の雰囲気がかなり違ってくると思います。

コミュニケーションエラーがあれば、いろいろな医療事故が起きてしまいます。ここがおかしいと思ったら、地位や職種に関係なく意見をいえるような関係を築かなければなりません。

どうしたら縦・横のつながりを強くしていけるか、病院幹部の会議で話し合っているところです。職員同士のつながりが強くなれば、よりよい医療が提供できます。助け合って地域の方々に貢献できるよう、これから取り組んでまいります。

病院は、医師や看護師など医療従事者の教育機関でもあると思っています。当院は初期研修医が12名おり、この規模の病院では比較的多いほうです。看護学校も併設されています。

看護学校は校舎が古くなってきており、個人的には建て替えて継続したいと思っています。看護学校に関しては議論をしているところですが、職員の意見も聞きながら検討していきたいですね。教育ができる医療機関をめざしたい、というのが私の希望です。

私たちは、これからも地域の中核病院として、質の高い医療と温かい看護をお届けしてまいります。まだまだ至らないところもありますが、そこは徐々に改善し、誠心誠意、努力していきたいと思います。

質の高い医療を提供するとは、ただよい医療を提供するというだけではありません。患者さん対応という点でも満足していただける、サービスとしても質の高い医療を提供していかなければと考えております。

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