葉山ハートセンターは、神奈川県三浦郡葉山町に位置する病院です。心臓病を専門とする病院として開設以来、狭心症や心不全、不整脈など心臓の病気の診断・治療において着実な実績を積み重ねています。また、近年では地域のニーズに応える形で、内科や救急科、婦人科などさまざまな診療科を増やし地域医療を支えています。同院の特徴や取り組みについて、院長の飯田 浩司先生にお話を伺いました。
当院は、逗子市と三浦郡葉山町を合わせた逗葉地区と呼ばれる地域にあります。2つの市町を合わせて9万人程度の人口があり、いずれも高齢化率(65歳以上の高齢者の割合)は30%以上と高齢化の進む地域でもあります。
山と海に取り囲まれており、やや隔離された雰囲気のある場所ですが、そのぶん地域の結びつきが強く、すれ違う人と自然に挨拶を交わせるような穏やかな空気が流れています。当院に訪れる患者さんも近所の方が多く、人間的なつながりを大切にできる環境が魅力です。
当院は、2000年に日本初となる“ハートセンター”として開院しました。ハートセンターとは心臓病を専門とした病院であり、当院はフランスのモナコにある有名なハートセンターをイメージして海沿いに建設されました。開院当初は、心臓専門の病院として全国から患者さんが集まる病院でした。現在も変わらず心臓病の診断や治療には力を入れていますが、地域のニーズもあり、近年は心臓以外のさまざまな病気へ対応できるよう体制を変更しています。
前述のとおり当院は心臓病の診断や治療を専門的に行える病院として、開院よりさまざまな心臓病の患者さんを診療してきました。特に、成人心臓外科手術、不整脈治療の分野では多くの実績を重ねています。
心臓血管外科では、循環器内科での対応が難しい、手術が必要となる心臓の病気に対して外科治療を行っています。小さな創(きず)で行う小切開手術も行っており、狭心症や心筋梗塞、大動脈解離、心臓弁膜症などさまざまな病気に対応が可能です。また2024年の秋頃には、X線透視装置を手術室内に設置したハイブリット手術室が完成予定であり、さらに手術の幅が広がることが期待されます。
循環器内科では、循環器疾患(心臓血管疾患)に対する内科的治療を行っており、主に虚血性心疾患(心筋梗塞など)の診断や、カテーテルによる治療が中心となります。急性心筋梗塞など緊急の治療を要する病気もあるため、当院では受診当日に血液検査や心電図、CTといった検査を行い、早期に適切な診断・治療へつなげられるよう努めています。
不整脈センターは2006年に開設され、心房細動の治療を中心に全ての不整脈に対応しています。心房細動は現在、カテーテルアブレーションによる治療が中心となっていますが、当院では主に高周波Hot balloonカテーテルによるアブレーション治療を行っています。この治療法は、当院の副院長(兼 不整脈センター長)である佐竹 修太郎先生が中心となり、15年以上の歳月をかけて開発したもので、世界初の治療法となっています。この治療法は、従来の方法よりも長期成績がよく、合併症が起こる割合も低いという特徴があります。
一般的な病気に対して外来、入院での診察、治療を行っています。
4人の専門医(日本外科学会認定、日本消化器外科学会認定など)により腹部の疾患、緊急手術に対応しています。
24時間急な疾患や外傷の患者さんを受け入れています。
常勤の専門医(日本内科学会認定)により腎疾患の患者さんに対して外来診察、透析療法を行っています。
脳神経外科では2人の専門医(脳神経外科学会認定)により、脳卒中(脳血管障害)や、頭部外傷、脳梗塞急性期の血栓回収術、機能的神経疾患(顔面麻痺など)といった病気を中心に診療を行っています。“安全かつ丁寧で正確な手術”をモットーとして、患者さん一人ひとりに合わせた治療を行えるよう心がけています。
放射線科では、X線検査(レントゲン検査)や、CT・MRI検査、血管造影検査などによる画像診断を行っています。適切な画像検査と診断のための読影(病態解析)は、病気を診断・治療するうえで非常に重要です。当院では、放射線科診断専門医(日本医学放射線学会認定)による診断、さらに各科の専門医による診断という、より正確な診断が可能な体制となっているので、患者さんにとっても心強いのではないかと思います。
当院には上記の診療科のほかにも婦人科、整形外科、血液浄化センター、精神科・心療内科、人間ドックなどさまざまな診療科を擁しています。
高齢化の進む現在、急性期の治療後の患者さんの受け入れは地域においても大きな課題となっています。治療を終えて家に帰っても介護をする人がいない(あるいは老老介護になる)など、自宅で看ることが難しいケースは少なくないため、受け入れ先の確保が急務となります。そうした背景から現在、地域医療構想の1つとして地域の慢性期病床を増やそうという計画があり、当院でもその計画に手を上げています。今後は、現在ある病床を利用して慢性期病棟を開設し、急性期の治療後も一気貫通でサポートすることができればと考えています。
当院では現在、肥満の方に対し胃を小さくする手術(腹腔鏡下胃縮小術)を行っています。スリーブ手術や減量手術と呼ばれるもので、当院では保健適用での手術が可能です。手術は内視鏡下で行っており、日本在留の外国人の患者さんなど、さまざまな患者さんが来院されています。また、減量後にたるんだ腹部の皮膚を切除、形成する手術も行います。
漏斗胸・鳩胸などの胸部変形疾患に対しては胸骨の裏に金属の棒を入れるNuss法と呼ばれる治療法があるのですが、この方法は思春期以降の手術が推奨され、合併症のリスクも高いという報告があります。私たちの“胸肋挙上術変法”は、10歳以下の小児でも手術が可能であり、さらに合併症の頻度が少ない手術です。漏斗胸・鳩胸でお悩みの方はぜひご相談ください。
ハートセンターという名称や、かつてのイメージからまだ“心臓専門の病院”と思われることもあるのですが、地域に根差した病院として診療科を増やし、幅広く患者さんを受け入れています。地域の病院や、同じ徳洲会グループの湘南鎌倉総合病院などとの連携体制も十分にありますので、どのような病気でも気兼ねなく、来院していただければと思います。
*診療科や医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年4月時点のものです。