ふらつき:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
植田救急クリニック
加藤 之紀 先生【監修】
疲れや睡眠不足などでふらつきを感じた事のある人は多いと思いますが、原因によっては注意が必要な場合もあります。
こういった場合、どのような原因が考えられるでしょうか。
ふらつきは病気が関係して起こる場合もあります。ふらつきが起こる病気には以下のようなものがあります。
ふらつきがよく起こる病気は、貧血、起立性低血圧、自律神経失調症、更年期障害、熱中症などです。
貧血とは、血液内の赤血球の数やヘモグロビン濃度が基準値を下回る状態のことをいいます。
貧血になるとふらつくことが多くなるほか、めまい、顔色が悪くなる、息切れしやすくなる、疲れやすくなる、手足が冷たくなるなどの症状がよくみられます。ただし、このような自覚症状が現れないことも少なくありません。
原因としては、女性であれば月経にともなう出血、また女性に限らず胃潰瘍などによる胃や腸からの出血が挙げられます。便が赤かったり黒かったりする場合や月経後にふらつきが強い場合などには注意が必要です。
起立性低血圧とは、急に立ち上がった時や長時間立ち続けている時に、ふらつきやめまい、気が遠くなるといった症状を起こす状態のことです。
症状をみると貧血に似ていますが、赤血球やヘモグロビンの減少が原因である貧血に対し、起立性低血圧は血圧の低下によるもので、全く別の原因です。
自律神経失調症とは、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れることで、体と心にさまざまな症状が現れる状態の総称です。
現れる症状には個人差がありますが、身体症状として体のだるさや微熱・のぼせ、動悸、頭痛、めまい、ふらつき、不眠・過眠、手足のしびれ、精神症状として不安やイライラ、情緒不安定、気力・集中力の低下などがよくみられます。
閉経前後の5年間を更年期といい、この期間に病気とは関係なく日常生活に支障をきたすさまざまな症状が起きるものを更年期障害といいます。
更年期障害の症状は多種多様で200〜300あるといわれていますが、ほてりやのぼせ、動悸、手足の冷え、めまい、ふらつき、疲れやすい、うつ傾向、不眠、不安、情緒不安定などが典型的な症状に挙げられます。
熱中症とは、温度の高い環境で過ごすことよって起こる体の異常です。
症状としては主に、軽度で顔のほてりやめまい、ふらつき、大量の発汗、筋肉痛など、中等度で頭痛や嘔吐、体のだるさ、力が入らないなど、重度で意識障害やけいれん発作などがみられます。
涼しい場所で休む、水分補給をしっかり行うなどし、よくならない場合や水分を取ることが難しいような、中等度以上の症状があるような場合にはすぐ受診しましょう。
ふらつきが現れる耳の病気には、良性発作性頭位めまい症やメニエール病などがあります。特定の頭の位置をとることでめまいが起こるのが良性発作性頭位めまい症、めまいと聞こえの症状(難聴・耳鳴り)を発作的に繰り返すのがメニエール病で、いずれもグルグルと回るようなめまいが特徴です。
このような病気を発症すると、ふらつきを感じることがありますが、ほとんどの場合ふらつきはめまいによるもので、めまいが起きることによって体がふらつくように感じます。
めまいの持続時間はそれぞれで違い、一般的に良性発作性頭位めまい症では数十秒程度、メニエール病では20分以上~数時間続きます。
以下のような原因でもふらつきが起こる場合があります。
どのような薬でも副作用があり、降圧剤や精神安定剤、総合風邪薬など、さまざまな薬で副作用の一つとしてふらつきが起こることがあります。
薬を飲んだ後にふらつきだけが現れることもあれば、ふらつき以外に何かしらの症状が現れる場合もあり、薬の種類やその時の体調などによって異なります。
初めて使う薬を飲んでふらつきが現れた場合には、処方を受けた病院で相談しましょう。
脳の血管が詰まる病気を脳梗塞、脳の一部の血流が一時的に悪くなって短時間のみ神経症状が生じるものを一過性脳虚血発作といい、一過性脳虚血発作は脳梗塞の前兆としてみられることが多々あります。
脳梗塞の典型的な症状は、片方の手足や顔半分の痺れ・麻痺、言葉の障害(ろれつが回らない、言葉がでない)、ふらつき、歩きづらくなるなどです。一過性脳虚血発作でも同じような症状がみられますが、脳梗塞では症状が続くのに対して、一過性脳虚血発作では症状が5〜15分、長くても24時間以内になくなります。
このように、ふらつきが症状の一つに挙げられる病気にはさまざまなものがあります。ふらつきが続いている場合や、ふらつき以外に何かしらの症状がみられる場合には、一度病院へ行き病気でないか診てもらうのがよいでしょう。
病気によって専門の診療科が異なります。自分でどれに当てはまるのかを見分けることは難しい場合もありますので、迷う時には近くの内科やかかりつけの医療機関などで相談するとよいでしょう。
診療時には、何をしてふらつくようになったか、どのような時にふらつくか、薬の服用歴、他の症状などについて詳しく医師に伝えましょう。
上で挙げた病気のほかに、疲れやストレス、睡眠不足、アルコールの飲みすぎなど、日常生活が原因となってふらつきが起こる場合も多くあります。
疲れやストレスが溜まると自律神経が乱れやすくなります。この自律神経の乱れが原因の一つとなってふらつきが起こるとされています。また、疲れやストレスは、病気などによるふらつきを悪化させる原因にもなります。
疲れたら十分に睡眠をとって体を休めてあげましょう。また、食事による栄養補給も大切です。バランスのよい食事を心がけるとともに、疲労回復に効果のあるビタミンを積極的に摂取するようにしましょう。
ストレスを感じたら、趣味や娯楽の時間を作ってリフレッシュする、軽い運動をする、怒りや不安などの感情を周囲の人に聴いてもらうなどして、ストレス発散に取り組みましょう。
睡眠不足が続くと脳に血液が回りにくくなります。ふらつきは一時的な血流不足でも起こるので、睡眠不足によって血流不足に陥るとふらつくことがあります。
睡眠不足なら睡眠時間を確保するのが第一ですが、良質な睡眠をとることも大切です。眠りが浅いと感じたら、寝る前2〜3時間に飲食しない、入浴は寝る2〜3時間前に済ます、リラックスできる環境を整える、自分の体に合った寝具を使うなど、良質な睡眠を確保する努力をしてみましょう。
アルコールを飲みすぎると、血中のアルコール濃度が高まり脳の機能が麻痺して、知覚や運動能力などが抑制されます。その結果、ふらつきが起きるようになります。
まずは自分の適量を知り、適量を守って飲むよう心がけましょう。また、空腹時には飲まないようにする、ご飯を食べながらゆっくり飲む、飲酒時や飲酒後にしっかりと水分補給をすることも大切です。
日常生活の中でできる対策をとっても、ふらつきがいつまでもなくならない場合には、病院を受診することを考えましょう。