院長インタビュー

地域医療支援病院として地域に根差した医療の提供を目指す、草津総合病院

地域医療支援病院として地域に根差した医療の提供を目指す、草津総合病院
平野 正満 先生

社会医療法人誠光会草津総合病院 病院長

平野 正満 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年01月31日です。

滋賀県草津市にある社会医療法人誠光会草津総合病院は、急性期から回復期、慢性期と幅広い医療を提供しているケアミックス型病院です。同院は、2008年に社会医療法人、2013年に滋賀県地域医療支援病院に認定され、常により良い医療と温もりのある看護の提供を目指して活動してきました。現在、病院機能の拡充と将来の病院分離を念頭に、2020年の完成を予定して新棟の建設を進めています。今回は、同院の取り組みや診療科の特色などについて、病院長である平野正満先生にお話しを伺いました。

草津総合病院の外観

当院は1975年に水野外科医院として開院しました。その後、診療科を増やしながら診療所から病院に、さらに診療科と病院機能を拡充していき1997年に草津総合病院の名称となっています。2006年には草津市矢橋町に新築移転し、隣接していた矢橋中央病院を統合して、719床(2018年1月時点)の新たな草津総合病院となりました。当院のある草津市は京阪神のベッドタウンとして発展し、2030年まで人口の増加が見込まれる地域です。地域における医療ニーズは急性期疾患が中心でしたが、今後は高齢者人口も確実に増加することから、幅広い年齢層や多様な疾病にも対応できる病院運営が求められます。当院は高齢者も含めた包括的医療が提供できるようケアミックス型病院として活動してきました。

待合室の様子

草津市には市民病院などの公的病院がないため、草津総合病院がその役割を担っています。社会医療法人や地域医療支援病院に認定されていることも、当院が重要な地域中核医療機関として期待されている証といえます。草津総合病院は地域の医療ニーズに応えるため、高度急性期・急性期医療からリハビリを中心とした回復期医療、さらに小児、救急医療から地域包括ケアを支えるための慢性期医療まで幅広い医療提供体制をとっています。現在、当院が提供している4つの異なる病棟機能について簡単にご紹介します。

1つ目は急性期病棟です。この病棟は肺炎胃腸炎などの感染症、脳卒中心筋梗塞などの血管性疾患、骨折がんなど多様な急性期疾患の治療を行っています。脳卒中では血管内カテーテル治療を、心筋梗塞では心臓血管外科チームによるバイパス手術などの治療が行われ、術後は集中治療室(ICU)や脳卒中ケアユニット(SCU)と呼ばれる治療室で管理しています。がん治療では滋賀県地域がん連携支援病院の指定を受けるとともに、手術だけでなく、抗がん剤治療や放射線治療も急性期病棟に入院しながら実施されています。

2つ目は回復期リハビリテーション病棟です。この病棟では手術後の患者さんや、入院中に運動機能が低下してしまった、退院困難な患者さんにリハビリテーションを行い、安心して自宅や施設に戻っていただくことを目標としています。

3つ目は地域包括ケア病棟です。2病棟があり、2019年1月時点で108床を有しています。急性期治療後の患者さんや、急性増悪した慢性期疾患を有する患者さんが入院しています。病棟機能としてはリハビリテーションを提供しながらご自宅や施設への退院を目指した治療を行い、在宅復帰を原則としています。

4つ目は慢性期医療を行う療養病棟です。認知症や神経難病などで自宅での生活が困難である患者や透析治療などの長期にわたる医療の継続が必要な患者さんなどが入院しています。以上のように、病院が有する医療資源を有効に活用しながら地域とともに発展することを目指しています。やがては機能別病棟を病院分離という形で再編し、急性期医療と慢性期医療にそれぞれ特化した病院として発展することを考えています。

一方、在宅医療の強化と推進にも取り組んでいます。最近の医療の方向性は入院から在宅へ、治す医療から支える医療に向かっています。そのために入院から在宅までのシームレスな医療介護の連携と地域包括ケアシステムが機能的に運営できるよう地域医療機関や介護福祉施設、サービス事業所などと協働して患者支援を行い、地域での完結型医療を目指します。今後、院内に在宅療養支援センターの設置や近隣に訪問看護ステーションの新設を行い、在宅療養支援機能の中心的役割を担うことを考えています。

手術中の様子

当院には特色ある診療科やセンターがあり、多様な病気に対応できる診療体制をとっています。特徴的な診療部門を紹介します。

食道から肛門までの消化管全般の病気と腹腔内実質臓器の病気の外科的治療を行っています。最近は良性疾患にとどまらず悪性疾患も適応を選び、侵襲の少ない腹腔鏡下手術を行っています。手術室の腹腔鏡下手術のモニターは高画質のハイビジョンや3D画像を採用しており、従来の手術方法よりも安全で、細かい作業に対応できる手術が可能となっています。「腹膜播種センター」では、腹膜に進展した難治性疾患、たとえば腹膜偽粘液腫や中皮腫、大腸がんの腹膜転移などを腹膜切除と温熱化学療法で治療を行います。日本では腹膜切除を行える施設が少ないため、日本各所から患者さんが紹介されてきます。治療成績は腹膜偽粘液腫の手術例で5年生存率が66%に達しています。「肥満外科センター」は糖尿病高血圧脂質異常症を伴う高度肥満症の患者さんに対し腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行っています。難度の高い手術ではありますが、術後は体重減少とともに糖尿病や高血圧も改善します。医師や看護師、管理栄養士、臨床心理士などの多職種協働で治療に当っています。

体の支持組織である骨や関節、筋肉などの病気を外科的手法で治療する診療科です。膝関節や股関節の病気では除痛や機能回復を目指して人工関節置換術を行うことが多くなってきました。この手術では医師をサポートするコンピュータを用いたナビゲーションシステムを導入し、従来の手術方法よりも正確で安全な手術が可能となっています。椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患にも積極的に手術を行っています。また、顕微鏡をのぞきながら特殊な器具を用いて行う、マイクロサージェリーといった手術方法で、これまでの手術方法よりも繊細で丁寧な手術を行っています。それぞれの領域を整形外科専門医が担当し手術成績の向上が見られています。

循環器内科では心不全狭心症心筋梗塞不整脈などの治療を行っています。現在、日本人の死因の約15.3%が心疾患であること(2017年12月時点)や、今後、高齢化がさらに進むに従い、がんよりも心疾患によって亡くなる傾向が高くなっていくと予想されることから、心臓血管外科チームと協力し「心臓血管・心不全センター」を立ち上げ、24時間体制で急変時や増悪時に対応しています。狭心症や心筋梗塞にカテーテル治療、不整脈に対する心臓カテーテルアブレーション治療、そして心臓リハビリテーションを提供して社会復帰を早期に図る包括的な心臓血管治療を展開しています。

糖尿病ではインスリンの効果不足などにより血液中の血糖値が慢性的に高くなり、種々の合併症を来すことが知られています。生活習慣病の一つであり、正確な診断と適切な治療、そして日常の生活改善が求められます。2014年に「糖尿病センター」を設立して各専門職の協働によるチーム医療で栄養、運動、心理行動療法、フットケアなどを積極的に取り組んでいます。特に生活習慣病の予防の視点から、一人ひとりに必要な食事の楽しみ方や運動の進め方などを指導しています。糖尿病内分泌内科では糖尿病を中心に、肥満症やホルモンなどの過剰分泌などに起因する内分泌疾患の診断・治療に当っています。動脈硬化病変の早期診断、心筋梗塞や脳梗塞、足壊疽のリスク評価、さらにはがんの早期発見にも注力しています。

カンファレンス中の様子

輝ける未来ある若手医師に伝えたいメッセージは次の3点です。1点目は将来を見据え自分の専門領域の知識と技能をしっかりと身につけ磨いてください。2点目は一人で医療を行う時代ではありません。他職種のスタッフと協力しコミュニケーションを取りながらより良いチーム医療を実践してください、3点目は医療の原点である苦しみ病気と闘っている患者さんに寄り添い、心の通う医師になってほしいと思います。

昔の病院は、「とにかく医者に任せておけ」という体質だったと思いますが、現在は違います。患者さんと一緒に治療して、患者さん一人ひとりが望んでいることを成し遂げるというのが、我々医療者の責務だと感じています。

当院の理念は、「誠心誠意を尽くし、一隅を照らす光のごとく 人々に幸せをもたらす医療を行う」です。一隅を照らす光というのは、自分たちの仕事を全うして結果を出し、自分たちの生きていく価値観を見出したり、組織が成り立ったりすることで、この地域の方々に貢献することができる、ということです。当院の職員はこの理念を胸に、一隅を照らす光として地域の方々を支えてまいります。同時に、地域医療の質の向上を、この地域の方々と共に目指していきたいと考えております。

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  • 社会医療法人誠光会草津総合病院 病院長

    平野 正満 先生

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