福岡県飯塚市にある福岡県済生会飯塚嘉穂病院は、一般病棟だけでなく、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、緩和ケア病棟を有し、急性期から回復期、慢性期まで幅広くシームレスな医療を提供しています。
同院が現在提供している医療や病院の特徴、強みについて、院長の関口 直孝先生にお話を伺いました。
当院はさまざまな種類の病棟を持つケアミックス型の病院です。急性期の治療だけでなく、リハビリテーションや緩和ケアなど、幅広く地域のニーズに応えられるよう体制を整えています。
当院はもともと福岡県立嘉穂病院として開設され、2007年に福岡県から済生会へ移譲されました。その後2011年には現在の建物が竣工し、“福岡県済生会飯塚嘉穂病院”として新たなスタートを切りました。“飯塚嘉穂”という地名を名称に含めたのは、地域の方々に親しまれる病院を目指していることからです。
当院はかつて結核・じん肺等の呼吸器疾患、糖尿病、リウマチを中心とした地域医療を担っていましたが、地域のニーズに応じて徐々に内科や整形外科、リハビリテーションを中心とした診療体制へと変化してきました。今後も地域のニーズに応えていけるよう柔軟に変化しながら、医療体制を強化していく予定です。
現在、飯塚市の人口は約12万人で、高齢化率は32%を超えています(2022年時点)。今後さらなる高齢化が見込まれており、当院では地域の実情に即した医療体制の整備を強化しています。
もともと当院は呼吸器疾患に強い病院として発展してきたこともあり、現在も熟練した呼吸器内科専門医が、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患、肺がんなどの疾患に広く対応しています。
また、この地域は糖尿病の患者さんが多いという特性があり、糖尿病の診療にも力を入れています。私自身を含め日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医や指導医、また糖尿病療養指導士*など資格をもったスタッフが多数在籍しており、糖尿病教室なども定期的に開催しています。
そのほかにも、高齢者が多いこの地域のニーズに合わせ心臓疾患や脳卒中、整形外科的疾患、それに伴うリハビリテーションにも注力しています。
*糖尿病療養指導士……日本糖尿病療養指導士認定機構より認定を受けた指導士を指す。
当院では、急性期治療を行う一般病棟以外にも、さまざまな病棟を備えています。
急性期治療を終えた患者さんが、自宅や施設にスムーズに戻るための架け橋となっているのは“地域包括ケア病棟”です。急性期の治療が終わったものの、すぐに自宅に帰れない患者さんのために、一般病床と地域包括ケア病床を同じフロアに設置し、必要に応じてスムーズに移動できる体制を整えています。
また、脳卒中や運動機能障害などの患者さんにも対応できるよう“回復期リハビリテーション病棟”も備えています。回復期リハビリテーション病棟は稼働率が高く、常に満床に近い状態です。特に近隣の基幹病院である飯塚病院との連携を強化しており、急性期治療後にリハビリが必要な患者さんを当院で受け入れる体制を整えています。
当院はほかにも“緩和ケア病棟(ホスピス)”を有しており、主治医と緩和ケアチームとでがん患者さんに寄り添ったケアを行っています。近年、クラウドファンディングを通じてたくさんのご支援をいただき、緩和ケア病棟の園庭を改修しました。自然と触れ合える環境で、患者さんやそのご家族が心穏やかな時間を過ごしていただける場となればうれしいかぎりです。
当院では、地域住民の皆さんとのつながりを大切にしており、健康増進を目的としたさまざまな活動を展開しています。直近では、ショッピングモールで“済生会健康相談フェア”を開催し、フレイルやロコモの予防に焦点を当てた健康相談を行いました。また、九州プロレスにご協力いただき、プロレスラーの方々による健康促進イベントも企画しており、ご高齢の方からお子さん子まで楽しみながら健康意識を高める機会を提供しています。ほかにも、公民館を巡る出張健康教室を月に一度開催し、血圧や血糖値、骨密度の測定と講演を通じて地域の皆さまの健康を支援しています。
また、当院では地域包括ケアシステムの推進にも積極的に取り組んでおり、行政や医師会、消防、民生委員、介護職などと協力し、住みよい街づくりを支援しています。このような地域活動を通じて、医療だけでなく地域全体の健康にも貢献してまいります。
当院は、“地域にもっとも近い医療機関”であることを目指しています。病気の治療を行うことだけに留まらず、患者さんの人生に寄り添うことを大切にし、急性期治療から回復期、慢性期、終末期まで幅広くカバーできるよう体制を整えています。
今後も近隣病院との連携を大切に、地域のニーズに合わせた医療提供を心がけるとともに、多様な形で地域に貢献できる医療機関でありたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。
*病床数や診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年9月時点のものです。