院長インタビュー

患者さんとそのご家族、そして職員からも選ばれる病院を目指したいー川村病院

患者さんとそのご家族、そして職員からも選ばれる病院を目指したいー川村病院
メディカルノート編集部  [取材]

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静岡県富士市にある川村病院は、富士市を中心にした富士医療圏で消化器疾患を中心に診療をしています。2020年に緩和ケア病棟を開設し、診断から治療、看取りまで、患者とその家族に寄り添った医療を提供しています。そんな同院の役割や今後について、院長の川村 雅彦(かわむら まさひこ)先生に伺いました。

当院は1964年に、私の祖父が病床数18床の川村外科医院として開院したのが始まりです。1984年に川村病院となり、1996年に南館病棟を増設するなど病床数を増やし、現在の病床数は20床の緩和ケア病棟を合わせると76床になります。その間、1999年に訪問看護ステーション「ケアメイト」を開設したほか、2020年に内視鏡センターと緩和ケア病棟|いまここ|を開設するなど、検査から治療、そして看取りまで、患者さんに提供できる体制を整えました。

当院が最も力を入れているのは胃がん大腸がんなどの消化器疾患で、富士医療圏で非常に多くの患者さんに来ていただいています。そのほかでは乳がん胆石症、肛門疾患、ヘルニアなどの手術実績が多く、2023年度は乳がんが57件、胆石症の腹腔鏡手術が93件、肛門疾患が140件、ヘルニアが腹腔鏡と開腹を合わせて170件でした。一方、近年増加傾向にある炎症性腸疾患の患者さんも当院に多くいらっしゃっており、特に指定難病でもある潰瘍性大腸炎クローン病については特別外来で診療しています。また、救急においては富士医療圏における2次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っています。

当院で検査や治療の多い病状は、胃がん大腸がんをはじめとした消化器系のがん乳がんで、胃がんと大腸がんについては主に内視鏡を用いて施行し、術後の早期離床と早期回復を図っています。特に内視鏡による検査と治療に力を入れており、2020年に開設した内視鏡センターにおける1日の検査数は約50件、年間では上部消化器内視鏡を約5,000件、下部消化器内視鏡を約5,000件、胆道内視鏡を約150件に上りました(2023年度の実績)。治療においては、大腸ポリープに対しては内視鏡的大腸ポリープ切除術や内視鏡的粘膜切除術(EMR)などを、総胆管結石や胆膵悪性疾患による黄疸に対しては内視鏡的胆管ステント留置術(ERBD)や内視鏡的乳頭切開術(EST)などを、胃粘膜下腫瘍に対しては外科と合同で腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)などを施行しています。また、急性胆のう炎に対しては、従来の経皮経肝胆のうドレナージ術(PTGBD)だけでなく、より低侵襲(体に負担が少ない)な内視鏡的逆行性胆のうドレナージ術(ERGBD)にも対応しています。

当院は、腹水の治療である“KM-CART(腹水濾過濃縮再静注法)”が受けられる数少ない医療機関の1つです。中部地方では初の認定施設でもあることから、愛知県や岐阜県、新潟県などからも患者さんが来院され、アクセスが良いとの理由で東京都から通院されている患者さんもいます。KM-CARTは、がんや肝硬変などで腹腔内に溜まった腹水を抜き取り、抜いた腹水からがん細胞など有害な物質を除去したうえで、必要なタンパク質を濃縮して点滴で患者さんの体内に戻す方法です。当院の担当医師と看護師はCART研究会にて研修・指導を受け、十分な経験を有していますので、お気軽にお問い合わせください。

当院はがん診療を得意としていますが、最期の“看取り”までしっかり診ていきたいと思い、2020年に20床の緩和ケア病棟|いまここ|をオープンしました。病床を増やすのは簡単ではありませんが、近隣の病院が閉院したために地域で緩和ケアを行う医療機関へのニーズが高まったこともあり、病棟を開設しています。患者さんとご家族の皆さんがより自分らしく過ごしていただけるように、共有スペースは木をふんだんに使用して自然を感じられる雰囲気、病室は白を基調とした落ち着く雰囲気になっております。

今年(2024年)に入ってから、抗がん剤治療に取り組んでおられる患者さんに、頭⽪冷却療法*の提供を始めました。静岡県東部で実施している医療機関は、現在当院だけになるかと思います。頭⽪冷却療法は患者さんの頭⽪を冷却し、⽑根に対する抗がん剤のダメージを低減させる治療法で、脱毛の量が減ったり発⽑までの期間が短縮されたりするなどの効果が期待できます。脱毛は化学療法の副作用の中でも苦痛を感じる患者さんが多いと言われています。主に乳がんの患者さんが対象になりますが、負担が少しでも軽減されればと思い導入しました。

* 自由診療です。 
費用 頭皮冷却費用16500円(税込)、頭皮冷却用キャップ費用91,300円(税込)
治療頻度/回数(目安) 状態により複数回の施術が必要です
治療内容 抗がん剤の副作用緩和のため
リスク・副作用 頭痛、頭皮の痛み、めまい等が起こる場合があります

患者さんにとって、病院でもご家庭でもない第三の居場所となる場所を提供したいとの思いから、2018年に幸ハウスを開設しました。多くの患者さんを診ている中で、患者さんはいつもいい患者さんであろうとし、また、ご家族はいつもいい家族であろうとする傾向があることに気付きました。これでは、患者さんがご家庭に戻っても弱音を吐くことができません。そこで、自分の大切にしたいものを大切にできる場所として、幸ハウスを始めました。モデルはロンドンにあるマギーズ・センターです。同センターは病と闘っている奥さんのため、設計士だったご主人が自分らしく過ごせる場所として建てたものです。

また、緩和ケアに取り組んでいる当院の大木先生は、音を使って患者さんとそのご家族を癒すこと、つまり、音響療法にも取り組んでいます。緩和ケア病棟は自然を感じさせる造りになっていて、建物そのものが“癒し”を提供しています。そこに大木先生の取り組みが相乗効果を生み、患者さんとそのご家族にとって素晴らしい“癒し”の空間になるはずです。

少子高齢化が全国的に進んでおり、当院がある富士市も例外ではありません。その影響もあり、地域の皆さんが必要としている医療サービスも変化しています。そこで当院では、基本方針にも掲げているように、診断から治療・看取りまで提供できるよう、医療機器の整備と人材の育成を行ってまいりました。今後も良質で安心・安全な医療を提供し続け、地域の皆さんから選ばれる病院になるため努力を続けてまいります。

また、少子高齢化の影響は、医師や看護師といった人材確保の面にも影響しています。そこで私の院長就任を機に、職員の皆さんから「当院で働くことができて良かった」と思っていただけるよう、職場の環境や待遇の改善にさらに取り組みたいと考えています。こうした努力の積み重ねが、地域の皆さんに提供できる医療の質向上につながると信じています。

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