インタビュー

便秘の原因

便秘の原因
味村 俊樹 先生

自治医科大学 医学部 外科学講座 消化器一般移植外科学部門 教授

味村 俊樹 先生

この記事の最終更新は2016年04月25日です。

便秘はその症状によって排便回数減少型と排便困難型の2つに大きく分かれます。さらに排便のメカニズムのどこに問題があるかによって、それぞれが2つのタイプに分かれています。便秘の原因からみたそれぞれのタイプの特徴について、味村俊樹先生にお話をうかがいました。

正常な場合、便意を感じていなければ直腸は空っぽです。排便する準備ができている便はS状結腸にたまっています。大蠕動(だいぜんどう)と呼ばれる腸の蠕動運動(臓器の収縮運動)によって直腸に一気に便が降りて来ると、そのことによって便意を感じてトイレに行き、排便するという流れを繰り返しています。

排便回数減少型の第1のタイプでは、腸の大蠕動は正常に起こりますが、食べている量、特に便の量を決めるもっとも大きな要素である食物繊維が不足しています。そうすると蠕動運動を促すのに十分な量の便がS状結腸にたまるのに時間がかかり、大蠕動がなかなか起こりません。その結果、排便回数が週1〜2回と少なくなってしまいますが、検査をすれば大腸は正常に働いているのです。

この場合主な症状としては、大腸の中に便が長い間とどまることによって水分が少なくなり、便が硬くなります。硬い便は肛門の機能が正常であっても出しづらくなります。これを大腸通過正常型便秘症(Normal Transit Constipation : NTC)といいます。

排便回数減少型の第2のタイプは「本物の便秘」であるともいえます。これは大蠕動の回数が少ない、あるいは蠕動運動が弱いために便がどんどんたまっていき、その結果排便回数が少なくなります。大腸にたまる便の量が多いために腹痛や腹部膨満感という症状があり、やはり長い間大腸にとどまることによって便が硬くなるため排便困難になります。これを大腸通過遅延型便秘症(Slow transit Constipation : STC)といいます。

排便困難型は大腸の蠕動運動があって直腸までは便が来るのですが、その便がうまく出せないというものです。その原因にも直腸や肛門の機能に問題がない場合と問題がある場合の2通りがあります。排便困難型の第1のタイプでは、便が硬いために排便困難を訴えますが、直腸や肛門の機能には異常や問題はありません。つまり、体には異常がなく便の状態に異常があるということです。これは大腸通過正常型便秘症(Normal Transit Constipation : NTC)ということになります。

排便困難型の第2のタイプでは、便が下痢状の軟便でも排便困難を訴える方がいます。これは便排出障害といい、直腸や肛門の機能や構造自体に問題や異常がある可能性があります。

大腸通過遅延には以下のような原因があります。

・特発性(原因がわからないもの)

・加齢(年を取って大腸の動きが悪くなることによるもの)

・薬剤性(抗うつ薬など薬剤の影響によるもの)

・症候性(パーキンソン病・うつ・甲状腺ホルモン低下症など病気の影響によるもの)

・精神・心理的問題

・巨大結腸症

便排出障害は以下のようなさまざまな原因によって起こります。

・腹筋・骨盤底筋群の筋力低下

・骨盤底筋協調運動障害

・直腸知覚低下

・直腸収縮力低下

・直腸瘤(rectocele)

・直腸重積(intrarectal intussusception)

・S状結腸瘤(sigmoidocele)

・小腸瘤(enterocele)

・巨大直腸症(megarectum)

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