埼玉県立循環器・呼吸器病センターは、埼玉県北部の循環器・呼吸器・脳神経の疾患治療における「最後の砦」として、地域医療の最前線を担っています。
専門性の高い医師が集結し、「熱意と誠意を持って患者に接する」をモットーに高度で先端的な医療を提供する同センターの強みや取り組み、そして今後のビジョンについて、病院長の池谷 朋彦先生に伺いました。
循環器と呼吸器を柱とする当センターは、長年にわたり専門性の高い医療を地域に提供してきました。2019年には脳神経センターを開設し、2021年(令和3年)には独立行政法人化を実現。さらに、2023年(令和5年)には新たなリハビリ室を整備し、心臓リハビリを中心とした回復期医療の体制強化にも取り組んでいます。
こうした診療体制を支えるのが、経験豊富な医師たちの存在です。循環器内科には日本循環器学会認定の循環器専門医が13名おり、腎臓内科や透析診療の分野も幅広く展開しています。脳神経外科では6名の医師が治療にあたり、カテーテルによる血管内治療から開頭手術に至るまで、多様な治療に対応できる体制が整っています。
熊谷、深谷、秩父、東松山、小川など、埼玉県北部の広い範囲から患者を受け入れている当センターは、救急医療にも積極的に取り組んできました。特に脳血管障害については、過去5年間における救急車の応需率が90%以上と非常に高く、全国平均(80%弱)を大きく上回るこの実績が、地域から寄せられる厚い信頼を示していると考えています。
循環器内科では、2部屋あるハイブリッド手術室にて高画質な3D画像を診ながらの精密な治療を行っており、TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)やMitraClip(僧帽弁クリップ術)といった低侵襲治療にも対応しています。
心臓外科には5人の医師が在籍し、大動脈破裂や大動脈解離といった秒単位での対応が求められる疾患にも、常駐医師の体制で即応しています。また、当センターには血管外科があることも大きな特長といえるでしょう。ここには3人の医師が在籍し、あらゆる大動脈瘤に対してステントグラフトを用いた治療が可能です。
当センターでは、循環器内科・心臓外科・血管外科が互いに密に連携し、診療科の垣根を越えたチーム医療を実現しています。それぞれの専門性を活かしながら一体となって治療にあたることで、循環器疾患に対して常に質の高い医療を提供できる体制が整っていると自負しています。
呼吸器内科では、肺がんのほか、間質性肺炎、喘息、COPDなど、多岐にわたる呼吸器疾患の診療を行っています。中でも近年は肺がんの治療に力を注いでおり、外科では胸腔鏡を用いた低侵襲手術を取り入れ、身体的な負担を軽減しつつ、精度の高い処置を可能にしています。
さらに、IMRT(強度変調放射線治療)対応の放射線治療装置を導入し、病変部に集中して照射できる環境を整えました。これにより、がんの3大療法である手術、化学療法、放射線療法の集学的治療による肺がん治療が可能となっています。
2021年に新設した脳神経センターには6名の医師がおり、頸動脈狭窄症への血管内ステント留置術、脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術までなどの治療を行っています。またハイブリッド手術室を活用することで、脳血管奇形や高難度動脈瘤といった難しい疾患の治療にも対応しています。
さらに、当センターは日本脳卒中学会から一次脳卒中センター(PSC)の認定を受けており、一刻を争う脳卒中に対するt-PA静注療法も行っており、既に埼玉県北部の脳血管疾患の治療で大きな役割を担っていると自負しています。
今後の展望として、総合内科の人員拡充を通じて、高齢者や複数の疾患を抱える救急患者も一時的にすべて受け入れられるような体制を目指しています。実際、病棟の一部を活用してそうした対応ができないか考えているところです。
また、働き方改革も推進しており、特定看護師や医師事務作業補助者の育成・採用を通じて、医師の業務負担を軽減し、持続可能な医療体制の構築にも取り組んでいます。
医療DXの推進は、働き方改革の一環として、また患者さんの利便性のためにも力を入れています。更なるIoTの推進をするとともに、RPAの活用などを行っていますが、将来的には、オンライン予約・遠隔診療など、患者の利便性を高めるための仕組みを整えるとともに、医療機関同士でリアルタイムにデータを共有し、事前診断の効率化が図られればいいと思っています。
私たちが常に大切にしているのは、「熱意と誠意を持って患者に接する」という姿勢です。循環器、呼吸器、脳神経の疾患治療で質の高い医療を提供しつつも、どんな方でも安心して治療に臨める病院を目指しています。さらに、今後はより多くの救急患者さんを受け入れられるよう、体制の整備を進めてまいります。
また、当センターは遠方から来られる患者さんも多いため、1回の診療でなるべく多くの検査や処置を完結できるよう心がけており、通院回数を減らす工夫を進めています。これらの取り組みを通じて、地域の皆さんが日々安心して暮らせるお手伝いをしていきます。今後も当センターを頼りにしていただければ幸いです。
なお、当センターは紹介制となっております。お越しの際はかかりつけ医の先生を通じて紹介状をご用意いただくよう、お願いいたします。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。