2019年10月24日(木)〜10月26日(土)の3日間にわたり、福岡国際会議場・福岡サンパレス・マリンメッセ福岡にて、第57回日本癌治療学会学術集会(以下、本学術集会)が開催されました。本学術集会では、“社会と医療のニーズに応える−TACKLING THE NEEDS OF SOCIETY AND MEDICINE−”をテーマに、多数の講演やシンポジウムが行われ、明日のがん治療について、活発な学術的議論が繰り広げられました。
本記事では、2日目に福岡サンパレスにて行われた【ASCO/ESMO/JSCO/JSMO/JCA Joint Symposium−臓器横断的適応症のある進行固形がんに対する診断・治療戦略-各国の専門家からの臨床提言】の概要をお届けします。
司会:
北川雄光先生(慶應義塾大学 外科)
Dr. Howard A. Burris(Sarah Cannon, USA / ASCO)
Dr. Josep Tabernero(Medical Oncology Department, Vall d’Hebron University Hospital, Spain / ESMO)
ASCO/ESMO/JSCO/JSMO/JCA Joint Symposiumでは、“臓器横断的適応症のある進行固形がんに対する診断・治療戦略-各国の専門家からの臨床提言”をテーマに、4名の演者による講演が行われました。
はじめに、吉野孝之先生(国立がん研究センター東病院 消化管内科)は、進行固形がん患者における臓器横断的ゲノム診療ガイドラインの概要と展望についてお話されました。
吉野先生は、異なる臓器のがんであっても同様の変異を持つことがあり、それによって治療方針が決定されることを説明したうえで、今後のがん治療は、より臓器横断的になっていくと考えられると述べました。また、産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト“SCRUM-Japan”の取り組みについて紹介しました。
次に、Dr. Howard A. Burris(Sarah Cannon, USA / ASCO)より、“臓器・がん種によらない進行固形がんの診断と治療戦略−米国の臨床的視点から”というテーマで講演が行われました。
Dr. Burrisは、分子プロファイリングと次世代シーケンシング(NGS)の急速な進歩により、がんの生物学理解が深まったと述べました。そして、臓器・組織横断的な診断と治療の発展によって進化している検査方法や医薬品について紹介しました。
続いて、Dr. Fabien M. Calvo(Clinical Pharmacology and Oncology, University of Paris Faculty of Medicine, France)より、“がん治療のためのゲノム変異の使用に関するESMOプレシジョンメディシングループ推奨事項”をテーマにした講演が行われました。
Dr. Calvoは、まず、臨床的有用性が明らかではない新しい分子標的薬の増加という課題に直面していることを説明し、そのような課題に対するESMO(the European Society for Medical Oncology:欧州臨床腫瘍学会)ワーキンググループの戦略について述べました。
最後に、土原一哉先生(国立がん研究センター 先端医療開発センター)より、“臓器横断的進行固形がんの治療開発に必要な研究基盤”と題した講演が行われました。土原先生は、がん細胞の生物学的特性とその微小環境を特定することは、個々の患者を治療し、新たな医薬品を研究・開発するために必要と述べました。そして、臓器横断的な治療の開発に向けたデータベースの構築を進める“SCRUM-Japan”の活動について紹介しました。
このようにして、【ASCO/ESMO/JSCO/JSMO/JCA Joint Symposium−臓器横断的適応症のある進行固形がんに対する診断・治療戦略-各国の専門家からの臨床提言】は、大きな拍手に包まれて終了しました。
岐阜大学大学院腫瘍制御学講座腫瘍外科学分野 教授
日本外科学会 外科認定医・外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科認定医・消化器外科専門医・消化器外科指導医日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(消化器・一般外科領域)日本食道学会 食道科認定医・食道外科専門医日本乳癌学会 乳腺認定医日本消化管学会 胃腸科専門医・胃腸科認定医日本胸部外科学会 会員日本肝胆膵外科学会 会員
1958年、広島市生まれ。1984年より腫瘍外科医としてキャリアを開始し、分子病理学の研究や、英国オックスフォード大学留学を経て、2007年岐阜大学大学院腫瘍制御学講座 腫瘍外科学分野教授に就任。鏡視下手術などの低侵襲外科手術をこなすのみならず、集学的治療を駆使し、初診時に手術が難しいと診断された患者さんにも根治手術の施行に尽力している。2017年にJDDW2017第15回日本消化器外科学会大会大会長を務めた。2019年には第57回日本癌治療学会学術集会会長を務め、我が国のがん医療・消化器外科医療をリードする一人である。2018年から岐阜大学医学部附属病院・病院長に就任している。
吉野 孝之 先生の所属医療機関
本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。
なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。