くもまくかしゅっけつ

くも膜下出血

最終更新日:
2020年05月27日
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2020/05/27
更新しました。
2017/04/25
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概要

くも膜下出血とは、脳を覆う3層の膜の隙間である“くも膜下腔”に出血が生じる病気です。脳は外側から硬膜・くも膜・軟膜と呼ばれる三つの膜で重なるように包まれており、くも膜下腔はくも膜と軟膜の隙間を指します。

発症原因は多々ありますが、多くはくも膜下腔を走行する動脈の分岐部に“動脈(どうみゃく)(りゅう)”が形成され、それが破裂することによって発症します。40歳以降から発症者が増え始めるといわれています。また、動脈瘤以外にも頭部外傷や先天的な血管の形態異常などが原因で引き起こされることも少なくありません。

発症すると、意識のある場合は突然バットで殴られたような激烈な頭痛や吐き気・嘔吐を生じることが特徴です。また、出血量が多い場合は脳が圧迫されることで意識を失うことも多く、突然死の原因となり得ます。さらに、手術などの治療によって救命できた場合でも後遺症が残るリスクが高く、非常に恐ろしい病気のひとつとされています。

原因

くも膜下出血の原因には次のようなものが挙げられます。

脳動脈瘤の破裂

くも膜下出血の原因の8~9割は脳動脈瘤の破裂とされています。

脳動脈瘤とは、くも膜下腔を走行する動脈にできる風船のように膨らんだ“こぶ(瘤)”のことです。動脈瘤の壁は薄くなっており、血圧が一時的に上昇したときなどに破裂するリスクが高くなります。

そして、動脈瘤が破裂すると圧力の高い動脈の血液がくも膜下腔内に流れ込むことでくも膜下出血を発症するのです。

外傷によるもの

くも膜下出血は頭を強く打つなど“外傷”によって引き起こされることがあります。軽度な場合は自覚症状がほとんどないこともありますが、重症な場合は急性硬膜下血腫脳挫傷を合併するなど命に関わる状態になることも少なくありません。

血管奇形

脳動静脈奇形などの先天的な血管の形態異常は出血を引き起こしやすく、破裂するとくも膜下出血や脳内出血を発症することがあります。まれな病気ですが、若い世代でもくも膜下出血を引き起こす可能性があります。

症状

くも膜下出血は、突然“バットで殴られたような非常に強い頭痛”が生じることが特徴です。頭痛は吐き気や嘔吐を伴い、意識が朦朧(もうろう)とする・意識を失うといった意識障害を生じることも少なくありません。また、脳内に出血を伴う場合には手足の麻痺や言葉が出ないといった神経症状を伴います。

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、発症すると3割近くがそのまま命を落とすとされています。また、命を落とさない場合でも、くも膜下腔内の出血が脳を圧迫する状態が続くと脳にダメージが加わって重篤な後遺症を残すことも少なくありません。無事に治療を終えたとしても、続発する脳血管れん縮(くも膜下腔の出血がそこを通る脳動脈を収縮させ、脳の血流が乏しくなる現象)、水頭症などのリスクもあるため、発症する前とほぼ変わらない状態で社会復帰できるのは4人に1人とされています。

検査・診断

くも膜下出血が疑われる場合は次のような検査が行われます。

頭部CT検査

くも膜下出血の診断を行う上で必須となる検査です。CTではくも膜下出血を発症したときの特徴的な画像が見られるため、ほぼ確定診断が可能となります。

また、くも膜下出血に伴って生じる脳のむくみの有無や程度などを評価することが可能です。しかし、出血量が少ない場合や発症から数日が経過している場合は、はっきりと出血が分からない場合もあります。

また、造影剤(血管を描出しやすくなる薬剤)を投与してCT画像を撮影すると脳動脈の状態を3次元で描出できるため、脳動脈瘤の有無や位置、大きさなどを調べることも可能です。

脳脊髄液検査(腰椎穿刺)

症状からくも膜下出血が強く疑われてもCT画像などではっきりとした出血が分からないときには、腰から針を刺して脳脊髄液を採取する検査が行われることがあります。くも膜下出血を発症している場合は脳脊髄液に血液が混ざるため、性状を調べることで診断の手がかりのひとつとなります。

脳血管造影検査

足の付け根などからカテーテル(医療用の細い管)を動脈に挿入して首の動脈まで至らせ、カテーテルから造影剤を注入することで脳動脈を描出する検査です。

脳動脈瘤の位置や大きさ、血流の異常などを調べることができます。

治療

くも膜下出血の治療は発症原因によって大きく異なります。

もっとも多い脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血では、脳のむくみや血圧上昇などを改善するための薬物療法が行われますが、基本的には動脈瘤の再破裂を予防するための手術やカテーテル治療(血管内治療)が行われます。万が一、再破裂が生じると高い確率で死に至るため、治療は緊急で行われるのが一般的です。手術は動脈瘤の根元を医療用のクリップで止めて血流を遮断する“クリッピング術”が行われますが、近年では体への負担が少ないカテーテルによって医療用の細い金属を動脈瘤内に挿入して血流を遮断する“コイル塞栓術”が選択されるケースも増えています。

一方、血管奇形などが原因のくも膜下出血では、出血の原因となる異常血管を摘出する手術やガンマナイフによる放射線治療、血管内治療による塞栓術などが行われます。

また、外傷によるくも膜下出血は基本的に手術の必要はなく、脳のむくみを抑える薬などを用いながら様子を見ていきます。しかし、脳のむくみが著しい場合には頭蓋骨の一部を切除して脳圧を低下させる“減圧開頭術”が必要になることも少なくありません。

予防

くも膜下出血の原因の中で最多となる脳動脈瘤破裂によるものは、高血圧脂質異常症などの生活習慣病に罹患している場合、喫煙歴や過度な飲酒歴がある場合に発症しやすいとされています。そのため、くも膜下出血を予防するには食事や運動などの生活習慣を整えることが大切です。

また、くも膜下出血は遺伝との関係も指摘されています。近い親族にくも膜下出血を発症した人や脳動脈瘤がある人がいる場合は、脳ドックなどを受けると安心です。万が一脳動脈瘤が発見された場合は、破裂する前にクリッピング術やコイル塞栓術を行うことも少なくありません。これらの治療をせずに経過を見ていく場合、高血圧は脳動脈瘤破裂を引き起こすリスクとなるため、適切な血圧を維持していくことが大切です。

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