大阪市北区中之島にある住友病院は、北区周辺の地域に密着した医療をおこなう地域医療支援病院です。同院の地域における役割や今後について、院長の金倉譲先生に伺いました。
住友病院は、1921年7月に住友グループの社会貢献活動の一環として、地域の方々に質の高い医療を提供することを目的に開設されました。当時は現在の北区中之島ではなく此花区にあり、名称も“大阪住友病院”でした。その後戦災によって西区に移転し、1959年には“住友病院”と改称。翌1960年に中之島に移転した後、2000年9月には至近の場所に新病院を建設して移転して21世紀の病院に相応しい“新しい住友病院”として生まれ変わりました。
当院が位置するエリアは、少子高齢化の中でも人口が増えている稀有な地域です。そのような地域の医療を担う“地域医療支援病院”(かかりつけ医を支援し、地域医療の中核を担う体制を備えた病院)として、地域の病院・診療所からより詳しい検査や専門的な医療が必要と紹介いただいた患者さんに対し、専門的治療、検査、入院、手術等を通じてできうる限りの医療を提供しています。
当院の診療科は、産科を除く内科系・外科系がほぼすべて揃っています。また、大阪大学、京都大学をはじめとして出身大学の異なる医師たちが相談しながらそれぞれの文化を持ち寄りつつ治療にあたっており、非常に風通しのよい風土があります。また新しい建物、新しい機器が揃っていると自負しており、がんなどの手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”、人工関節置換術でより精密な手術が可能になる手術支援ロボットアーム“Mako”などのほか、MRI、CT、放射線照射装置といった医療機器も新しく、恵まれた環境で質の高い医療を提供しています。
当院では救急に力を入れています。2024年の救急車による搬送数は月に430~440台で、2023年と比べて倍増という状況となりました。その要因として、若い人たちに意見を聞いてさまざまな案を出してもらい、日勤帯や当直帯の人の置き方を変えたことが大きいと考えています。フラットな意思疎通がはかれて充実した救急体制が組めるようになり、とてもいい実例が生まれました。
救急で多い疾患は循環器、骨折、腹痛、頭痛などです。症例はバラエティに富んでいますが、“なにかあったら駆け込める”できるだけ自分たちで診られる症例は診ましょう”というコンセプトで引き続き救急の患者さんを受け入れていく方針です。
現在当院は、がん治療に注力しています。大阪府のがん診療拠点病院には制度開始初年度から2025年現在まで続けて指定されており、がんの3大療法(手術、化学療法、放射線療法)による集学的治療を行うとともに、緩和ケアの充実、在宅医療の支援、がん患者・家族等に対する相談支援、がんに関する各種情報の収集・提供等の機能を備え、地域におけるがん医療に大きく貢献していると自負しています。
また、先述したように手術ではロボットの“ダ・ヴィンチ”を導入しているほか、放射線では高精度放射治療も行っており、甲状腺がんや乳がんのほか、肺がん、胃がん、肝胆膵がん、大腸、膀胱がん、子宮頸がんなどの治療に強みがあります。さらに当院は、検査、診断、手術、術後を含め、内科と外科の敷居も診療科の敷居も極めて低く、スムーズな連携が実現できています。当院の風通しの良い環境が、がん治療でもよい方向に影響を与えている結果だと思っています。
当院の前院長である松澤佑次先生は、脂肪細胞から分泌されるタンパク質“アディポネクチン”の発見者であり、メタボリックシンドローム治療の第一人者です。松澤先生は現在も名誉院長・最高顧問として当院に関わっており、内分泌代謝内科は多くの患者さんがいらっしゃっています。
そのような経緯から、当院はメタボ健診などの健診や早期教育に注力しています。健康管理センターでは総合健診(日帰り人間ドック、宿泊ドック)を中心に、企業の法定定期健康診断および個人の定期健康診断、産業衛生健診の1つである情報機器(VDT:Visual Display Terminals パソコンやテレビなどのモニター機器)作業健診を実施していますが、生活習慣病チェックにも重点を置いているのが特徴です。
メタボリックシンドロームやその前段階の方に対しては、当院が積み重ねた治療実績をもとに、患者さんの生活習慣に合わせた栄養士による食事指導や生活指導も積極的に行なっているので、ぜひ当院の健診をご利用下さい。
現在の医療制度は、1人の患者さんを我々だけで見続けるのではなく、地域の医療機関と役割分担をしながら診させていただく仕組みになっています。そこで重要になるのが地域の医療機関と当院の連携です。そこで当院では地域医療連携室を設置し、各地域の先生方のご協力を頂きながらご紹介患者さんの診療の受け入れはもとより、検査の枠も拡大して初めて来院される際にスムーズに安心して受診できるよう取り組んでいます。
また、かかりつけ医の先生方との役割分担を活用した病診連携を密にし、推進に努めています。と当院では精密検査、入院加療、救急などの治療を行い、検査、診断、治療が一段落したら、経過観察を患者さんに便利のよい医療機関にご紹介。逆に病院は紹介患者さんの受け皿になることで、病院と診療所双方の患者さんの流れが機能分担を果たします。そうすることで、病診一体となって患者さんを守っていきたいと考えています。
住友病院は“信頼性の高い医療で地域に貢献”をかかげ、リスクの芽を摘み取り安全な医療を提供することをモットーとしています。地域医療連携室を設置し、かかりつけ医の先生方との密な連携を図り、患者さんが安心して受診できる環境を整えていますので、ぜひ緊張せず来院していただけたら幸いです。「なにかあったら駆け込める」「住友なら行ってみよう」と思っていただけるように、スタッフ一丸となって頑張っています。
建物もデザインも先進的で、恵まれた環境で質の高い医療を提供できるのも当院の特徴です。また現場の人たちの意見を取り入れる風通しのいいフラットな風土を醸成し、診療科間で敷居をなくして連携したケアができるように工夫しています。こういった地道な努力の積み重ねが、質が良く満足度の高い医療につながると考えています。
当院が強みとするがん治療、人間ドック、メタボ治療を通じて患者さんや地域社会の健康に貢献できることが、私たちのこのうえない喜びです。小さなことでも気にせず、安心して住友病院にご相談いただければと思います。