院長インタビュー

救急医療を通じて地域へ貢献する、新小文字病院

救急医療を通じて地域へ貢献する、新小文字病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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社会医療法人財団池友会 新小文字病院(以下、新小文字病院)は1981年の開院以来、“手には技術、頭には知識、患者には愛を。”という理念のもと、北九州地域において救急医療を始めとした急性期医療を提供してきました。

同院の診療体制の特徴や、急性期医療に取り組む信念について、院長の髙橋 雄一(たかはし ゆういち)先生にお話を伺いました。

先方提供
新小文字病院 外観

当院の母体となる社会医療法人財団池友会を設立し、当財団の理事長である蒲池眞澄(かまちますみ)は、救急の患者さんを積極的に受け入れる病院を作ろうと、1981年に北九州市小倉北区に83床の“小文字病院”を開院しました。蒲池によれば、開院当時は救急の患者さんの受け入れに積極的な病院が少ない時代だったそうです。そのようななかで、当院は「一刻を争うような救急の患者さん、本当に困っている患者さんを救うのが医療の原点」と“患者さん中心の医療”を見据え、救急医療に取り組むべく新設されたのです。そのため、すぐに救急車が集中するような状況になったと聞いています。

その後、2008年に現在の門司区大里新町に新築移転し、“新小文字病院”と改称。現在は214床(2024年6月現在)という規模にまですることができました。病床数は増えましたが、“患者さん中心の医療”という根本は変わることなく、今も当院に脈々と受け継がれています。

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救命救急科

当院の役割は、救急の患者さんの受け入れをはじめ、地域の急性期医療を担うことです。そのために、施設や機器の整備を常に行っています。

まずは24時間365日の急性期医療に対応できる建物が必要となります。救急車の入り口から一直線で検査を受けられるような導線を確保。CTは入り口から1分以内での撮影開始が可能ですし、MRIも10分以内での撮影開始が可能です。救急の患者さんは一刻を争う状態であることが多いので、とにかく短時間で診断ができるような体制をとっています。

これは蒲池の考え方でもあり、私自身も非常に重視しているのですが、「病院は利益をあげなくてはいけない」というものがあります。しかし、それはもちろん私利私欲のためではありません。病院は利益を上げ、それを患者さんのために医療の充実という形で還元すべきであると考えています。当院の場合は、患者さんによりよい医療を提供するために、急性期医療を支えるに足る医療機器の設備投資をすることで、還元できればと思っています。

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医療搬送用ヘリコプター ホワイトバード

当院は救急の患者さんへの対応を優先した医療体制をとっていますので、小児科や産婦人科、耳鼻科といった診療科は設置しておらず、心臓外科に対応できる体制もとっていません(2024年6月現在)。こうした診療科は地域の他の医療機関に担っていただき、連携していくことでカバーしていきたいと思っています。しかし、一刻を争うような状態の患者さんが搬送されたときは、診療科にとらわれずに可能な限り対応し、当院で症状を安定させたうえで、他の医療機関に引き継ぐという態勢をとっておりますのでご安心ください。さらに、当院は医療搬送用のヘリコプター・ホワイトバードを導入しております。これによって離島の患者さんも速やかに救急搬送できるようになり、救急医療のさらなる拡充が可能となりました。

救急医療においては同じ池友会グループである福岡和白病院との連携もしており、緊急性の高い患者さんは福岡和白病院へ搬送するなど機能的な役割分担で救急患者さんへの対応を行っています。

もちろん院内での連携向上も積極的に図っており、毎週のカンファレンス実施や定期的な勉強会などでしっかり情報共有をしたうえで治療にあたるよう心がけています。

また、当院は治療後のリハビリテーション(以下、リハビリ)も大切にしています。病気やけがを治療しても、元の生活に戻れなくては不十分です。入院中の患者さんには日曜、祝日もリハビリを実施し、各個人の状態に合わせたリハビリを行っています。退院後も外来リハビリや訪問リハビリの実施が可能です。

そしてさらに当院は、門司区唯一の災害拠点病院でもあります。地元での災害に対する緊急対応だけでなく、災害医療派遣チーム『DMAT』の配備や災害訓練、そして実際の災害医療派遣なども以前より行ってきており、2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震の際にも、当院より医師や看護師を派遣しました。

脊髄脊椎疾患は治療が難しい症例も多く、手術も難しい部位といえます。そのため、当院では脊髄や脊椎の治療には専門の医療チームがあたるべきだと考え、専門科を置いています。

脊髄や脊椎の疾患は加齢による変形が原因となることがあるため、高齢化に伴い、今後は高齢の患者さんの増加が予想されます。それだけに、できるだけ体に負担がかからない治療も大切です。当院では、多くの手術で切開部分や筋肉の損傷を可能な限り小さくできる機器や手術法を採用しています。

また、リハビリについても、手術前から理学療法士や作業療法士が患者さんにつき、手術前の状態を把握したうえで機能訓練を行っています。

救急車で搬送されてくる患者さんの中には、脳梗塞脳出血くも膜下出血など、いわゆる脳卒中の方がいらっしゃいます。脳卒中はいかに早く治療を始められるかがカギとなります。当院は急性期の脳卒中に対応する一次脳卒中センターとして、24時間365日いつでも、検査や治療、手術が速やかに実施できる態勢を整えており、さらに「救急隊員が脳卒中を疑った段階で、すぐ脳神経外科医に専用電話をつなぐことができる」というストロークホットラインの運用も2017年7月から開始しています。

急に体の片側がしびれた、ろれつが回らなくなった、激しい頭痛がするなどの脳卒中が疑われる症状がでたら、すぐに受診してください。

高齢化が進むと、転倒などによる骨折の事例が増えてきます。当院ではそういった転倒や交通事故、スポーツなどによる外傷の診断、治療のほか、慢性疾患である変形性膝関節症、関節の痛み、リウマチ、骨粗鬆症などの治療を行っています。

2023年2月からはロボティックアーム手術支援システムMako(メイコー)を導入。医師の手術操作を手術計画通りに制御することで、人工股関節置換術や人工膝関節置換術を従来よりさらに低侵襲かつ高い正確性をもって行えるようになりました。また救急の外傷では、救命救急科と連携して24時間体制で緊急の手術に対応しています。

門司区大里エリアにおいて入院や手術を要する重症患者を24時間体制で受け入れられるのは当院のみです。(2024年6月現在)

2022年4月に開設した血管外科では、下肢静脈瘤手術や血行再建治療などに対応しているだけでなく、災害医療機関として救急の外傷にともなう血管損傷に対し24時間体制をとっております。

「症状で苦しんでいる患者さんの診療を断らない」という基本方針のもと、スタッフ間の連携を大切にしながらの診療を行っております。さらに、患者さんの症状や状況によっては連携医療機関への紹介やスペシャリストを招聘しての治療を行うなど、臨機応変に対応しています。

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新小文字病院 受付の様子

救急車で運ばれてきた患者さんの治療が終わったからといって、病院の役目が終わるわけではありません。当院は、リハビリを行って元の生活に戻る、あるいは施設に入所するといった段階まで考えなくてはいけないと考えています。この観点から、当院はリハビリにも力を入れ、退院後、在宅での医療や施設入所にスムーズに移行できるよう、地域の医療機関や介護施設などとの連携を図っています。

この取り組みの一つとして、当院の研修医は在宅医療に取り組んでいらっしゃる医師や医療機関のもとへ勉強をしに行っています。これは、在宅医療の現場をよく知ったうえで、患者さんの支援を行っていきたいと考えているためです。また、こうした取り組みを続けることで、医療機関との協力体制が構築されると考えています。

2024年2月からは無料循環バスの運行も再開しました。ぜひ、当院での治療やリハビリに通う際の負担軽減にお役立ていただければと思います。

医療提供だけでなく、地域の皆さんが健康に暮らせるような健康講座を積極的に行っています。講座では、医師らが考案した当院オリジナルの健康体操を指導するほか、病気や検査、医療制度について医師やスタッフらが分かりやすく説明します。

また、新型コロナウイルス感染症流行の影響により2020年以降延期となっていた『新小文字健康フェスタ』も、2023年10月27日に開催。過去最高の来場者数という大盛況の中で幕を閉じることができました。健康フェスタは今後も毎年秋に開催する予定です。

病院というのは、基本的には病気の方がいらっしゃる場所です。しかし、こうした健康講座などを通じて地域の方に当院のことを認識していただければ、災害などの際にも頼っていただけると考えています。当院は福岡県の災害拠点病院に認定されており、その役割を果たすべく、日頃から地域の皆さんとの繋がりを重視しています。

当院での研修は、体系的な研修プログラムのもとで行うわけではなく、研修医も実際の診療に積極的に関わっていく実地研修、つまりOn-The-Job Trainingが中心です。救急対応をはじめとした実際の医療現場で、さまざまな経験を積むことができます。

実は私自身も、かつては当院の研修医でした。そんな私が今もここで働いている大きな理由は、研修医時代から「ここは風通しが良くて働きやすい」と感じることができたからです。みんなで自然と同じ方向を向き、より良い病院にしようという意識共有ができており、コミュニケーションがしっかりとれている点に魅力を感じました。いつも周りのみんなに助けてもらっているという状況は、研修医時代も今も変わりません。当院には私以外にも、当院での研修を経て今もここで働き続けている方が大勢いらっしゃいます。ぜひ、当院での研修をご検討ください。

当院には幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃいますが、地域全体が少子高齢化していることから患者さんの高齢化も年々進んでいます。今や60歳以上の患者さんの割合は全体の80%を超えており、さらに高齢かつ一人暮らしという状況の方も増え続けています。

そうした状況の中、当院は患者さんが頼りたい時、必要としている時に必ずお役に立てる病院でありたいと考えております。今後も、持ち前のフットワークの軽さと成長性を生かし、「より質の高い医療を患者さんに還元できる病院」「地域のみなさんの信頼を得られる病院」となることを目指し続けますので、みなさんもどうか私たちを見守り、ご支援くださいますようお願いいたします。

実績のある医師をチェック

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