概要
プレコンセプションケアとは
プレコンセプションケアとは、生涯にわたり、身体的・精神的・社会的に健康な状態であるための取り組みとして「性別を問わず、適切な時期に、性や健康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めた将来設計や将来の健康を考えた健康管理を行う」という概念です。
従来は妊娠前からの健康状態の把握・管理のみを指す言葉でしたが、現在はそれにとどまらず、性別を問わず、妊娠を計画していない女性も含めた全ての性や妊娠に関連した悩みを抱えている方に対する、生涯にわたる健康管理を目的とした取り組みとして広く定義されています。
妊娠を希望している女性であれば、妊娠する前に修正可能な問題点を解決しておくことで健康を最適化し、妊娠後の女性や子どもの健康に悪影響を及ぼすリスクを減らすことを目指します。妊娠後に介入しても間に合わないケースが多いため、妊娠確定の“前”こそが最も重要だという視点に基づいたアプローチが行われます。カウンセリングや検査によって個人の状況と課題を把握・確認し、生活習慣の改善、病気に対する治療やコントロールなどに取り組みます。
目的
プレコンセプションケアの目的である、妊娠・出産を含めた人生設計や、自身や次世代の健康な生活を実現するためには、正しい知識を身につけることが大切です。
妊娠を希望する方であれば、妊娠前からの健康状態が、妊娠や出産、子どもの健康に影響を与えることを全ての方に知っていただきたいと思います。また、知識を身につけるだけでなく、必要に応じて生活習慣を改善したり、医学的な介入を受けたりすることが重要です。妊娠高血圧症候群などの妊娠リスクを低減させ、肥満や高血圧、糖尿病の予防といった次世代の健康につながる可能性があります。
妊娠を希望していない方にとっても、プレコンセプションケアによる生活習慣の改善などは、将来の健康を考えた健康管理として非常に有意義です。
適応
対象となる方と推奨されるタイミング
プレコンセプションケアの対象としては、性別を問わず、思春期から性成熟期にある全ての方が該当します。特に、以下のような状況にある方には、積極的なケアや受診が推奨されます。
- 妊娠・出産を希望している方
- 糖尿病、高血圧、甲状腺疾患、てんかん、膠原病などの病気(基礎疾患)がある方
- 月経不順や月経痛などの悩みを抱えている方
- 過去の妊娠・出産で問題があった、または妊娠・出産に不安がある方
今すぐの妊娠を希望している場合だけでなく、将来的に妊娠・出産を希望している場合においても、早い段階からライフデザインを考えて取り組むことには意義があります。
検査・診断
スクリーニングとリスク評価
医療機関におけるプレコンセプションケアでは、カウンセリングや検査を通じて、妊娠や健康に影響を与えるリスク因子を洗い出します。一般的な健康診断の項目(血圧、尿検査、肝機能、脂質、血糖など)のほか、以下のような専門的な検査が行われることがあります。
- 感染症検査:B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症、梅毒、風疹、麻疹など、母子感染やパートナーへの感染を防ぐための検査です。
- 婦人科検診:超音波検査による子宮・卵巣のチェックや、子宮頸がん検診を行います。
- 栄養状態の評価:貧血の検査(ヘモグロビン、フェリチン)や、ビタミンD濃度の測定などが行われます。
妊孕性(妊娠する力)に関する検査
より詳細に自身の妊孕性について知るために、以下のような検査が実施されます。
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査:卵巣に残っている卵子の数の目安(卵巣予備能)を評価する検査です。自身のライフプランを立てる際の参考情報として活用されます。
- 男性向けの検査:精液検査やホルモン値の測定、精巣超音波検査などを行い、男性側の不妊リスクを評価します。
上記の検査のみならず、検査を受ける方の状況や希望に応じてさまざまな検査が行われます。
治療の流れ
プレコンセプションケアにおいては、カウンセリングや検査の結果に応じて、生活習慣の改善や栄養指導、基礎疾患に対するコントロールなどが行われます。感染症などの治療が必要な病気が見つかった場合は、治療につなげることができます。
生活習慣の改善と栄養指導
医師や管理栄養士などが具体的な改善方法を提案します。バランスのよい食事や適度な運動、痩せすぎや肥満を避けること、禁煙、アルコール摂取のコントロール、不足しがちな栄養素の摂取などが指導されます。
特に若年女性の“やせ”は早産や低出生体重などのリスクを高めることが報告されており、胎児期の発育が不十分であった場合には、成人後に肥満、循環器疾患、2型糖尿病など生活習慣病の発症リスクが高まる可能性が指摘されています。妊娠前から食生活を整えることが将来の健康維持のために重要であり、食生活指針が公表されています。(表1)
また“葉酸”は、神経管閉鎖障害などの先天異常を防ぐ目的で、妊娠前からサプリメントなどで積極的に摂取することが推奨されています。葉酸以外にも、鉄、ビタミンD、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどの栄養素が不足しないよう指導が行われることがあります。
(表1)
基礎疾患のコントロールと薬剤の管理
糖尿病、高血圧、甲状腺疾患、てんかん、膠原病などの基礎疾患がある場合、妊娠中の病状悪化や薬剤による胎児への影響を防ぐため、計画的な管理が行われます。
これらの管理は妊娠してから開始されるのではなく、妊娠の可能性がある場合または妊娠の希望がある場合には、前もって計画的に行うべきであるとされています。ライフサイクルを考慮したカウンセリングを行い、今の状態が妊娠・出産に最適かを検討したうえで、計画的に妊娠することが推奨されます。
なお、「妊娠中は薬を飲まないほうがよい」と自己判断で中断することは危険です。病状の急激な悪化は本人のみならず、胎児にも大きな影響を与える可能性があります。必ず医師の指示に従うようにしましょう。
費用
検査費用と助成制度
プレコンセプションケアのカウンセリングや検査にかかる費用は、原則として全額自己負担となります。実際にかかる費用は医療機関や行う検査の内容などにより変動するため、事前によく確認しましょう。
また、自治体によっては助成金を支給している場合もあります。お住まいの自治体のwebサイトなどを確認してみるとよいでしょう。
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