香川県高松市の中部に位置する香川県済生会病院は、明治天皇が1911年(明治44年)に発令した済生勅語を基に誕生した済生会病院のひとつです。 同年にはすでに医療機関として香川県内で活動し、長年にわたって地域のみなさまの健康に寄り添ってきました。伝統と歴史ある同院について、院長の若林 久男先生にお話を伺いました。
当院は、社会福祉法人恩賜財団 済生会を母体とする医療機関です。済生会は1911年に明治天皇の済生勅語を基に誕生しました。開設以来、「恵まれない人たちに施薬救済の済生の道を広める」ことをモットーとして医療提供を行なっています。
2004年に高松市多上町へ移転し、2024年現在では23の診療科と198の病床数(一般病棟148床・療養病棟50床・地域包括ケア病棟50床)を持つ医療機関となりました。
日本では現在、国の方針として地域医療構想が進められています。高度急性期医療を大規模病院に集中し、それ以外の救急医療は小・中規模の病院が担い、ちょっとした体の不調や違和感は地域のクリニックが相談屋を受けるといった、医療機関の棲み分けです。
当院に求められているのは、2次救急病院として急性期の医療を担うことはもちろん、何かあった際にすぐ受診できる地域密着型のかかりつけ病院としての機能です。そのため、より質の高い医療サービスを提供すべく努力を重ね、今後も地域住民の方々の健康をサポートしていきたいと考えています。
整形外科は、骨・関節・筋・神経などの運動器の障害や外傷に対して診断と治療を行う分野です。治療する場所によって専門の医師が異なるのも特徴です。
当院の整形外科は手の外科・肩関節外科およびスポーツ障害に精通した専門医が診療を行い、上肢に対する手術が80%を占めています。
手術件数は年間約900件。なかでも野球肘に対する手術治療や肩関節に対する関節鏡手術が多く行われ、県内の患者さんのみならず、県外や、遠くは九州からも来院いただいています。
また、2022年に副院長に就任された真柴 賛先生は膝関節を専門としていて、人工関節置換術も数多く手がけています。膝関節の一部をパーツで補う単顆置換術(UKA)や、膝関節そのものを人工のものに置き換える全置換術(TKA)など、患者さんの症状やご希望に合わせて、ベストな治療のご提案ができるよう心がけております。
当院のある高松医療圏は、小児科の診療所が少ない地域でもあります。そのため当院の小児科では、何かあった時にすぐに相談できるかかりつけ病院として、地域貢献をしていきたいと考えています。
発熱、風邪、腸炎などの一般的な小児疾患全般の診察から、予防接種、乳幼児健診まで幅広く対応。夜尿症・頻尿・検尿異常、食物アレルギー・アトピー性皮膚炎といった、比較的悩みの多い疾患についての専門外来にも力を入れています。
インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、溶連菌、ノロウイルス、ロタウイルスの迅速検査や、マイコプラズマ感染症、百日咳のDNA検査などが可能です。超音波検査、CT、MRI、心電図などの検査機器も備えているので、さまざまな疾患を迅速かつ精密に調べることができます。
眼科では、白内障、緑内障、糖尿病網膜症、斜視、弱視眼瞼疾患などの疾患の診断、治療を行っております。手術の件数も多く、白内障手術、外眼部手術、斜視手術が主になっています。
なかでも特に件数の多い白内障手術は、基本的に低侵襲の手術を心がけています。そのため両眼手術でも、日帰りや1泊での手術が可能です。手術後の通院が負担という患者さんには、3泊4日での入院手術をおすすめしています。また、全身麻酔が必要な方の手術、小児の全身麻酔での斜視手術、成人の斜視手術などにも対応しています。
ひとりひとりの患者さんに合わせたオーダーメイドの治療ができるよう心がけていますので、違和感があったらお気軽に受診してください。
済生丸は、瀬戸内海を巡回する国内で唯一の診療船です。瀬戸内海には700あまりの島が存在していますが、そのうち有人島は84島で、医療機関のある島はわずか39島しかありません。高松港を母港とした済生丸は、乗船した医療スタッフと共に海をわたり、瀬戸内の島々へ医療提供を行っています。
済生丸は、済生会が創立50周年を迎えた1961年(昭和36年)に事業計画がスタートし、翌1962年には運航を開始しました。船内には多くの医療設備が備わっており、レントゲン撮影・マンモグラフィ検査・心電図検査・腹部超音波検査などが可能です。乗船するスタッフが年間で診察・診療をする患者さんは約9,000名にのぼります。
済生丸の活動は、島嶼部への医療サービスの提供だけにとどまりません。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の際には、いち早く被災地に駆けつけ、災害援助船としての役割を努めました。その経験を経て、2013年に就航した新型船 “済生丸100”は海水から1日3トンの清水を造れる造水装置も備えています。
今後2024年頭に起こった能登半島地震によって、政府は医療船の建造を後押しする方針を打ち出しました。それに伴い、当院は予想される震災への対策と支援活動を視野にいれ、万が一の場合に備えています。
地元の皆さまとの交流を図り、病院をさらに身近に感じてもらうため、2017年から毎年秋に”済生会フェア”を開催しています。2024年は「みんなで考えよう 備えよう ~災害からいのちを守ろう~」をテーマに、10月13日に開催予定です。
当日は日頃の健康チェックを行う無料健康診断や、子どもたちを対象にしたお仕事体験など、大人から子どもまで参加できるラインナップを取りそろえましたています。テーマに合わせた特別講演も予定しているので、ぜひお気軽にご来場ください。
済生会では全国の済生会病院が持ち回りで、生活困窮者問題シンポジウムを開催しております。当院も2024年5月、ヤングケアラー問題を考える 新たなヤングケアラーを生まないための予防策」をテーマに開催しました。
当日は4人の登壇者が、ヤングケアラーの支援について課題を提示し、参加者のみなさまと一緒に問題解決に向けての議論を行いました。
医療とは直接関係のない分野ではありますが、社会的に大きな注目を集めているヤングケアラー問題の解決に向けて、当院では今後も広く啓蒙を図っていきたいと考えています。
当院は無料低額診を行う病院です。無料低額診療とは、生活保護を受けている方や生計困難者など、医療費の自己負担が難しい方を対象とした診療制度であり、無料あるいは低額料金で診療を受けることができる社会福祉事業のひとつです。
無料低額診療の対象となるものは当院における医療費と食事代です。詳しくは一階の総合受付でご相談ください。専門の医療ソーシャルワーカーがお話を伺い、患者さんの所得から減免額を一緒に考えていきます。また、医療ソーシャルワーカーは医療費以外にも患者さんの悩みをサポートしています。以下のような相談事がありましたら、お気軽にいらしてください。
済生会グループのなかでは規模が小さい当院ですが、「小さな病院で高い医療を提供する」ことを目標としています。目標実現のために俊邦力を入れてきたのが、優秀な人材の育成です。自分の働く病院に魅力を感じ自負を持つことが、日々働くモチベーションや自信につながると考え、スタッフに当院の魅力を伝えるよう努力してきました。
当院のような地域に密着した市中病院では、あらゆる症状の患者さんが来院されます。そのため、汎用性のある幅広い知識や経験が身につけられる環境でもあります。地方では医療スタッフの確保が問題となっていますが、ぜひ当院で研鑽を積んで、地域の方々に愛され頼られる存在になってほしいと願っています。
昨今では誰もがスマートフォンを持つようになりました。当院でもWi-Fiを導入していますが、今の若い人たちが年齢を重ね、高齢者と呼ばれるようになったとき、彼らのITリテラシーは今の高齢者よりも高いはずです。インターネットで情報収集をすることが当たり前の世代に対して、病院はどのようなサービスを提供していくべきでしょうか。
そういった時代の流れやニーズを汲み取り、「香川県済生会病院でよかった」といわれるような満足度の高い病院づくりが今後の目標です。また、医療の提供だけではなく、街づくり・人づくりに協力できるような場を提供していくことも当院が目指す先のひとつです。
今後も地域のみなさまと共に歩む病院として、満足のいく医療の提供と、地域の拠り所になるような環境づくりに、最大限の努力をしてまいります。
香川県済生会病院 院長
香川県済生会病院 院長
日本消化器外科学会 会員日本外科学会 会員日本肝胆膵外科学会 会員日本医師会 認定産業医
1983年卒業し愛媛大学医学部附属病院で1年間内科の研修を行った後、香川医科大学第1外科(現 香川大学医学部消化器外科)に入局。消化器外科の研鑽を積み、ECFMGに合格し、1989年にClinical Fellow in Transplantation Surgeryとして米国Medical College of Virginia で、移植外科の臨床研修をした。その後香川大学にもどり消化器外科、特に肝胆膵分野での臨床に取り組み、そして関連病院での研修を行った後、現在の香川県済生会病院に副院長として赴任し、2014年から病院長となった。
若林 久男 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。