声がかすれる:医師が考える原因と対処法|症状辞典

声がかすれる

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 息がしづらい、何も飲み込めないほどの激しい喉の痛みなどがある
  • アレルギーのあるものを食べた心当たりがあり、唇や顔の腫れがある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 喉の痛み、発熱など風邪のような症状がある
  • 他の症状がないが、声のかすれが続いている
  • 痰に血が混じることがある
  • 首に以前はなかったしこりがある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

兵庫医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

三代 康雄 先生【監修】

風邪をひいたり声をだしすぎたりして声がかすれた経験のある人は多いでしょう。しかし、なかなか治らないときには注意が必要な場合もあります。

  • 発熱はおさまったが声のかすれがなかなか治らない
  • なんとなく徐々に声が出しづらくなっているように感じる
  • 声がかすれるし、なんだか物を飲み込みづらい

このような場合、一体どのようなことが原因となっているのでしょうか。

声のかすれは何らかの病気が原因となっていることもあります。大きくわけて、喉や声帯の病気が原因の場合と、それ以外の病気が原因となっている場合があります。

声のかすれを起こす喉や声帯の病気には、主に以下のようなものがあります。

風邪などの感染症

風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、喉に炎症を起こして声がかすれたり痛みを感じたりすることがあります。声のかすれ以外に鼻水、せき、くしゃみ、発熱やだるさといった症状が現れる場合が多いでしょう。ほとんどの場合は、風邪やインフルエンザが治れば声のかすれも治ります。

声帯ポリープ

声帯にポリープができ、声がかすれる病気です。声がかすれたり出づらくなったりすることが主な症状で、非常にまれですがポリープが大きくなると呼吸困難になることがあります。声の出しすぎなどで繰り返し喉に炎症が起きることでできると考えられています。

声帯結節

長期的に無理な発声をすることで、声帯でもっとも擦れ合う所がタコのように硬くなる疾患です。高い声を出す女性や大きな声を出す子ども、声をよく使う職業の方に比較的多くみられます。

喉頭がん

喉頭にできるがんのことです。声帯にがんができると声のかすれがみられ、他にものどの痛みや異物感があらわれることが多いといわれていますが、初期には症状が乏しい場合も多くあります。進行すると息苦しさや呼吸困難、嚥下困難などがみられることもあります。

反回神経麻痺

声帯の動きを支配する反回神経が麻痺して声帯が動かなくなる疾患です。反回神経はいったん胸のあたりまで降りてきてからまた上に伸び、声帯のある喉頭につながっているため、胸のあたりの病気が原因で麻痺が起こることがあります。

たとえば、大動脈瘤、食道や肺、甲状腺などのがん、頸部や胸部の手術、外傷による神経損傷などがあげられます。

声のかすれが起こる喉や声帯以外の病気には、以下のようなものがあります。

甲状腺機能低下症・甲状腺がん

甲状腺機能低下症とは、甲状腺のはたらきが低下して甲状腺ホルモンの分泌が不十分になる病気です。甲状腺ホルモンの分泌が不足すると、声のかすれ以外にも体重の増加やだるさ、まぶたや顔の腫れ、毛髪や皮膚の乾燥などが見られます。

また、甲状腺がんは甲状腺に発生するがんです。普通は首の前側のしこりで気づきますが、甲状腺の裏側に声帯を動かす反回神経が通っているため、声がれで気づくこともあります。

肺がん

気管支や肺胞の細胞ががん化する病気です。早期ではほとんど無症状で、進行とともに声のかすれやせき、たん、血痰、発熱、呼吸困難、胸痛などの症状が現れることが多いといわれます。

食道がん

食道の粘膜の表面から発生するがんです。早期ではほとんど自覚症状がなく、進行につれて声のかすれやせき、飲食のときの違和感やつかえ、体重減少、胸や背中の痛みなどの症状が現れることがあります。

風邪など一時的なのどの炎症で声のかすれが起きている場合は、のどに刺激を与えないような生活をすることで1週間程度で自然におさまることがほとんどです。

声のかすれが長引く、また職業上声を出さないことが難しい場合は耳鼻咽喉科などの専門医を受診しましょう。

また、長期にわたる喫煙喉頭がん肺がんの危険因子です。現在禁煙中の方でも喫煙歴のある人で声のかすれが現れた場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

受診の際にはいつから声がかすれているか、その他の症状があるか、仕事や趣味などで声をよく使う習慣があるかどうかなどを医師に伝えるようにしましょう。

声のかすれは日常生活の中に原因があることもあります。

タバコの煙に含まれるタールなどはのどに刺激を与えるため、喉に炎症を起こす原因のひとつです。アルコールはのどの粘膜に刺激を与えるだけでなく、アルコールの分解に多くの水を必要とするためにのどが乾燥して炎症を起こしやすい状態にします。

タバコやアルコールを控える方法

刺激物が原因の声のかすれかもしれないと思ったら、禁煙・禁酒につとめるとよいでしょう。特に禁煙することは将来的な喉頭がんなどのリスクも下げるといわれています。自力で禁煙できない場合、禁煙外来などを受診して、条件によっては保険適用で禁煙治療を受けることも可能です。

また、「酒は百薬の長」ともいいますが、過度の飲酒は咽頭がん食道がんの危険因子であり、肝臓にも負担がかかります。適度な飲酒にとどめ、週に2回は休肝日を儲けましょう。

加齢とともに声帯が萎縮して声のかすれが生じることもあります。急な体重減少などが原因となることもありますが、特別な原因がない場合も多いといわれています。声帯を鍛える訓練や手術といった方法で治ることもあります。

自分でできる対処法を行っても症状がよくならない場合には、思いもよらぬ原因が潜んでいるかもしれません。一度耳鼻咽喉科などの医療機関を受診しましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。