院長インタビュー

高度で安全性の高い医療の提供を目指し、地域と社会に貢献する――埼玉県済生会川口総合病院

高度で安全性の高い医療の提供を目指し、地域と社会に貢献する――埼玉県済生会川口総合病院
佐藤 雅彦 先生

埼玉県済生会川口総合病院 病院長

佐藤 雅彦 先生

目次
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埼玉県川口市にある埼玉県済生会川口総合病院は、1940年に川口診療所として設立されました。以後、設備の充実と規模の拡大を続け、現在は地域の中核的な病院として、埼玉県南部の急性期医療を支えています。そんな同院の役割や今後について、病院長の佐藤 雅彦(さとう まさひこ)先生にお話を伺いました。

外観

当院は1940年に恩賜財団済生会埼玉県川口診療所として設立され、1964年に埼玉県済生会川口総合病院へ改称しました。設立後は診療体制の充実を図り、2007年に災害拠点病院、2008年に地域医療支援病院、2009年に地域がん診療連携拠点病院、2010年に地域周産期母子医療センターに指定されました。また、2004年に現在の本館を新築し、2015年に付属棟である東館がオープン、病床424床を有する総合病院として地域医療を支えています。

救急においては、川口市を中心に隣接する戸田市・蕨市を含めた医療圏の二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っています。内科系、外科系に加え循環器内科、脳神経外科、産婦人科、小児科は単科当直体制で、救急車による搬送数は年間4,500台*を超えます。

* 2023年度実績:4,777 台

当院は“患者さんを中心とした質の高い医療の提供により地域・社会に貢献します”という理念を掲げています。それまで基本方針に掲げていた“質の高い医療を提供し続ける”というミッションを明文化する形で、2022年に現在の理念に改めました。確かな技術と知識に基づいた救急や急性期医療、がん診療や高度な専門性が求められる医療の提供を通して、地域の皆さんからの信頼を得たいという思いが込められています。

内観

一方、職員の皆さんに対しては“当院で働いてよかった”と思っていただけるよう、“職員への約束”も掲げました。そのための取り組みの1つとして実施しているのが“サンクスカード”と“グッジョブカード”です。

サンクスカードは患者さんが、グッジョブカードは職員が、該当する職員への感謝やお褒めの言葉を記入するカードで、院内に設置したポストに投函してもらいます。投函されたカードは私(院長)が全て目を通し、コメントを添えたうえで該当する職員に渡しています。これによりお互いに認め合い、褒め合うことができる職場の雰囲気が醸成されるとよいなと思っています。職員が仕事に喜びを感じることで、その先にいる患者さんにも素晴らしい医療サービスが提供されると信じています。

整形外科は脊椎(せきつい)脊髄(せきずい)、上肢(肩・肘・手・手指など)、下肢(膝・足・足指)などの、骨・筋肉・靱帯(じんたい)・神経といった部位を対象に診療をしており、守備範囲がとても広い診療科です。一方、当院では脊椎と脊髄、上肢(肩から指先まで)の病気やけがを中心に診療することで、専門性を生かした医療を提供しているのが特徴です。救急性や専門性が求められるケースでは、診療時間外でも可能な限り対応しています。

手術

当院の整形外科には整形外科専門医(日本整形外科学会認定)をはじめ、専門医の資格を持つ医師が複数在籍しており、脊椎・脊髄手術の技術と実績を着実に積み重ねています。

実施している手術で多い疾患は、椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)頚椎(けいつい)症性脊髄症、脊椎側弯症などがあり、脊椎・脊髄手術は年間約900例*の症例を行っています。

*手術実績……2021年859例、2022年906例、2023年907例

日常生活を送るうえで“手”はとても重要な器官です。けがや病気で自由に使うことができないと不便を強いられることから、日本手外科学会の専門医の資格を持つ医師のもと、手外科疾患の診療にも力を入れています。

得意分野は肩の痛みや手のしびれといった症状の診療で、切り傷をはじめとした外傷骨折、変形などの症例に対する手術も行っています。近年、手の外科を受診する患者さんが増えてきているため、今後は救急などとの連携を強化しつつ、1人でも多くの患者さんを診ることができる体制を整えていく予定です。

当院は、地域がん診療連携拠点病院としてがん治療にも積極的に取り組んでいます。日本人に多いとされる胃がん大腸がん乳がん肺がんをはじめ、前立腺がん膀胱がん、肝胆膵領域のがんなど幅広くがんの診断や治療を行っています。特に力を入れているのが泌尿器科と外科です。

泌尿器科では、前立腺がんはもちろん膀胱がんをはじめとする尿路悪性腫瘍の治療を強化しています。2019年には、より安全・正確な治療を目指し手術支援ロボット“ダビンチ”を導入しました。

前立腺全摘出、膀胱全摘出からはじめ、現在では腎部分切除術、腎盂(じんう)形成術、回腸導管造設術、腎尿管全摘除術、腎盂尿管移行部狭窄へ対象を広げており、年間150例ほどの症例をこなしています。

前立腺がんに関しては、超音波とMRI画像を融合し、がんの疑われる部位を特定して穿刺(せんし)する生検を導入し、より正確な診断に努めています。治療は手術、放射線療法、薬物療法が可能です。手術では、2017年より精度の高い3D腹腔鏡を用いており、さらに手術支援ロボットの導入で、より低侵襲(ていしんしゅう)(患者さんの体への負担が少ない)な治療が可能となっています。また、2019年には強度変調放射線治療(IMRT)という新しい技術による放射線治療も導入しました。これにより、がん(標的)に対して正確な放射線照射が可能となり、治癒率の向上や副作用の軽減がいっそう期待できるようになりました。

膀胱がんの治療はがんの種類により異なりますが、全摘除が必要となることがあります。当院では、2016年から腹腔鏡下膀胱全摘除術を開始し良好な成績を得ており、手術支援ロボットの導入後は、ロボット支援下膀胱全摘除術も行っています。また、摘出後の尿路再建を目的に行う回腸導管造設術にも手術支援ロボットを使用しています。

泌尿器科では、がんに限らず尿路結石の治療などにも力を入れ取り組んでおり、総合的な医療から急性期医療まで幅広く対応しています。

*手術実績(直近)……2021年:174 例、2022年:222例、2023年:258例(※ロボット支援下による腹腔鏡下前立腺全摘除術、腎部分切除術、腹腔鏡下膀胱全摘除術、回腸導管造設術、腹腔鏡下手術の総件数)

当院の外科は医師数の多い診療科の1つであり、消化器、乳腺、一般外科領域を対象に、患者さんの立場に寄り添いながら質の高い医療の提供を目指しています。

がん治療においては、食道がん、胃がん、大腸がん、肺がんに対し積極的に鏡視下手術を行っており、胃がんの90%、大腸がんの80%は鏡下手術が行われています。鏡下手術のメリットは、開腹手術よりも手術創(きず)が小さく、体への侵襲や負担が少ないことなどが挙げられます。ロボット支援下による手術は、これらのメリットをさらに向上させるものであり、当院では胃がんと直腸がんに対して、2022年よりロボット支援下手術を行っています。これにより、さらに低侵襲かつ精密な手術が可能となり、出血量や合併症の軽減にもつながっています。

当院では、このような高度ながん治療に加え、患者さんの不安やつらさに寄り添う緩和ケアへの取り組みや、相談支援センターの設置なども行っており、包括的ながん医療を提供しています。

現在7室ある手術室を8部屋に増室予定です。これにより、救急医療体制の強化と、手術件数の増加による診療体制の強化が期待できます。また、併設している看護専門学校の建て替えが2025年に終わり、医師の卒後臨床研修病院として担っている医師や看護師の教育・研修病院としての機能も充実します。こうした努力を続けながら、地域の皆さんに提供できる医療の質を今後もさらに高めていきたいと考えています。

職員一同、掲げている理念に基づいて高度で安全な、そして心の通った医療の提供を続けてまいりますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。

*写真提供:埼玉県済生会川口総合病院

*病床数、診療科、提供している医療の内容等についての情報は全て、2024年7月時点のものです。

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