院長インタビュー

埼玉県北部に充実した循環器・呼吸器の医療を─埼玉県立循環器・呼吸器病センター

埼玉県北部に充実した循環器・呼吸器の医療を─埼玉県立循環器・呼吸器病センター
星 永進 先生

星 永進 先生

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埼玉県立循環器・呼吸器病センターは埼玉県熊谷市に位置しています。循環器疾患、呼吸器疾患の診療に特化した同院は、日々の診療だけでなく救急患者さんも受け入れ、急性期医療を担っています。また、脳神経センターの開設、緩和ケア病棟の開設を行い、地域のニーズをくみ取った医療の提供に努めています。同院の特徴について、病院長の星 永進先生にお話を伺いました。

当院は1994年に埼玉県北部の循環器疾患の診療を充実する目的で、1954年に開設された埼玉県立小原療養所を改編して埼玉県立小原循環器病センターとして開院しました。その後、1998年に肺がんなどの呼吸器疾患の診療により注力するために、呼吸器部門の拡充を図ると共に、病院の名称も現在の埼玉県立循環器・呼吸器病センターに生まれ変わりました。

埼玉県立循環器・呼吸器病センター 外観
埼玉県立循環器・呼吸器病センター 外観

循環器内科、心臓外科、血管外科、呼吸器内科や呼吸器外科での専門的な医療を提供しながら、腎臓内科を開設しています。近年では糖尿病高血圧動脈硬化など複数の病気の治療を受けている方もいらっしゃいます。そのため、各診療科が協力して患者さんの状態に合わせた治療の提供に努めています。

患者さんが必要とする医療を提供することで、埼玉県北部の皆さんが迅速にかつ、適切な治療を受けることができると思います。

2019年4月に開設した脳神経センターでは、開頭手術や血管内治療を提供しています。当院は、埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワークの基幹病院に指定されており、特に埼玉県北部の脳梗塞の患者さんの救命に尽力しています。埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワークは、脳梗塞の疑いのある患者さんを地域の基幹病院に搬送し、迅速な治療を行うことで救命率の向上につなげる取り組みです。県北部では脳梗塞の治療をするのに十分な医療機関が少なく(2019年9月時点)、緊急を要する患者さんが埼玉医科大学国際医療センターのある日高市や埼玉医科大学総合医療センターのある川越市まで搬送されることもありました。脳梗塞の治療は時間との勝負であり、県北部の患者さんが県南に搬送される時間を軽減することで救命率の向上につなげる目的があります。

当院でも脳神経センターを開設し脳梗塞の患者さんを受け入れられる体制を整えることで、より地域の救命率向上に貢献してまいります。

埼玉県立循環器・呼吸器病センター 内観
埼玉県立循環器・呼吸器病センター 内観

2017年には新館棟がオープンし、緩和ケア病棟を開設しました。当院で治療をしている肺がんや消化器がんなどの患者さんはもちろん、近隣の医療機関から緩和ケア病棟への転院を希望されている患者さんも受け入れています。

緩和ケア内科の医師を中心に、それぞれの診療科や主治医が連携して人生の最終段階における医療(終末期医療)*の提供に尽力しています。

*:平成27年3月に厚生労働省 検討会において終末期医療から名称変更

循環器疾患に対する診療では、循環器内科、心臓外科や血管外科が連携しています。また、血管外科は腎臓内科と連携し、透析導入のシャント造設を行うこともあります。循環器疾患に関係する診療を充実させていき、患者さんに充実した循環器診療を提供するために尽力しています。

循環器内科では、日々の診療だけでなく救急患者さんの心臓カテーテル検査や、内科的治療を実施しています。狭心症心筋梗塞などの狭くなったり詰まったりした血管を広げるPCI、大動脈弁狭窄症に対する低侵襲手術であるTAVI僧帽弁閉鎖不全症に対するマイトラクリップの提供を中心に、患者さんの体に負担の少ない治療方法の提供に努めています。また、外科的な治療を必要とする患者さんには、心臓外科や血管外科の医師とカンファレンスを行い、患者さんに適切な治療方針を検討します。

2017年の新館棟のオープンの際に、ハイブリッド手術室を設置しました。ハイブリッド手術室を設置したことで、TAVIやマイトラクリップの提供はもちろん、動脈瘤に対してのステント治療、脳血管疾患の治療など、幅も広がりました。

循環器内科、心臓外科や血管外科、脳神経センターなどでハイブリッド手術室を使用しています。

呼吸器疾患に対する診療では、呼吸器外科と呼吸器内科が連携を取って診療にあたっています。呼吸器外科では主に肺がんを診療し、呼吸器内科では肺がんだけでなく、感染症やアレルギー性疾患、びまん性肺疾患を診療しています。また、肺がんの診療では放射線科、病理診断科などの診療科とも連携を取り、迅速で適切な診断を心がけています。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

呼吸器外科と呼吸器内科、放射線科、病理診断科では週に1度、合同カンファレンスを行います。入院治療を行うことになった患者さんを全員で把握し、「呼吸器疾患の患者さんは全員で診療する」という意識を持って取り組んでいます。たとえば、主治医が治療方針や患者さんの状態で悩むこともあります。そのときには、合同カンファレンスで相談し、それぞれの専門家からの意見を出し合います。

呼吸器外科の肺がんの診療は、開胸手術と胸腔鏡手術を実施しています。胸腔鏡手術を積極的に実施しており、患者さんの体に負担の少ない治療の提供に努めています。

呼吸器外科では、若手医師に胸腔鏡手術を実施してもらうとともに、開胸手術も定期的に実施しています。胸腔鏡手術は患者さんの体の負担が少なく、早期の社会復帰が期待できる手術方法です。しかし、開胸手術で自分の目で病態を確認することは外科医師としての経験につながると考えています。そのため、呼吸器外科の若手医師たちには、開胸手術をこなせるように指導しています。開胸手術である程度の実績を積み、そこから胸腔鏡手術の手技を磨いていってほしいと思います。

星永進先生

循環器疾患と呼吸器疾患を専門に、それらに付随する病気の診療を行っています。循環器疾患と呼吸器疾患に関しては、医師やスタッフが患者さん一人ひとりと寄り添い、最後まで責任を持って治療していきたいと思っています。

また、埼玉県民の皆さんが健康を維持できるように「いきいき健康塾」を開催して、公民館などで病気についてお話ししています。心臓の手術について、肺がん脳卒中など当院が得意としている病気をテーマにして開催しています。ぜひご参加ください。

若手医師の皆さんには、患者さんのために、「できることは何でもしてあげよう」という思いを持って仕事に臨んでほしいです。当院は、その気質を持った医師が多く在籍しており、先輩医師たちから、多くのことが学べる環境だと思います。

また、当院は循環器疾患、呼吸器疾患の診療に特化した病院です。循環器や呼吸器を専門にしたい方などには適している施設だと思います。当院で後期研修の期間を過ごし、さまざまな症例を経験することで後輩指導にも役立つのではないでしょうか。