右下の腹痛:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
植田救急クリニック
加藤 之紀 先生【監修】
腹痛は数ある自覚症状の中で最も頻繁に現れるもののひとつで、お腹の右下だけに痛みを感じることもよくあります。
お腹の右下に痛みがあるといっても、具体的な症状や経過は人によってさまざまです。どのような原因によって痛みが起こるのでしょうか。
右下腹痛が現れるのは、胃や腸などの消化器の病気が原因になっていることが多く、ほかにも婦人科や泌尿器の病気が影響している可能性もあります。
胃や腸などの消化器の病気としては、虫垂炎、便秘、腸炎、憩室炎などが挙げられます。
虫垂炎とは、大腸の一部である盲腸の虫垂が炎症を起こす状態のことで、一般的に「盲腸」と呼ばれている病気です。
最も顕著な症状が右下腹痛で、初めはみぞおちあたりに痛みを感じ、徐々にお腹の右下に痛みが現れるのが典型的です。また、痛み以外に吐き気や食欲不振などの症状が現れる場合もあります。
便秘とは、排便が順調に行われない状態のことを指し、便がでない場合だけでなく、便の量が少ない、水分の少ない硬い便が出るなども含まれます。
お腹の左下にある大腸の一部のS字結腸に便が滞りやすいことから、左下腹痛が現れることが多いのですが、右下腹痛が生じることもあります。
原因によって異なりますが、腹痛のほかに腹部膨満感や食欲低下、吐き気・嘔吐などの症状が伴う場合もあります。
腸炎とは、細菌やウイルスによる感染、アレルギー、薬などが原因となって腸が炎症を起こす病気です。炎症が起きる部位によっては右下腹痛が現れます。
腹痛のほかに下痢が現れることも多く、原因によっては発熱や吐き気・嘔吐、血便などの症状が伴うこともあります。
憩室とは、消化管の壁の一部が内側から外側にせり出した袋状のもので、細菌感染によって憩室に炎症を起こす病気のことを憩室炎といいます。
憩室は大腸にできることが多く、お腹の右側または右下に位置する大腸の上行結腸や盲腸などで憩室ができて炎症した場合には右下腹痛が生じます。また、発熱することもあり、憩室で出血が起きた場合には血便がみられる場合もあります。
クローン病や潰瘍性大腸炎など、大腸や小腸に慢性の炎症または潰瘍を起こる病気を総称して炎症性腸疾患といいます。
主な症状には、腹痛、下痢、時には血便を伴う下痢などがあります。いずれもお腹の右下に位置する大腸・小腸の部位に発症すると、お腹の右下に痛みが現れます。ほかにも発熱や体重減少、関節炎などの症状が伴うこともあります。
胃や腸以外のものとしては、以下のような病気も考えられます。
右下の腹痛が起こる婦人科の病気には、卵巣に腫瘍ができる卵巣腫瘍、卵巣が周囲の血管や組織を巻き込むように捻じれる卵巣茎捻転、子宮内膜以外の場所に着床する子宮外妊娠などがあります。
卵巣は子宮の左右に一つずつありますが、このうちの右の卵巣に異常が生じた場合に右下腹痛がみられるようになり、卵巣茎捻転では激しい痛みが生じます。また、子宮外妊娠でも右下腹痛が起こることがあります。
いずれも早期の治療が必要な事が多いため、女性の激しい腹痛には注意しましょう。
尿路結石とは、腎臓・尿管・膀胱・尿道など尿の通り道である尿路に結石ができる病気です。尿路に留まる結石が尿路を下っていく時に引っかかると激しい痛みを感じ、その痛みの程度は数ある病気の中でも最大級といわれています。
主にお腹の右下に位置する尿路の部位に結石ができた時に右下腹痛が現れますが、吐き気や血尿といった症状が伴う場合もあります。
腫瘍とは、異常に増殖した細胞のかたまりのことで、臓器・組織・骨など体のさまざまな部位に発生します。このうちの消化管や内性器(子宮や卵巣など)、泌尿器に発生した場合などに右下腹痛が生じることがあります。
しかし、初期にはお腹の右下に違和感を覚える程度だったり無症状であったりする場合も多いといわれています。
一過性の便秘によって右下の腹痛が生じることも多いですが、他の病気が原因になっていることも考えられます。激しい痛みや血便などがみられる場合には急ぎ受診する事はもちろん、軽い痛みでも長く続いている場合や痛みのほかに下痢など他の症状が現れている場合には受診しておきましょう。
原因によって専門の診療科は異なりますが、まずは頻度の高い胃腸の原因を考え消化器内科への受診、もしくは近くの内科やかかりつけの医療機関などへの受診がよいでしょう。
診察時には、どのような痛みなのか(ズキズキ・チクチク・鈍い痛みなど)、どのように痛みが現れたのか、痛みはいつから続いているのか、他にどのような症状があるのかなどを医師に出来るだけ詳しく伝えましょう。