京都大学大学院医学研究科外科系専攻 器官外科学講座泌尿器病態学(泌尿器科) 教授
小川 修 先生
国立研究開発法人理化学研究所 生命医科学研究センター 副センター長、免疫器官形成研究チーム チ...
古関 明彦 先生
2019年10月24日(木)〜10月26日(土)の3日間にわたり、福岡国際会議場・福岡サンパレス・マリンメッセ福岡にて、第57回日本癌治療学会学術集会(以下、本学術集会)が開催されました。本学術集会では、“社会と医療のニーズに応える−TACKLING THE NEEDS OF SOCIETY AND MEDICINE−”をテーマに、多数の講演やシンポジウムが行われ、明日のがん治療について、活発な学術的議論が繰り広げられました。
本記事では、3日目に福岡国際会議場にて行われた【がんと再生医療】の概要をお届けします。
司会:
小川修先生(京都大学 泌尿器科)
大野真司先生(がん研究会有明病院 乳腺センター)
会長企画シンポジウム15では、“がんと再生医療”をテーマに、4名の演者による講演が行われました。
はじめに、大和雅之先生(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)は“細胞シートを用いたがん治療”についてお話しされました。
大和先生は、まず、細胞シートとiPS細胞の違いを説明したうえで、細胞シートを用いた再生医療の開発・研究について紹介しました。そして、細胞シートの応用により、がん治療における手術、放射線治療、抗がん剤治療などの副作用により損傷を受けた周囲の組織を再生させることへの可能性について言及し、がん治療に貢献したいと話しました。
続いて、山田泰広先生(東京大学 先進病態モデル研究分野)より“iPS細胞技術によるがん細胞の理解と制御”というテーマで講演が行われました。
山田先生は、がんの発生には、遺伝子の突然変異に加えてエピゲノムの異常がかかわっていると説明したうえで、研究室で取り組まれている、iPS細胞の技術を利用したがんエピゲノムの分析に関する研究を紹介しました。
次に、古関明彦先生(理化学研究所生命医科学研究センター 免疫器官形成研究チーム)より、“iPS-NKT細胞によるがん治療の開発”をテーマにした講演が行われました。
古関先生は、理化学研究所で行っている、iPS細胞技術で作製したヒトナチュラルキラーT(NKT)細胞の抗腫瘍効果の研究について説明し、マウスの生体内における効果を示すことに成功したと述べました。そして、iPS-NKT細胞を用いたがん免疫療法の臨床応用を進めたいと話しました。
最後に、河本宏先生(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所)より、“多能性幹細胞からキラーT細胞を再生:他家移植用即納型T細胞製剤の開発”と題した講演が行われました。
河本先生は、iPS細胞の技術を用いてがん特異的キラーT細胞を増幅するという研究とその応用、成果について説明しました。また、それらの結果は、さまざまな種類のがんに対する“TCR-iPSC(T細胞受容体−iPS細胞)戦略”の実行の可能性を示していると述べました。
このようにして、【がんと再生医療】では、有意義な議論が繰り広げられ、会場は大きな拍手に包まれて終了しました。
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