院長インタビュー

幅広い分野で専門的な医療を提供する岡山医療センター

幅広い分野で専門的な医療を提供する岡山医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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独立行政法人国立病院機構 岡山医療センターは、前身となる岡山衛戍病院(おかやまえいじゅびょういん)が1907年に設立されて以来、岡山県南東部の地域医療を支える病院の1つとして長い歴史を歩んできました。

現在も幅広い分野で専門的な医療を提供している同院の特徴や強みなどについて、院長の柴山 卓夫(しばやま たくお)先生にお話を伺いました。

当院は1907年に岡山衛戍病院として設立されました。第二次世界大戦終戦後の1945年10月に国に移管されて国立岡山病院となり、2001年4月に国立病院岡山医療センターとして現在の岡山市北区田益に移転後、2004年4月に独立行政法人化して現在の岡山医療センターとなっています。

現在は33の診療科と609床の病床を有し、二次救急医療施設や特定移植センター、総合周産期母子医療センター、地域医療支援病院、がん診療連携拠点病院、地域災害拠点病院、原子力災害拠点病院、がんゲノム医療連携病院といった数々の指定や承認を受けるなど、地域の中心的な病院となっています。

当院は山陽自動車道の岡山ICを降りてすぐという利便性のよい場所にあり、岡山市内のみならず備前市、真庭市、高梁市、新見市などからも患者さんがいらっしゃいます。地域の診療所やクリニックなどとの連携も積極的に推進しており、かつては6割台だった紹介率(初診患者さんのうち、他の医療機関からの紹介患者さんの割合)も、2023年度は9割を超えるまでになりました。

また、とくに救急医療に関しては二次救急指定病院として年間4,000台近くの救急車を受け入れており、三次救急に近い状態の患者さんを受け入れることも少なくありません。当院では“患者さんを断らない”をモットーに、手術や入院による治療が必要な方への医療を提供しています。

当院は、“今、あなたに、信頼される病院”という理念のもと、全職員が地域の医療を支えることを目標に日々、患者さんと向き合っています。33の診療科はそれぞれ実績のある医師をそろえ、質の高い医療を提供していますが、今回はそのなかでも4つの領域について紹介させていただきます。

循環器内科は主に心臓や血管が原因となって起こる病気に対応する診療科で、当院の循環器内科では近年、カテーテルアブレーションによる不整脈治療を開始しました。カテーテルアブレーションとは、不整脈の原因となる異常な回路や異常な電気信号を発生させる部位を、カテーテルの先端から流れる高周波電流で焼灼(しょうしゃく)(焼いて破壊する)して消滅させる治療法のことです。当院ではこのカテーテルアブレーションに力を入れており、2023年には150件近い治療実績となりました。

また肺高血圧症の治療も積極的に行っており、肺動脈性肺高血圧症慢性血栓塞栓性肺高血圧症(まんせいけっせんそくせんせいはいこうけつあつしょう)の患者さんに対する薬物療法に加えて、肺動脈の狭窄(きょうさく)閉塞(へいそく)をバルーンで拡張するカテーテル治療やバルーン肺動脈形成術(BPA)も行っています。BPAについては全国から患者さんがいらっしゃるだけでなく、医療技術を学ぶために海外から医師が研修に来ることもあります。

呼吸器内科では呼吸器疾患全般を診療しており、とくに呼吸器インターベンション治療(気管支鏡を用いた治療)に積極的に取り組んでいます。なかでも腫瘍(しゅよう)などによる気道狭窄に対して気道内にステント(筒状の人工物)を挿入して空気の通り道を確保する気道インターベンションに力を入れており、中国・四国地方の全域から紹介患者さんを受け入れています。

また、呼吸器内科では肺がんなどの診断に用いる検体の採取を行う際、従来の方法よりも良好な検体を採取できるクライオ生検を導入しました。これは、先端が最大マイナス50℃になるペン型の治療機器・クライオプローブを使用して病変組織を凍結させたうえで採取するもので、組織を大きく採取でき、組織が潰れるリスクを軽減できるなどのメリットがあります。クライオ生検は気道内の異物除去も可能であり、今後国内で広く普及していくでしょう。

当院はがん診療連携拠点病院であり、手術・化学療法・放射線療法のがんの三大療法による集学的な治療を行っています。
手術においてはなるべく低侵襲(体への負担が少ない)な治療を心がけており、2023年の11月には手術支援ロボット“ダ・ヴィンチXi”を導入しました。現在は泌尿器科(前立腺がん膀胱がんの手術など)・消化器外科(胃がん大腸がんの手術など)・呼吸器外科(肺がんの手術など)で活躍しており、2025年1月末までに87例の実績を重ねています。今後は腎がんの手術なども行っていく予定です。

また、当院は岡山市内で最初にがんゲノム医療連携病院の指定を受けた病院です。院内に開設したがんゲノム医療センターでは患者さんのがん遺伝子を調べ、治療可能な薬剤がある場合は治療に繋げています。

当院は1975年に全国に先駆けて小児医療センターを設立し、新生児の救急医療体制を整備しました。1991年12月にはUNICEFより先進国で初めて“赤ちゃんにやさしい病院”に認定され、2005年4月には岡山県より総合周産期母子医療センターの指定も受けるなど、小児・周産期医療に力を入れてまいりました。2024年10月現在、県南東部において小児・周産期の救急対応ができるのは当院のみとなっています。また、当院のNICU(新生児集中治療室)は24時間365日のご両親の面会を行っており、きょうだいや祖父母の面会も可能です。こういった取り組みも全国的に見て少ないのではないでしょうか。

また、この地域の小児・周産期救急を担うために、当院では24時間365日体制でハイリスクな母体や新生児の搬送を受け入れています。さらに、地域の産院などで出生後の異常が生じた場合に備えて、新生児科の医師が同乗する新生児搬送専用ドクターカーも運用しています。
総合周産期母子医療センターでは、ハイリスク分娩や低出生体重児に対して専門性の高い医療を提供しており、なかでも出生体重1,000g未満の超低出生体重児の救命率(生存率)は90%以上という高い数値であり、全国でも非常に良好な成績といえるでしょう。

当院の小児外科では小児慢性腎臓病(小児CKD)に対して、腎臓を専門にする小児科医・腎臓移植外科・泌尿器科が連携し、透析腎移植などを行っています。とくに生体腎移植や献腎移植を積極的に行っており、2023年には6件の献腎移植を行いました。低年齢や合併症のある小児CKD患者さんに対する腎移植が可能な医療機関は全国的にも珍しいため、岡山県に限らず中国四国地方や近畿地方などからも患者さんがいらっしゃいます。

当院の役割は、急性期の医療の提供だけはありません。災害時に地域の医療を守ったり、発災地にDMAT(災害派遣医療チーム)を派遣する災害医療の拠点としての役割、人材教育の役割など、当院では多くの取り組みを行っていますが、ここではリハビリテーションへの取り組みと、研究についての取り組みを紹介させていただきます。

近年の高齢化に伴うニーズに応えるため、当院では患者さんの機能回復や日常生活動作(ADL)の維持などを目的にしたリハビリテーションを重視しています。リハビリテーション科では院内全診療科の患者さんを対象にリハビリを提供しており、2023年度からは土日祝日を含めた“完全365日リハビリテーション”を導入しています。

これによって、リハビリテーションの実施単位数は導入前の1.24倍に増加するなど、より効率的なリハビリテーションを提供できるようになりました。患者さんの満足度も向上しており、よい流れができてきたと手ごたえを感じています。

当院は臨床研究や治験にも力を入れており、2023年度には123件の臨床研究と83件の治験を実施しました。臨床研究や治験はさまざまな診療科で行っていますが、なかでも血液内科は多施設共同研究への参加や、海外の施設との共同試験などによる新薬開発を積極的に行っています。
このような取り組みは医療の進歩に欠かすことができません。当院では引き続き、研究活動にも力を注いでいきたいと考えています。

当院は33の診療科を有する大規模総合病院であり、数々の指定や承認を受け、新しい機器の導入も推進しています。このように医療体制が充実しているからこそ、“持っているものをしっかり生かして、地域の皆さんの健康と生命を守る”という意識を強く持ち、地域医療を支えていく必要があると考えています。

地域の皆さんが困ったとき、いざというときに頼れる病院となるために職員一丸となり、いっそうの努力をしていく所存です。どうか今後とも、当院への温かいご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

※本文中の数字は全て2025年1月現在のものです。

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