炎症性腸疾患(IBD)とは腸に炎症が起こる病気の総称で、代表的なものに潰瘍性大腸炎とクローン病があります。
炎症性腸疾患の症状は、下痢や腹痛、血便などが現れたり治まったりすることが特徴として挙げられますが、疾患の種類や炎症の部位、程度によっても症状に違いがあります。本記事では、炎症性腸疾患の症状の詳細を解説します。
炎症性腸疾患とは腸に炎症を起こす病気の総称であり、代表的な病気に潰瘍性大腸炎やクローン病などがあります。腸に炎症が起こる病気として腸管ベーチェット病などもあり、広義ではこれも炎症性腸疾患に含まれますが、狭義の炎症性腸疾患が指すのは潰瘍性大腸炎とクローン病です。
潰瘍性大腸炎とクローン病はどちらも原因がはっきり分かっておらず、治療も長期にわたります。ただし、どちらも難病に指定されているため、医療費の一部を国が補助する制度があります。
また、炎症性腸疾患は衛生状態のよい先進諸国に多い病気といわれており、若い人が発症しやすく、日本では90年代以降患者数が急激に増え続けているという状況にあります。さらに、潰瘍性大腸炎は20万人の患者がいるといわれていますが、これはアメリカに次いで世界で2番目に多い患者数です。
炎症性腸疾患では腸に炎症が起こることによって下痢や腹痛、血便などの症状が現れることがあります。また、症状が治まったり(寛解期)、現れたり(再燃期)を繰り返すことも特徴です。ただし、寛解期でも腸の炎症は継続しているため、病状が進行することもあります。
潰瘍性大腸炎では血便が出ることがありますが、クローン病では血便が出ることはあまりありません。一方で、クローン病では患者の半数が痔瘻(膿が出る穴がある痔)を合併します。さらに、炎症が起こっているのが腸のどの部分なのか、炎症がどの程度なのかなどによっても症状は異なります。
また、潰瘍性大腸炎やクローン病の重症例では腸が狭くなったり、発熱や倦怠感などの全身症状が現れたりするほか、粘膜の潰瘍(組織の欠損)、目や皮膚の炎症、手足の関節の痛みなどの症状が現れることもあります。
炎症性腸疾患を診断するためには、食中毒や結核菌、アメーバ赤痢などによる腸炎と鑑別する必要があるため、便の細菌検査、血液検査、ツベルクリン反応(結核菌に対して)を行います。また、薬による腸炎と区別するために、服用中の薬について聞き取りを行う必要があります。
腹痛や下痢、血便などの症状が続いており、血液検査で貧血や炎症にかかわる項目に異常がある場合には潰瘍性大腸炎が疑われます。その場合は内視鏡検査、炎症部分の組織を顕微鏡で調べる生検組織検査などを行います。
また、最近は行われることが減っていますが、バリウムを大腸に注入し、X線で調べる検査が行われることもあります。
腹痛や下痢、発熱、体重減少、貧血などの症状があり、血液検査で貧血や栄養状態、炎症にかかわる項目に異常がある場合はクローン病が疑われます。この場合は腸の内視鏡検査、バリウムを使ったX線検査、病理検査(炎症部分の組織を顕微鏡で調べる検査)などが行われます。
さらに腸が狭くなっている、穴が開いている、膿がたまっているなどの状態が疑われる場合は、CTやMRIによる検査が行われることもあります。
炎症性腸疾患は医師の指示の下、適切な治療を続けることで無理なく日常生活が送れるようになります。
腹痛や下痢、血便、体重減少、発熱などが続く場合は、消化器内科などの受診を検討するとよいでしょう。場合によっては、専門の診療科や施設を紹介してもらい、受診する必要もあります。
総合東京病院 消化器疾患センター長
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