院長インタビュー

台東区上野の地で地域から愛され信頼される中核病院、永寿総合病院

台東区上野の地で地域から愛され信頼される中核病院、永寿総合病院
愛甲 聡 先生

永寿総合病院 病院長、外科 主任部長

愛甲 聡 先生

目次
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東京都台東区にある永寿総合病院は、上野周辺地域の拠点的な病院です。古くから同地にあって地域の方に愛されてきた同院の役割や今後について、病院長である愛甲(あいこう) (さとし)先生に伺いました。

当院は上野から一駅の稲荷町に1953年に開設しました。当時から周辺地域の多くの住民の方にかかりつけの病院として親しまれ、今でも患者さんには「永寿で生まれた」という方がたくさんいらっしゃいます。

2002年に現在地に移転し、同時に台東区から区の医療連携の中心である中核病院となるよう要請されました。地域のクリニックの先生方から紹介された患者さんを診るのはもちろんのこと、台東区の2次救急(手術や入院が必要な重症の患者さんへの救急医療)のほか、災害拠点病院としての役割も担っています。また産科、小児科、緩和ケア、認知症診療など地域に不可欠な医療機能の維持継続も託されており、この地域はもとより、都内の北東部や埼玉方面の皆さんにも頼っていただける病院でありたいと思っています。

当院は生まれる前の赤ちゃんから、複数の病気をお持ちの方が多い高齢者まで、どのような病態にもしっかり対応できるように、27の診療科を設けています。大部分の患者さんは、地域のかかりつけの先生からのご紹介で受診されますが、診療科間に垣根がないので、必要に応じてすぐに別の科にもかかっていただくなど、患者さんにとって最善・最速の方法で診療しています。
また、当院は慶應義塾大学病院の教育関連病院ですので、同大学の医局から多くの医師が派遣され診療に当たっています。診療に関して大学と密に連携が取れるので、ほとんどの疾患で大学と同等の診療レベルが維持できていると言ってもよいでしょう。

救急医療に関しては、できる限り断らないことを目指し、高齢化が進むとともに増加する脳血管疾患、心臓血管疾患、骨折、呼吸器疾患などを中心に24時間365日の対応を行っています。

脳血管疾患については、脳卒中科が脳卒中集中治療室(SCU)を設置しており、日本脳卒中学会から“一次脳卒中センター(PSC)施設”の認定を受けて血栓回収療法や血栓溶解療法など、一刻を争う病状に対する緊急治療を行なっています。
心血管疾患の治療では、心臓の筋肉に血液を送る動脈がコレステロールの沈着などで狭くなった際に、狭窄部を内側から削るドリル “ロータブレーター”をいち早く取り入れ、豊富な診療実績があります。また当院は日本心血管カテーテル治療学会の研修関連施設に認定されており、年間300件ほどの冠動脈カテーテル治療を行っています。

とくにご高齢の方は、がんの治療はなるべく自宅から近い病院で受けたいと希望されますので、当院でもそのご希望に沿った切れ目のない治療体制を整えています。患者さんの症状や病期、体力などを総合的に判断し、手術ではない内視鏡下の切除、入院しない外来での化学療法(抗がん剤治療)、低侵襲手術と術後の早期回復を促す工夫といったできるだけ身体に優しい方法を選択していきます。化学療法などで体力が落ちた際には、すぐに入院することもできます。残念ながら治療に手を尽くしても病状の改善が望めないときには、患者さんやご家族と相談の上、緩和ケア科が併診し、16床ある緩和ケア病棟に入っていただくことも可能です。このようながん治療における包括的な診療体制が評価され、当院はかつて“東京都がん地域連携モデル病院” に選定されました。現在はモデル病院の呼称はなくなり、“東京都がん診療連携協力病院”に認定されています。

さらに血液内科では、自家末梢血幹細胞移植を始めとし、ほぼすべての血液疾患の治療を行っています。都立駒込病院と連携し、患者さんへの負担が大きい造血幹細胞移植はその拠点病院である駒込病院にお願いし、移植の適応とならないご高齢の患者さんは当院が治療を担当します。移植ができない骨髄異形成症候群の患者さんに対してはアザシチジンという注射薬が標準的な治療になりますが、この治療において当院は国内で屈指の症例数を有しています。

当院では、患者さんの身体への負担を減らす“低侵襲治療”も重視しており、ほとんどの手術で、小さな傷で済む腹腔鏡手術やカテーテルを使った手術を第一選択としています。2024年2月からは手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”が稼働し、結腸がん、直腸がん胃がん前立腺がん、婦人科の疾患などで活用していく予定です。低侵襲治療をより一層グレードアップさせて皆様に提供できるでしょう。

また婦人科では、子宮筋腫卵巣嚢腫といった良性疾患の手術を腹腔鏡下で行っていますが、さらなる低侵襲化を目指して、膣から腹腔鏡や医療器具を挿入し、切除した組織も膣から取り出す経膣的腹腔鏡手術(vNOTES)も始めています。vNOTESはお腹に傷が全くできないため整容性(美容面)に大変優れているだけでなく、術後の痛みが少なく回復が早いなどのメリットもあり、当院ではとくに力を入れて推進しています。

整形外科では、骨折や靭帯損傷、変形性関節症、リウマチを始めとする関節炎の治療などを行っていますが、他の病院ではあまり見かけないバレエダンサーのための専門外来も開設しています。バレエダンサーの中には足の骨や関節に障害をお持ちの方が多く、当院では1994年からこの分野の治療実績を積み重ねてきました。バレエダンサーで当院を受診される方はぜひご自分のトウ・シューズをご持参ください。

当院は地域医療支援病院の認定を受けていますので、地域のクリニックの先生方と連携して、日頃の健康管理や慢性疾患の処方目的の通院はかかりつけ医で、専門的な検査や治療は当院で行なうといった役割分担を明確にしていかなければなりません。そこで地域連携室のスタッフが頻回にクリニックの先生方を訪問して当方の得意分野について説明し、そこにできる限り医師が同行してこの連携がよりスムースになるように図っています。この活動によって“顔の見える連携”が強化され、患者さんにとってはその疾患の専門医に最速で巡り会え、回復すればすぐに慣れ親しんだところに戻れますので良いこと尽くめと言えるでしょう。

また、認知症疾患医療センターでは、年に6回“オレンジカフェ”という認知症をテーマにした集会を開いています。認知症の患者さんやそのご家族、介護・医療の専門職の方や認知症に興味のある地域の方が誰でも気軽に参加できる集いの場です。上野の東京都美術館の協力による芸術鑑賞、脳の活性化を促す体操指導や音楽コンサート、当院の様々な診療科によるセミナーなど、バラエティーに富んだ内容で毎回たくさんの方々に参加していただいています。

今後もこうした活動を通して、地域の方々に医療についての情報を発信し、健康に関する幅広い分野で頼りにしていただける病院を目指していきます。

永寿総合病院は、開設以来70年の間、地域の皆様から信頼され親しまれることを目指してきました。それが当院の伝統と言っても良いかもしれません。われわれは、新型コロナウイルス流行初期の大規模院内クラスターの際に、地域の方々からいだいたたくさんの応援の声を心に留めて、これに応えようと思いながら働いています。当院にいらっしゃる患者さんが疎外感や冷たさを感じることがないよう、「優しい病院ですね」という一言がいただけるよう、そして「どんな病気でも永寿なら何とかしてくれる」と思っていただけるよう、今後も改善を重ねながら成長していきたいと思います。

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  • 永寿総合病院 病院長、外科 主任部長

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