にがたえんしょう

2型炎症

同義語
2型免疫
俗称/その他
Th2炎症
最終更新日:
2023年11月17日
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2023/11/17
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概要

2型炎症とは、寄生虫の感染やアレルゲン・毒素などの刺激を受けた際に、体がそれらを排除しようと防御するために起こる反応(炎症応答)です。寄生虫の感染を防ぐために重要なはたらきですが、アレルゲンや毒素などの刺激をきっかけに反応が起こると免疫が過剰に応答し、喘息アトピー性皮膚炎好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)などさまざまな病気を引き起こす可能性があります。

2型炎症の仕組み

2型炎症を引き起こす物質が体内に侵入すると、2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)という免疫細胞から“2型サイトカイン”という物質が産生されます。2型サイトカインにはインターロイキン(IL)-4、5、13などの種類があり、中には“免疫グロブリンE(IgE)”という抗体の産生に関わるものもあります。これらのはたらきにより粘液の分泌や平滑筋*の収縮などが促進され、体内から原因物質が排除されます。

一方で、マスト細胞**と結びついたIgE抗体がアレルゲンに反応することで、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質が放出され、アレルギー性鼻炎や喘息などの即時型アレルギーを引き起こすと考えられています。また2型サイトカインの一部は、炎症を起こす好酸球の増加に関係しているといわれています。

*平滑筋:消化管や気管などの内臓や血管の壁にあり、消化や呼吸などの機能を維持する筋肉。自分の意志で動かすことができない(不随意筋)。

**マスト細胞:肥満細胞とも呼ばれ、皮膚や気道など全身に広く存在する。表面にはIgE抗体と結合するレセプター(受容体)がある。

原因

2型炎症は、寄生虫の感染のほか、ダニやウイルス、たばこなどのアレルゲン・毒素から刺激を受け、免疫細胞から抗体が生産されることで起こります。

このほか、ワクチンの効き目を高めるためワクチンと一緒に投与される“アジュバント”という成分が刺激となり、2型炎症が生じるという見解などもあります。

症状

2型炎症は、以下をはじめとするさまざまなアレルギー性の病気の原因となります。

気道におけるアレルギー性の病気

喘息

気道に炎症が起きて、刺激に敏感になる病気です。気道が狭くなるため、発作的な咳や痰、胸がヒューヒュー、ゼーゼーと鳴るような息苦しさを伴います。喘息のほとんどは2型炎症が関与して発症するといわれています。

好酸球性副鼻腔炎

鼻の両側に鼻茸(はなたけ)を伴う難治性の慢性副鼻腔炎です。症状はステロイド薬を服用することで改善しやすいものの、手術をしても再発しやすいといわれています。主な症状は、嗅覚の低下や鼻づまり、粘り気のある鼻水、頭痛などが挙げられ、喘息や難聴も合併しやすいといわれています。

アレルギー性鼻炎

花粉やダニ、ハウスダストなどのアレルゲンが体内に侵入して免疫反応が起こることで、鼻水やくしゃみ、鼻づまりといった症状が現れる病気です。一年中症状が出るケースと、花粉症のように特定の季節のみ発症するケースがあります。

皮膚におけるアレルギー性の病気

アトピー性皮膚炎

アレルゲンや気温・湿度の変化、化粧品、汗など多様な要因で皮膚にかゆみのある湿疹が生じる病気です。かくことでさらにかゆみが出る悪循環に陥りやすいといわれています。

蕁麻疹

皮膚の一部に赤い盛り上がり(膨疹)が生じます。膨疹は1~2mm程度のものから、多数の膨疹がつながって大きくなるものまであり、かゆみを伴うことが多いといわれています。一般的には数時間以内に消えますが、1日程度症状が続く場合もあります。

食物アレルギー

IgE抗体に関与して発症するものと、そうでないものがあります。IgE抗体による場合、皮膚のかゆみや赤み、蕁麻疹(じんましん)、皮疹などがよくみられます。そのほか、喘息に似た咳や息苦しさ、目や粘膜の腫れ、くしゃみ、鼻づまり、腹痛などの症状が現れることもあります。

検査・診断

2型炎症が原因で生じるアレルギー性の病気は多岐にわたるため、検査もさまざまな種類があります。主な検査としては以下3つが挙げられます。

血液検査

アレルゲンに対するIgE抗体(特異的IgE抗体検査)や末梢血好酸球数を測定します。また、アトピー性皮膚炎の重症度を把握できる“TARC(ターク)”や“SCCA2”を調べることもできます。

プリックテスト

プリックテストは皮膚テストの1つです。アレルギー性鼻炎結膜炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーのように、IgE抗体による即時型アレルギー反応を見ることができます。針で少量のアレルゲンを皮膚に注入して、15~20分ほど経過したのちに発生した膨疹の大きさを測定します。年齢を問わず乳幼児から実施可能です。

呼気一酸化窒素濃度測定検査

気道に炎症が生じると一酸化窒素を作る酵素が増えるため、呼気の一酸化窒素濃度を測ることで気道に起きている炎症の程度を把握できます。

測定機器に息を吹き込み、呼気の一酸化窒素濃度を測定します。

治療

近年は2型炎症の起こる仕組みなどについて研究が進められており、2型炎症に関連して発症する病気の治療法の開発に役立てられています。

喘息

重症度などによって治療法は異なりますが、主に吸入ステロイド薬による薬物療法が検討されます。そのほかアレルギーの原因物質が分かっている場合はアレルゲンを回避し、喫煙者であれば禁煙がすすめられます。

最近では、重症喘息患者を対象に2型炎症の原因分子(IL-4、IL-5、IL-13、IgEなど)を標的とした生物学的製剤が選択される機会が増えてきました。

好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎は、ステロイド薬を内服することで鼻茸が小さくなるなど症状は軽快します。ステロイド薬による副作用のリスクを回避するため一般的には手術で鼻茸を除去しますが、再発することが多く何回も手術をする必要があるケースもあります。

近年、これらの治療を行ってもなかなか症状が改善しない人を対象に、抗IL-4/13受容体抗体を注射する治療も行われるようになりました。

アレルギー性鼻炎

まずは、室内のこまめな掃除などアレルゲンの除去と回避を心がけます。そのうえで、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などを使用した薬物療法や、アレルゲンを少しずつ投与することでアレルギー反応を弱める“アレルゲン免疫療法”などが検討されます。

アトピー性皮膚炎

スキンケア、薬物療法、アレルゲンの除去の3点が大切です。スキンケアでは皮膚を清潔に保つことと保湿が行われます。薬物療法は患者の年齢にもよりますが、ステロイド外用薬をはじめとする塗り薬のほか、ヤヌスキナーゼ阻害薬などの飲み薬も検討します。こうした治療で十分に効果が現れない場合は、生物学的製剤(注射薬)も考慮されることがあります。

蕁麻疹

蕁麻疹の多くは数時間程度、長くて1日ほどで消えますが、症状の度合いによっては原因となるアレルゲンの除去や抗ヒスタミン薬などの薬物療法を行います。

食物アレルギー

これまでは原因となる食品を食べない、量を減らすなどの対策が一般的でした。しかし近年では専門医による指導のもと、原因となる食物をごく少量から摂取して体に慣れさせる“経口免疫療法”を行うこともあります。

そのほか、症状が現れた場合の抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などの薬物療法が検討されます。なお中等度以上の症状(アナフィラキシーショックなど)が生じた際は、アドレナリン自己注射薬を用います。

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