院長インタビュー

地域医療を支える松江赤十字病院の取り組み

地域医療を支える松江赤十字病院の取り組み
大居 慎治 先生

松江赤十字病院 院長

大居 慎治 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年09月12日です。

松江赤十字病院は島根県松江市で地域の急性期医療、救急医療の提供や災害医療に備えた機能を有しています。日々の診療だけでなく赤十字社の医療機関として、救急医療や災害医療に尽力することをひとつの使命と考えています。同院の取り組みや看護師育成について、日本赤十字社 松江赤十字病院 院長 大居慎治先生にお話を伺いました。

松江赤十字病院の外観(松江赤十字病院よりご提供)

松江赤十字病院は1936年に日本赤十字社島根支部病院として発足しました。前身は1876年設立の島根県立松江病院で、赤十字に移管し開院した病院です。

前身が公立病院だったこともあり、地域の中核病院的な役割を担い、地域医療の提供をすることを使命のひとつだと考えています。地域医療支援病院や島根県二次医療圏災害拠点病院にも指定されており、地域だけでなく島根県の災害拠点病院のひとつとして、貢献しています。

また、臨床研修指定病院でもあるため、若手医師の研修を受け入れています。研修医のほかにも、医学生や看護学生、さまざまな職種の実習を当院で受け入れ後進の医療従事者の育成にも力を入れています。

屋上ヘリポート(松江赤十字病院よりご提供)

地域の三次救急の患者さんを救命救急センターが中心になり受け入れています。三次救急とは、重度の外傷や広範囲にわたる熱傷、脳卒中心筋梗塞など複数の診療科の治療の必要や命の危機がある救急患者さんのことを指します。救急車での救急搬送にくわえ、当院の医師が同乗している防災ヘリコプターでの搬送をしています。また、島根県の離島である隠岐の島の救急患者さんを搬送する場合には、この防災ヘリコプターを使用して、迅速な搬送をします。

救命救急センターのスタッフだけでなく、各診療科の医師が協力し、病院全体で地域の救急医療を支えています。

当院では救急医療をはじめ、さまざまな診療科を設置して地域医療の提供をしています。なかでも心血管系疾患の診療や、がん診療が主なもので、その他総合病院として幅広い領域の診療を行っています。

血液内科では、急性白血病悪性リンパ腫多発性骨髄腫などの血液に発生するがんの診療を行っています。造血幹細胞移植にも力を入れています。

当院のがん診療では各科のがん治療にくわえて、看護相談や緩和ケア相談の窓口、がん相談支援センターなどを設置し、がん患者さんのメンタル面でのサポートもしています。がん相談支援センターでは、がんについてよりわかりやすく説明しており、就労に関する相談、ご家族ががんになった場合の接し方などさまざまな相談を受けています。

診療だけでなく、患者さんやご家族をサポートする体制も整えています。

循環器内科では、狭心症心筋梗塞不整脈心臓弁膜症などの循環器に発生する病気の診療を行っています。当科では1983年より心臓カテーテル検査を開始し、1986年に心臓カテーテル治療も始めました。

心臓カテーテル検査とは、カテーテルという細長い管を冠動脈等の入り口まで通して冠動脈等に造影剤を注入しX線撮影をする検査です。この検査では冠動脈に詰まっている部分や細くなっている部分がないかを診断し、そのまま再開通させる治療を行います。

虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)の治療は当科で提供しているカテーテル治療の他、心臓血管外科が提供しているバイパス治療があります。患者さんの病状や病気の進行度によってどちらが適切な治療になるのかは判断が難しいことが多くあります。そのため、循環器内科、心臓血管外科等、心血管の病気の治療を専門的に行っている医師で形成されるハートチームがあります。

ハートチームでの診療をスムーズに行うためにハイブリッド手術室を設置し、稼働を開始しました。ハイブリッド手術室とは、従来の手術室の機能のほかに心臓・脳血管X線撮影装置を組み合わせた手術室のことです。ハイブリッド手術室は、手術台にX線撮影装置が併設されているため、患者さんを検査室に移動させる手間もなく、カテーテル治療・手術に集中することができます。

松江赤十字病院のハイブリッド手術室(松江赤十字病院よりご提供)

赤十字病院は人材育成の中でも看護師育成に力を入れています。日々の看護だけでなく災害発生時には被災地や地域へ救護に向かうことができ、赤十字の理念のもと行動できる看護師の育成は赤十字病院として重要な取り組みです。

新人看護師からキャリアを積んできた看護師までそれぞれに合った研修体制を組んでいます。赤十字施設では看護師の育成にキャリア開発ラダーを導入しており、次に自分が目指すステップではどのような能力が必要なのか、どのような研修を実施するのかなどが明確にされています。

そのため、自分のステップアップに必要な目標を立てやすく、看護師一同が明確な目標に向かって研修に臨めます。

赤十字は救急医療や災害医療に力を入れており、当院も例外ではありません。当院は島根県二次医療圏災害拠点病院に指定されているため、地域で発生した災害に対応しており、また、赤十字病院のひとつとして全国の被災地に医師や看護師等を派遣しています。

2016年4月には熊本地震の被災地にDMAT(災害派遣医療チーム)にくわえ、救護班や医師支援要員、看護師支援要員を派遣しています。災害発生に備え、日々院内や赤十字で実施される訓練や研修に参加しているため、被災地での救護でも日々の学びを実践することができます。

DMATの派遣だけでなく、さまざまな支援を行い災害拠点病院・赤十字病院としての使命を果たしていきたいと思います。

地域のさまざまな医療の拠点病院としての機能を保ちながら、それらの機能をさらに発展させていきたいと思います。また、地域の医療機関のひとつとして救急医療や各診療科での治療の充実をしていきます。

診療や救急医療の充実のためには地域の医療機関との連携が不可欠です。たとえば、救急搬送された患者さんが急性期の治療が終わり、お住いの近くの医療機関での在宅復帰に向けたリハビリテーションの実施をすることになった場合には地域の医療機関へご紹介いたします。また、地域の医療機関では対応が難しい病気の患者さんを当院で治療するための紹介などもしてもらい、地域の医療機関と連携を深めています。

地域の医療機関との連携を密接にするために、院外で勉強会を開催して情報の共有や顔の見える関係作りに尽力し、地域の皆さまがスムーズに次の医療を受けることができるような体制作りを整えていきます。

地域の皆さまには「日赤病院」として親しまれていると思います。平時だけでなく災害時にも信頼してもらえる病院となれるように、さまざまな研修や訓練を実施しています。赤十字病院として地域の診療や災害医療を支えていけるように尽力していきます。

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