インタビュー

シェーグレン症候群の検査と治療法について-何科を受診すべきか?

シェーグレン症候群の検査と治療法について-何科を受診すべきか?
メディカルノート編集部 [医師監修]

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この記事の最終更新は2018年04月12日です。

シェーグレン症候群とは、ドライアイ(目の乾燥)やドライマウス(口の乾燥)を主な症状とする指定難病のひとつです。シェーグレン症候群の根底には本来自分を守るために働く免疫の異常があり、ときには臓器や血液に症状が生じることもあります。このような病気に気づくためには何科を受診すべきなのでしょうか。シェーグレン症候群の検査・診断・治療について紹介します。

目や口の症状から、シェーグレン症候群の可能性が考えられるときには、リウマチ膠原病を専門としている内科を受診しましょう。リウマチ膠原病を専門に扱う内科では、たとえ自覚症状がドライアイドライマウスのみであっても、その背後にシェーグレン症候群による全身の異変が潜んでいないかを調べることができます。

ただし、口や目の乾きは一般的な病気でもよく起こる症状であり、ご本人が病院を受診する必要性に気づくことができないという難しさがあります。また、涙液や唾液の減少、膣の乾きによる性交時の違和感などから、眼科や歯科口腔外科、婦人科などを最初に受診する患者さんも多いといわれています。これらの診療科を受診したときに、医師がシェーグレン症候群の可能性を疑い、専門的な内科に紹介するパターンもあります。

まずはシェーグレン症候群という病気の存在やその症状を知り、不安がある場合は全身の検査を受ける機会を設けることが大切です。

前項では、最初に受診した診療科からの紹介により、シェーグレン症候群の診断がつくケースについて触れました。このようなケースのほかに、まったく異なる目的で受けた検診により、シェーグレン症候群であると発覚する例もあります。

他の目的で受けた血液検査で抗体がみつかる

シェーグレン症候群の患者さんの血液中には、特徴的な自己抗体が現れます。自己抗体とは、本来異物が体内に侵入したときなどに作られる対抗物質のことで、シェーグレン症候群を発症している場合は抗SS-A抗体と抗SS-B抗体が陽性を示します。たとえば、糖尿病の検診のために血液検査を受け、シェーグレン症候群であることがわかるというケースがあります。

涙の量を調べるテスト

シェーグレン症候群の主症状には、目の乾きがあります。そのため、シルマーテストと呼ばれる検査で涙の量を調べます。下まぶたと眼球の間に細い試験紙をはさみ、試験紙が湿った距離をもとに、一定の時間に分泌された涙の量が正常か少ないかを評価します。

眼球の傷を調べる検査

涙の量が減ると角膜や結膜には傷ができることがあります。感想による傷がないかを確認するために、染色液を点眼して観察するローズベンガルテスト(蛍光色素試験)が行われます。

涙腺の生検

シェーグレン症候群を発症すると、異変が起こっている部位にはリンパ球の集合(リンパ球浸潤)がみられます。そこで、涙腺組織の一部を採取し、浸潤しているリンパ球の量や質を調べる病理検査が行われます。

唾液の量を調べる検査

目の乾きとならぶ主症状には、唾液の分泌量が減ることによる口の乾きがあります。唾液の分泌量を調べるために、ガムを10分間噛むガムテストが実施されます。

画像診断

レントゲン検査やCT検査、MRI検査などを画像検査といいます。造影剤を使用した画像検査により、唾液腺に異常が起こっていないかを調べることができます。

唾液腺生検(生検病理検査)

唾液腺の組織を採取し、浸潤したリンパ球の量や質を調べます。

シェーグレン症候群では、血液中に特徴的な自己抗体が現れます。特に、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が陽性を示す場合、発症している可能性が考えられます。

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現時点では、シェーグレン症候群の診断を1つの検査結果のみでつけることはできません。そのため、前項までに挙げた複数の検査を行い、診断基準を満たした場合にはじめて確定診断がつきます。現在医療の現場で使われている診断基準には、現・厚生労働省の改訂診断基準と米国リウマチ学会の分類基準があります。(2018年4月時点)

【シェーグレン症候群改訂診断基準】(厚生労働省,1999年)

1.生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)口唇腺組織でリンパ球浸潤が 4m㎡当たり 1focus 以上

B)涙腺組織でリンパ球浸潤が 4m㎡当たり 1focus 以上

 

2.口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)唾液腺造影で stage I(直径 1mm 以下の小点状陰影)以上の異常所見

B)唾液分泌量低下(ガムテスト 10 分間で 10mL 以下,またはサクソンテスト 2 分間 2g 以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見

 

3.眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)Schirmer 試験で 5mm/5min 以下で、かつローズベンガルテストで陽性

B)Schirmer 試験で 5mm/5min 以下で、かつ蛍光色素(フルオレセイン)試験で陽性

 

4.血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)抗 SS-A 抗体陽性

B)抗 SS-B 抗体陽性

<診断>

以上1、2、3、4のいずれか2項目が陽性であればシェーグレン症候群と診断する。

【シェーグレン症候群分類基準】(米国リウマチ学会,2012年)

1. 抗SS-A抗体または抗SS-B抗体陽性

あるいはリウマトイド因子陽性かつ抗核抗体 320 倍以上

2. 口唇唾液腺生検でフォーカススコア 1 以上

3. 染色スコア 3 以上の乾燥性角結膜炎

上記 3 項目中、2 項目以上を満たす場合シェーグレン症候群と分類する。

(除外基準:頭頸部に放射線治療を受けた既往のある者、C型肝炎、AIDS、サルコイドーシス、アミロイド―シス、移植片対宿主病、IgG4 関連疾患)

※角膜は蛍光色素染色、結膜はリサミングリーン染色、0 ~ 12 点/片眼のスコアリングシステム

Shiboski SC, et al : American College of Rheumatology classification criteria for Sjögrenʼs syndrome : a datadriven, expert consensus approach in the Sjögrenʼs International Collaborative Clinical Alliance cohort. Arthritis Care Res 64 : 475―487, 2012.より

シェーグレン症候群と診断されたときには、目や口、全身の異変など、現れている症状に応じた治療が行われます。

目の乾燥に対するアプローチ方法は、大きく3通りに分けられます。

目薬の使用

点眼薬(目薬)を使って治療します。保湿成分が配合された点眼薬や、ムチン(目の粘性成分)の分泌を促す点眼薬が使用されます。

【治療中の注意点】

ドライアイに対して処方される点眼薬には、清涼感のある成分は含まれていません。そのため、効いている実感が得られず自己判断で点眼を中止してしまう患者さんもいるといわれています。

シェーグレン症候群による目の症状を緩和させるためには、治療の継続が重要です。主治医の指示をしっかりと聞き、根気よく治療を続けることが大切です。

涙点プラグの挿入

涙を分泌する涙点を小さな栓(プラグ)で塞ぐ方法です。

【治療中の注意点】

涙点プラグのサイズが合わず外れてしまったり、炎症を起こしたりする可能性があります。違和感や不具合がある場合は、すみやかに主治医の診察を受けましょう。

ドライアイ専用メガネの着用

水分の蒸発や外傷を防ぐために、ドライアイ専用のメガネを着用する方法です。

乾燥に伴う諸症状の治療

シェーグレン症候群のドライアイを治療するためには、十分な保湿と負担の軽減が大切です。乾燥に伴い結膜炎を生じたり、角膜に傷がついたりすることがありますが、治療を続けることでこれらの症状も改善していきます。

薬物療法

口の乾燥に対する治療には、唾液の分泌を促す薬が使われます。主に唾液腺の細胞膜に存在するムスカリン受容体に作用する薬剤が処方されます。

【治療中の注意点】

嘔吐や発汗といった副作用が生じる可能性があります。

原発性シェーグレン症候群の腺外型や、リウマチ膠原病を合併した二次性シェーグレン症候群では、涙腺や唾液腺だけでなく、全身の器官に症状が現れることがあります。このような全身病変の治療には、ステロイド剤などの免疫抑制剤やアルカロイド剤という薬剤が使われます。

薬物療法が選択されるシェーグレン症候群の症状(一例)

  1. 発熱
  2. 反復性唾液腺腫脹
  3. リンパ節腫脹(偽性リンパ腫)
  4. 関節症状
  5. 進行性の間質性肺炎
  6. 糸球体腎炎
  7. 自己免疫性肝炎
  8. 中枢神経障害
  9. 高ガンマグロブリン血症やクリオグロブリン血症に伴う高粘度症候群
  10. 二次性シェーグレン症候群に合併する他のリウマチ膠原病

重症例では免疫抑制薬が使用される場合もあります。

慢性甲状腺炎原発性胆汁性肝硬変症、尿細管性アシドーシス悪性リンパ腫などが合併している症例には、それぞれの病気に対する個々の治療が必要になります。(難病情報センターより)

シェーグレン症候群の発症メカニズムは完全には解明されていないため、病気を根本から治す根治療法も確立されていません。そのため、現時点では症状をコントロールする対症療法が治療の中心となっています。根治療法の開発は、シェーグレン症候群治療における大きな課題といえます。(2018年4月時点)

シェーグレン症候群は、関節リウマチと同じリウマチ膠原病のひとつです。過去には、シェーグレン症候群と同じように関節リウマチの根治療法も存在しておらず、治療の中心は痛みや腫れに対する対症療法でした。ところが、近年になり関節リウマチの根本的な原因である自己免疫機構に作用する新薬が開発され、治療は大きく進歩しました。新薬のひとつは「生物学的製剤(バイオ製剤)」と呼ばれる薬であり、強力な免疫システムの改善作用を持つとして注目されています。

現在、この生物学的製剤を、同じ自己免疫疾患である他のリウマチ膠原病治療に応用すべく、世界中で研究が進められています。免疫異常を根本的な原因とするシェーグレン症候群も、その対象疾患のひとつといえます。今後研究がさらに進むことで、シェーグレン症候群の治療にも大きな変化がみられるものと期待されています。

シェーグレン症候群の治療方針を決定するためには、目や口の乾燥だけに注目するのではなく、全身症状がないかどうか継続的に確認していくことが大切です。全身の検査や治療を続けていくことは、病気の経過(予後)を改善させることにも繋がります。生活の質を高め、ご自身にとってよりよい人生を送るためにも、リウマチ膠原病を専門に診療している医師のもとで、ご自身に適した治療を受けることが重要です。

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