院長インタビュー

NTT東日本関東病院「人と、地域と、“つながる医療”」を目指して

NTT東日本関東病院「人と、地域と、“つながる医療”」を目指して
大江 隆史 先生

NTT東日本関東病院 院長、ロコモ チャレンジ!推進協議会 委員長

大江 隆史 先生

目次
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東京都品川区 五反田駅からほど近くに位置するNTT東日本関東病院は、1952年に職域病院として診療を開始し、1986年には保険医療機関の指定を受けて一般開放されました。現在では、地域の医療機関との連携を強化しながら、地域医療支援病院として地域医療の重要な役割を担っています。

「人と、地域と、“つながる医療”」をモットーに掲げる同院の沿革や特徴について、院長を務める大江 隆史(おおえ たかし)先生にお話を伺いました。

NTT東日本関東病院
NTT東日本関東病院 外観

前身となる関東逓信病院(かんとうていしんびょういん)は、1952年に日本電信電話公社(後のNTTグループ)の職域病院として診療を開始しました。当時は職域病院であったため、患者さんは職員とそのご家族のみでしたが、1986年に保険医療機関に指定され一般病院へと転換し、広く一般の方の診療を行うようになったのです。

1999年、NTTグループの再編成・分社化に伴いNTT東日本の直営病院となり病院名をNTT東日本関東病院に改称しました。NTT東日本の強みであるデジタル分野を医療に取り入れながら歩みを進める当院は、2022年に開院70周年を迎えることとなります。

これからも、当院の役割である高度急性期医療を担いながら、積極的に新たな取り組みを行い、いかなるときも切れ目なく医療を提供し続けられるよう尽力いたします。

当院には「私たちはNTT東日本の社会的貢献の象徴として、医療の提供を通して病院を利用される全ての人々、そして病院で働く全ての人々の幸せに尽くします」という理念があります。

この理念に基づき、かかりつけ医の先生方とスムーズに連携を図りながら当院は高度急性期医療を提供し、患者さんやご家族に満足していただけるよう心がけています。

当院は「人と、地域と、“つながる医療”」を、病院を運営していくうえでのモットーに掲げています。地域医療支援病院として地域と密につながり、チーム医療を実現するためにスタッフ同士が連携し、医療を提供することで患者さんとつながる。ひいては、いかなるときも必要な医療を提供し続けられるような体制につなげたいと願っています。

まさに当院は、NTT東日本が持つ“人の想いは、つながっていく”のDNAを引き継いでいると言えるでしょう。

当院の概要(2021年5月時点)を、以下に示します。

病床数:594床(一般544床、精神50床)
外来患者数: 1,483名/日*
平均在院日数:9.3日*(一般病棟)

*2020年4月~2021年3月のデータ

当院は、東京都区南部医療圏(品川区・大田区)の高度急性期医療を担う病院です。品川区の人口が約40.5万人、大田区の人口が約73.2万人(2021年3月時点)という人口の多い地域において、当院は緊急性の高い医療を提供できる体制を整えなければなりません。

当院が病院を構える品川区は2040年まで医療需要が増加すると予測されているため、医療需要に応える形で新たな取り組みを積極的に行う必要があるでしょう。その1つとして、2020年4月に国際診療科を新設し、言葉の壁を感じることなく医療が受けられる体制を整備しました。さらには、2021年4月に形成外科を新設し、整容的な治療を開始しました。

これからも当院は高度急性期病院として必要とされる医療を提供できるよう、診療内容の充実をはじめ、設備やスタッフの拡充にも努めてまいります。

各科において専門的な治療を行うのはもちろんのこと、複数の診療科が連携して診断や治療にあたることも重要です。特に救急では複数の診療科の医師による迅速で適切な診断が求められます。

当院は、30以上の診療科を備えた総合病院(2021年5月時点)であるという強みを生かして、診療科同士の連携強化に力を入れています。適切な診断を素早く行うために、診療科の垣根を取り払い、患者さんを総合的に診断・治療することができる体制整備を進めています。

NTT東日本関東病院 中庭
NTT東日本関東病院 中庭

患者さんを総合的に診療するためには、多職種によるチーム医療が欠かせません。当院ではチーム医療を推進しており、その象徴ともいえるのがリハビリテーション科です。

当院のリハビリテーション科は固有の入院ベッドを保有せず、他科と連携をとりながら、脳・心臓・運動器・がんといった、さまざまな病気に伴う幅広い障害に対するリハビリテーション医療を行っています。

ハイブリッド手術室
ハイブリッド手術室 

当院は、患者さんのQOL(生活の質)維持や術後の早期回復、入院期間の短縮などを目指し低侵襲(ていしんしゅう)(身体的な負担が少ない)な診療に取り組んでいます。たとえば、早期消化器がんに対するESD*(内視鏡的粘膜下層剥離術)(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)や、肝臓がんに対する経皮的ラジオ波焼灼術**転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)をはじめとした適応疾患に対するガンマナイフ治療***肺がん前立腺がん大腸がん直腸がん)、良性の子宮疾患に対するロボット支援手術(ダヴィンチ)などを積極的に行っています。

*ESD:内視鏡下で、電気メスを使用して病変部を剥離する治療法。
**経皮的ラジオ波焼灼術:挿入した電極針にラジオ波と呼ばれる高周波の電流を流し、腫瘍を凝固壊死させる治療法。
***ガンマナイフ治療:ガンマ線を病巣部に集中照射する放射線治療。開頭することなく治療可能。

血液内科における造血器悪性腫瘍(血液・骨髄・リンパ節のがん)の治療は当院の強みの1つです。造血器悪性腫瘍は全身に広がりやすいため、適切な治療を行わなければなりません。血液内科では、日本血液学会認定の血液指導医ならび血液専門医が在籍し、専門知識を有する医師が診療を行う体制を整えています。

皮膚科の炎症性疾患に対する治療も注目されている分野といえるでしょう。特に乾癬(かんせん)*はそのメカニズムが解明されたため、治療薬の開発がさらに進んでいくことが期待されています。

*乾癬:赤い発疹ができ、皮膚が盛り上がり、白い鱗屑(りんせつ)と呼ばれる皮膚の粉が剥がれ落ちる病気。頭や膝、肘、お尻などにできやすい。

2019年4月に結核や渡航者感染症など専門的な知識を必要とする感染症を扱う診療科として感染症内科を新設しました。翌2020年、新型コロナウイルス感染症が日本においても感染拡大するなかで、日本感染症学会認定の感染症専門医を中心に感染症対策に取り組みました。エビデンスに基づく感染症対策を実践できたことで、新型コロナウイルス感染症への対応と並行して一般診療も担うことができたと感じています。

地域の医療機関と連携を図りながら、当院は高度急性期医療を担う病院として、緊急性の高い救急患者さんの受け入れなどを積極的に行う所存です。

NTT東日本関東病院 内観
NTT東日本関東病院 内観

当院は、医療の国際化を目的として、2020年4月に国際診療科を立ち上げました。国際診療科では、訪日外国人の方に対する英語での診療や、医療通訳者による英語・中国語の通訳によって言語面でのサポートを行っています。加えて、スペイン語・ポルトガル語をはじめとする計6言語については医療電話での通訳対応体制を整えています。

訪日外国人の方だけではなく、日本にお住まいの外国の方に対しても対応することが重要です。そこで、国際診療科の医師に英語の診療マニュアルの作成を依頼しています。診療科ごとだけでなく、症状ごとに診療マニュアルの作成にも取り組んでいます。

もちろん、各診療科において英語で診療できる医師の採用を推し進めることも同時並行で取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症において、訪日外国人の方は減少していますが、日本にお住まいの外国の方で日本語を話せない、または不安がある方に対してのきめ細やかなサポートで医療の国際化を推し進めます。

当院は、職域病院からはじまり、その後一般病院に転換し、現在に至るまで医療を提供してきました。職域病院の頃は、職場でのけがやNTT関連で働いている方の病気を診ているわけですから、患者さんが少ないほうがよいとされていたのだろうと思います。しかし、一般病院として歩み始めたのですから、持続可能な経営でいかなるときも高度急性期医療を提供できるような病院でなければならない。それを強く感じています。

そのために、地域の医療機関が連携しながら、それぞれの強みを生かして地域の皆さんの医療を支えることが肝心です。当院は、高度急性期医療を担う病院として、緊急性の高い患者さんや希少疾患を抱える患者さんなどの診療を主に行い、症状が落ち着いた患者さんに関しては地域の医療機関で診ていただくという形で診療体制を構築したいと考えています。

一方で、地域の医療機関の先生方には症状が悪化したときや気になる症状が見られた際には当院を速やかに紹介いただきたいと思っています。このような連携体制の構築によって、当院はいかなるときも地域医療を支える高度急性期医療を切れ目なく提供できるよう努めてまいります。

当院は、NTT東日本の運営する病院であるという強みを生かし、医療分野におけるデジタル技術を用いた変革、いわゆるデジタルトランスフォーメーションをしなければならないと考えています。たとえば、紹介患者さんが来院される際、現状はかかりつけの病院で撮影したCTやMRIなどの画像をCD-Rで持参いただく場合が多いです。しかし、CD-RだとPCに取り込んで画像を診るとなるとかなりデータが重いため時間や手間がかかってしまいます。

この課題を解決するために、個人情報を保護しながら連携している医療機関と患者さんの画像データを共有するプラットフォームがあれば、CD-Rにデータを移行する、それを読み込むという煩雑な作業を省くことができるでしょう。将来的にこのようなプラットフォームが確立されれば、さらに医療機関同士の連携がスムーズになると期待しています。

また、デジタル技術を院内の安全管理にも応用し、患者さんやご家族の安心の一助となる取り組みも行ってまいります。

大江 隆史先生

当院は、安全管理・感染対策など日頃から医療安全に取り組むとともに、各科が専門的な医療を提供できるような体制を構築し、複数の分野で成果をあげています。

当院で共に働く若手医師の皆さんは、総合的な視野を持ちつつ、専門的な技術を磨くことができる環境で、さらなる成長につなげていってください。

当院は、高度急性期医療を担う病院です。そのため、症状が落ち着いた患者さんに関しては、地域の医療機関つまり“かかりつけ医”へとお戻しすることになります。

症状が悪化したときや、気になる症状がある場合にはかかりつけ医の先生から当院にご紹介いただけるような連携を取っていますので、その点はご安心ください。地域の皆さんにいかなるときも高度急性期医療を提供し続けられることにつながりますので、このような診療体制をご理解いただき、ご協力をよろしくお願いいたします。

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  • NTT東日本関東病院 院長、ロコモ チャレンジ!推進協議会 委員長

    大江 隆史 先生

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