2019年10月24日(木)〜10月26日(土)の3日間にわたり、福岡国際会議場・福岡サンパレス・マリンメッセ福岡にて、第57回日本癌治療学会学術集会(以下、本学術集会)が開催されました。本学術集会では、”社会と医療のニーズに応える−TACKLING THE NEEDS OF SOCIETY AND MEDICINE−”をテーマに、多数の講演やシンポジウムが行われ、明日のがん治療について、活発な学術的議論が繰り広げられました。
本記事では、3日目にマリンメッセ福岡にて行われた【ワークショップ14“がん患者とサバイバーシップ”の概要をお届けします。
司会:
嶋田紘先生(労働者健康安全機構)
有賀悦子先生(帝京大学 緩和医療学)
はじめに、高橋都さん(国立がん研究センターがん対策情報センター がんサバイバーシップ支援部)より、“働くがん患者への支援~コーディネーターを含めた多職種でどう取り組むか?”と題した講演が行われました。
高橋さんは、まず、就業中にがんと診断される方が多くいることについて言及し、医療機関における就労支援では、患者さんが働くことを諦めないようにすること、医療者に相談できることを知ってもらうこと、そして、患者さん自身の対応力を向上させることが重要であるという考えを話しました。
続いて、岡本記代子さん(厚生労働省岐阜労働局ハローワーク岐阜 職業相談第二部門 就職支援ナビゲーター)より、“『私のがんからの一歩』~がんサバイバーだからこそできる、がん患者への就労支援~”のお話がありました。
岡本さんは、ご自身のがん治療と就労の両立に関する経験を活かし、ハローワークでがん患者さんなどの就労支援に携わっています。講演では、ご自身の体験をもとに、がん患者にとっての目標や仕事の意義を持つことで人生に希望が生まれることなどを語りました。
続いて、花井美紀さん(NPO法人 ミーネット)より、“がんのピアサポートとサバイバーシップ”をテーマにした講演が行われました。
花井さんは、がんのピアサポート(がんの治療体験者が体験からの学びを活かし、がんにかかった方々の悩みや不安を共感的に受け止め、ともに問題解決にあたる)の必要性と、ミーネットの活動について説明しました。
次に、松下和正さん(株式会社松下産業)より、“中小企業としてコーディネーター制度に期待するもの”と題した講演が行われました。
松下さんは、企業の発展的な事業継続のためには、社員の幸せややりがいの保証、そして健全な心身の維持が不可欠であると述べました。そして、松下産業が行っている取り組みの事例を紹介しました。たとえば、ヒューマンリソースセンターにおける育児・介護・病気と仕事の両立支援などのことです。
次に、林恵子さん(東京労災病院 両立支援相談窓口)は、“東京労災病院における両立支援コーディネーターによる治療と仕事の両立支援の実践”についてお話されました。
林さんは、東京労災病院における両立支援モデルの実施を紹介しました。その内容は、患者さんの離職防止に努めると同時に、事業所に対しては労働者が復職する際の懸念点や復職に向けての調整などを行うというものです。
次に、野村良平先生(東北労災病院 治療就労両立支援センター)は、“東北労災病院における治療就労両立支援”についてお話しされました。
野村先生は、東北労災病院における両立支援モデルの実施を紹介しました。同院では、がんと診断された時点と入院中での介入を行い、患者さんの状況や気持ちを複数回にわたって聞くことで、就業上・治療中の問題を抽出するよう努めているといいます。
次に、加藤宏一先生(東京労災病院)は、“労災病院が取り組む両立支援コーディネーターについて”をお話しされました。
加藤先生は、まず、人々が適切な治療を受けながら生き生きと働き続けることができる社会の実現を目指す“両立支援”の重要性について述べました。そして、両立支援コーディネーターの役割を説明し、労働者健康安全機構におけるコーディネーターの育成の取り組みについて紹介しました。
このように 、【ワークショップ14“がん患者とサバイバーシップ”】では、たくさんの知見が集結し、大きな拍手に包まれて終了しました。
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