院長インタビュー

広島中央医療圏の急性期医療をけん引する、東広島医療センター

広島中央医療圏の急性期医療をけん引する、東広島医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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広島県東広島市にある東広島医療センターは、地域の最後の砦として急性期医療を提供する地域の基幹的な病院です。広島市まで電車で約40分ほどの場所に位置する東広島市は、低い高齢化率が特徴で、若い世代の患者さんも少なくありません。救急受け入れやがん治療、周産期医療などさまざまな分野で広島中央医療圏を支える同院の病院長である柴田 諭(しばた さとし)先生に、病院の特徴や院長としての思いを伺いました。

東広島医療センターは401床を有し、設立以来地域の基幹病院として多くの患者さんを治療してきました。人口約22万人を有する広島中央医療圏(東広島市、竹原市、大崎上島町で構成)で唯一の公的な総合病院であることから、がん診療連携拠点病院、地域支援病院としても指定されています。また、東広島市内には大学が4つあることから高齢化率は全国平均の29%を下回る25%に留まっており、若い世代が多いのも特徴です。

当院は、1939年(昭和14年)に傷痍軍人広島療養所として創設されました。2001年(平成13年)には国立病院・療養所の再編計画に伴い、国立療養所畑賀病院と統合し、がんや循環器病、呼吸器疾患、内分泌・代謝性疾患の専門医療施設として位置づけられました。その後2004年(平成16年)に国立病院から独立行政法人国立病院機構の移行に伴い、現在の東広島医療センターへと改称し、現在にいたります。専門的な医療の提供だけでなく、臨床研究、教育研修、情報発信を積極的に行っております。

当院では東広島市内の救急の約半数を受け入れており、特に脳血管や心臓系の迅速な対応が重要なものは、早急な治療ができるように体制を整えています。

救急の受け入れは市内で輪番制を取っていますが、そのうちの半数である約4,600件(2023年現在)を当院で受け入れています。これは県内でもトップ5に入る件数で、外科系、内科系、研修医のすべての医師が協力し合って救急対応に当たっています。10年前と比較すると救急の数が倍以上に増えており、“この病院の維持こそが地域の急性期医療の維持”だと考えて、今後も受け入れ体制を強化してまいります。

当院は、2006年に地域がん診療連携拠点病院に指定されており、地域におけるがん診療の拠点として、研究機関や他の医療機関と連携してさまざまな技術を取り入れ、質の高いがん医療の提供に努めています。

■ダヴィンチの導入

当院では、2023年にロボット手術支援装置の“ダヴィンチ”を導入しました。ダヴィンチは、内視鏡下手術で低侵襲かつ従来難しかった操作を可能にし、精緻で安全な手術を可能にするものです。当院では、泌尿器科では、2023年12月から前立腺癌に対してロボット支援下前立腺全摘除術を開始し、2024年4月から腎癌に対するロボット支援下腎部分切除術を開始しております。消化器外科や呼吸器外科でも大腸癌や肺癌などに対して治療を開始しています。

■外来での化学療法

外来での化学療法にも注力しています。患者さんが日常生活を継続しながら治療を受けられるように、近年では抗がん剤治療は入院から外来へとシフトしています。治療の質を向上させるには、病院と保険薬局との連携を含めた院内外でのチーム医療が重要です。当院でも、地域の保険薬局と連携を強化し、抗がん剤治療を受けた患者さんの治療効果の最大化を図っています。

■リニアックによる放射線治療

放射線科ではリニアックによる各種悪性腫瘍(がん)に対する放射線治療を行っており、各科と緊密に連携し、がんの病変をピンポイントで治療する高精度放射線治療にも積極的に取り組んでいます。

当院は、2021年4月1日付けでがんゲノム医療連携病院に指定され、がんゲノム医療拠点病院である広島大学病院の指導を受けながらがんゲノム医療の提供を始めています。がんゲノム医療とは、がんの発症に関連した数百種類の遺伝子を一度に調べ、患者それぞれの体質や病状に合わせて治療や診断に役立てる医療です。

このように、当院では今後も各機関と連携しながら新しい技術を取り入れ、がん治療に励みます。

当院では、早急な対応が求められる脳卒中脳梗塞などの脳血管系疾患、心筋梗塞といった心血管系疾患は、特に積極的に受け入れています。これらの疾患は、手術を含めた治療までの時間が非常に重要です。そのため、外科医と麻酔科医、手術室を担当するスタッフが連携し、緊急手術に対応できるよう体制や、緊急に血管内治療が行える体制を整えています。

救急での受け入れはもちろんのこと、近隣の病院から診断された直後から率先して引き継ぐこともしており、文字通り24時間365日、医療を提供しています。

当院は2012年3月より分娩の受け付けを開始し、2012年10月から広島県地域周産期母子医療センターとして診療に当たっています。病床数はNICU(新生児集中治療管理室)6床、GCU(回復治療室)6床を含めて47床を有しており、広島中央医療圏ではNICUを備えた唯一の周産期母子医療センターです。近隣の産科施設が閉院等したこともあり、今後は分娩数がさらに増加することを見込んでおり、体制を強化しております。

また、当院では東広島市と周辺地域の小児疾患に対して、日本小児科学会専門医を中心に診察に当たっております。外来での診察はもちろんのこと、小児科の入院病床を持つ病院は広島中央医療圏で当院のみですので、幅広い小児疾患に対応しております。

当院は、広島中央医療圏で唯一、呼吸器外科を掲げる病院であり、東広島市内に若い世代が比較的多いことも相まって気胸の治療実績が県内でも非常に多くなっています。特に2019年の気胸センター開設以降は、広島県内だけでなく、中四国・九州地方からも多くの患者さんが訪れています。

広島中央医療圏には若い世代が数多く生活していることから、当センターには原発性気胸の患者さんが多く受診されていますが、最近では続発性気胸の高齢の患者さんの増加傾向も見受けられます。高齢に伴い気胸以外の疾患を複数抱えている場合も少なくないですが、当センターでは総合病院の特性を活かして複数の診療科と連携して治療を行うことが可能です。

当センターにおける気胸の症例経験は国内外の学会で高い評価をいただいています。さらに、治療が困難である“間質性肺疾患に合併した気胸患者さんへの治療”に関して、国立病院機構の病院で行われる多施設共同研究の代表施設にも指定されました。今後も迅速に診断および治療ができる体制を整えてまいりますので、気胸に関する相談は、当院までお気軽にお問い合わせください。

当院では、地域の方々へ向けて、医療や健康維持分野において関心が高いテーマを取り上げて講演を行うなど、地域活動に力を入れています。

東広島医療センターフォーラムは、東広島市内のホールで毎年行っているものです。前回はロボット手術や放射線治療、がん骨転移後の整形外科手術などの医師からのミニレクチャーの他に、外部講師を招いてがんに効く健康食品の見極め方の講演会を実施しました。

また、心臓いきいき市民公開講座も実施し、医師だけでなく、理学療法士や薬剤師も講演を行いました。自宅で簡単にできるリハビリなどは、生活に取り入れやすいと特に好評です。

ほかにも、医療相談・がん相談支援窓口を設置し、ソーシャルワーカーやがん相談員が地域住民のさまざまな悩みに対応できるようにしています。どちらの窓口も、診察を受けなくても気軽に相談できるような体制を整えており、当院の医療従事者はもちろん、地域の医療機関とも連携を図っています。

地域の急性期医療の需要は今後も維持されると予測されています。近隣の医療機関、行政機関、医師会、大学などと協力しながら、当院の役割と機能を強化し、地域のニーズに応じた体制を構築する必要があります。当院を退院された患者様は、地域の後方支援病院へ移られる方々も多く、回復期から慢性期を診ていただく地域の病院との連携は特に重要です。今後も地域の医療をともに支えられるように近隣の医療機関と連携を強め、広島中央医療圏の急性期医療の中核的な病院として当院を信頼し選んでいただけるように努力してまいります。

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