インタビュー

トリコモナスの感染原因

トリコモナスの感染原因
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

この記事の最終更新は2015年12月03日です。

腟トリコモナス症はトリコモナス原虫が性器内部に侵入することが原因で引き起こされる感染症です。日本における腟トリコモナス症の患者さんは減少傾向にありますが、感染率は地域によって差があります。また、腟トリコモナス症は再発するケースもあるので注意が必要です。今回はトリコモナス症の感染原因についてのお話です。

トリコモナスの感染経路は、他の性感染症と同じように性行為やオーラルセックス、アナルセックスですが、オーラルセックスでの感染のリスクは低いと言われています。 腟トリコモナス症は症状があらわれないことも多いため、自身が感染していることに気がつかず、性行為などでパートナーにも感染を広げてしまいます。

このように自覚症状が少ないことが、他の性感染症と比較した時に感染者の年齢層が非常に幅広く、性行為が盛んな若年層に限らず中高年にもしばしば見られる性感染症になっている原因であると考えられます。

男性が感染した場合では、トリコモナス原虫は前立腺や精嚢などに大人しく潜んでいます。男性の場合も症状が現れにくいために、性行為を通じてパートナーの女性に移してしまい、結果として女性の感染経路の特定を難しくしています。

腟トリコモナス症を引き起こすトリコモナス原虫(イラスト)

腟トリコモナス症は性感染症の中でも、パートナー間で感染を繰り返す「ピンポン感染」を頻繁に起こす性感染症でもあります。たとえ自分だけ治療をして完治したとしても、腟トリコモナス症に感染したままのパートナーと性行為を行うと再び感染してしまいます。

もし自分が腟トリコモナス症と診断された際には、パートナーの方にも打ち明けて一緒に検査・治療をするようにしましょう。性行為もお互いに治ったことを確認するまで控えることが大切です。

腟トリコモナス症は再発するケースも確認されています。腟トリコモナス症に感染しているパートナーとの性行為などによる再感染、他の臓器からの再感染、治療が完全でなかったためにトリコモナス原虫が死滅せず再度症状があらわれるといったケースがあげられます。

ごくまれにですが、腟トリコモナス症は胎児や新生児へと感染する「垂直感染」が報告されています。また妊娠している女性が感染していると早産の原因になるとも言われているので、妊娠がわかったら早い段階で検査を受けるようにしましょう。

腟トリコモナス症が性行為や垂直感染を起こすことに関してはご説明しましたが、腟トリコモナス症の原因であるトリコモナス原虫は乾燥には極めて弱い反面、水中では活発でかなり長い時間、感染力があります。そのため浴槽を介して家族内感染を引き起こすと考えられています。

浴槽の他にも、下着・タオル・便器などに触れる機会があれば感染することが知られています。このことから、トリコモナスは幼児や性交の経験がない女性にも感染する可能性があると考えられます。

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