院長インタビュー

大自然に囲まれた地域医療の砦、近畿大学奈良病院

大自然に囲まれた地域医療の砦、近畿大学奈良病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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奈良県生駒市にある近畿大学奈良病院は、奈良県北西部の西和医療圏を支える包括的な総合病院です。西和医療圏の中で唯一救命救急センターが設けられており三次救急まで対応しています。全国から患者が駆け込む高度ながん診療や低侵襲(からだへの負担が少ない)の治療に取り組む同院の地域での役割や今後ついて、病院長である村木(むらき) 正人(まさと)先生に伺いました。

当院は1999年に開設し、西和医療圏の中核病院として地域医療の役割を果たしてきました。地域で唯一の救命救急センターを備えるほか、地域災害拠点病院や地域がん診療連携拠点病院として献身的な医療活動を行っています。2022年には奈良県から地域医療支援病院の承認を受け、地域の中でますます大きな役割を担うようになりました。西和地区では当院のような規模の病院はほかに無く、間口の広い地域医療に努めています。

当院は東西を雄大な山々に囲まれた立地で、奈良県と大阪府の県境に連なる生駒山を一望できる自然豊かな環境です。生駒山のふもとからは竜田川が流れ、河川敷緑地では毎年“紅葉祭り”が開催されて多くの人で賑わっています。恵まれたロケーションなので、リハビリ入院など療養生活にうってつけの心安らぐ環境だと思います

地域の課題としては人口の減少が目立ち、高齢化率も全国平均を上回る水準です。西和医療圏において、大規模な総合病院の役割を当院が一手に引き受けているため、地域の医療機関と連携をとりながらうまく舵取りする必要があると考えています。

救急救命センターでは、複数の診療科にまたがる脳卒中や急性心筋梗塞など、二次救急では対応できない三次救急患者を24時間体制で受け入れています。また急性の腹部疾患などに対しては腹部救急センターを設け、消化器内科や消化器外科が中心となってより専門的な治療を行っています。

救急においてはスピーディーな初動が何より肝心です。当院は腹部、心臓や脳の疾患に対して専用のホットラインを設け、事務を介さず救急隊からドクターに直接連絡できるようにしています。

西和地区では救急に対応できる病院が少なく、救急医療において当院は大きな責任を負っています。高齢化が進んで90歳代の患者さんも増えているため、肺炎心不全で救急搬送される高齢の患者さんにもしっかり対応していかなければなりません。これからも地域の病院と連携しながら、迅速かつ的確な救急医療に努めていきます。

当院は西和地区で唯一、標榜科(厚生大臣の認可した医師のみが対外的に表示できる診療科名)として呼吸器外科の看板を掲げています。特に原発性や転移性などの肺がんの治療は専門性が高く、当院ですべての治療を完結しています。

従来、肺の手術は最大30cmほど切開して肋骨を押し広げる開胸術が主流でしたが、現在はより低侵襲(からだへの負担が少ない)な内視鏡手術を採用しています。しかし、手術前の予想よりがんが進行していたり多量の出血が起きたりした場合は、確実に治療するために開胸術で治療する場合もあります。患者さんの負担と治療方法の有効性を総合的に考え、バランスのとれた外科治療を行っています。

消化器内科が担当する大腸がんの治療は当院の得意分野で、合併症などの難治性疾患をもつ患者さんを他府県の病院から引き受けることも珍しくありません。大腸がんの治療においても低侵襲な内視鏡手術を採用し、2023年度に115件の手術を行った内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)により、治療後再発など難易度の高い疾患にも対応しています。

大腸ポリープの切除については、内視鏡的粘膜切除術(EMR)に加えてコールド・スネア・ポリペクトミー(CSP)による治療も積極的に取り入れています。CSPは高周波装置を使用しないので、より出血の少ない安全かつ確実な治療を行うことができます。

当院は、特に喘息などのアレルギー疾患に力を入れています。私の専門はアレルギーなので一般社団法人 日本アレルギー学会が主催する大和免疫アレルギー研究会などに積極的に参加し、学んだ最新の知識を臨床現場に活かしています。

呼吸器・アレルギー内科では、2023年度における月間の外来診療が1,000人を越え、毎週5件のペースで内視鏡による検査や治療を行っています。アレルギーの分野では奈良県全体で見ても非常に症例数が多い診療科であると自負しています。

奈良県内には血液内科が少なく、当院は広いエリアで血液疾患の治療に対応しています。特に白血病悪性リンパ腫多発性骨髄腫などの造血器悪性腫瘍については、当院が治療を一手に引き受けている状況です。また、当院は非血縁者間造血幹細胞移植の認定施設ですので、化学療法のほか造血幹細胞移植も行っています。

近年、新規薬剤の開発により血液疾患の治療成績は飛躍的に向上しました。当院でも白血病などの治療件数が年々増加していますので、専門医の育成を含め、さらなる専門性の向上に努めようと思います。

当院のリハビリテーション部では発症直後や治療中からリハビリテーションを提供し、1日も早く日常生活に戻れるように支援します。理学療法士、作業療法士と言語聴覚士がチーム一丸となり、患者さんに開かれた病院としてそれぞれの役割を全うしています。

また当院では、社員旅行などを通じて診療科を越えたつながりを大切にしています。看護師の皆さんもハードな業務を元気にこなしていて、いつも院内の雰囲気を明るくしてくれていると感じます。もちろん医療現場なので緊迫した場面はいくつもありますが、これからも職員全員がイキイキと働けるような環境作りに努めていきたいと思います。

村木正人先生からのメッセージ

村木先生

当院は生駒山を一望できる恵まれた立地と、専門性の高い医師を多く抱えた地域の基幹病院です。大学病院として先進医療に取り組みつつ、もっと地域の皆さんに信頼して頂けるよう、医療スタッフの教育や救急医療のさらなる進化にも挑戦します。そして当院の理念である“患者本位の開かれた病院として、安全で質の高い先進医療”を実践できるように、職員全員の力を合わせて医療活動にまい進して参ります。

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