インタビュー

腟トリコモナス症の症状-再発を繰り返すケースも

腟トリコモナス症の症状-再発を繰り返すケースも
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

腟トリコモナス症とは、腟トリコモナス原虫が性器内に侵入することでおきる性感染症です。男性に症状があらわれることは少なく、女性に症状が強くあらわれます。そのため女性にとってはポピュラーな性感染症のひとつとも言えますが、現在では患者数が減少しています。 腟内部の感染症であるので、トリコモナス腟炎だけでなくHIVや子宮頸癌、卵管炎などの重大疾患との関連性にも注目があつまっています。

女性の腟トリコモナス症の症状

女性の腟トリコモナス症の患者さんの約60%の方に症状があらわれますが、残りの約40%は症状があらわれない無症状性感染者と言われています。しかしこの40%の無症状性感染者のうち約3分の1の方は、6ヶ月以内に症状があらわれるといわれています。

感染してから10日前後の潜伏期間を経て、外陰や腟の激しいかゆみや熱感、悪臭を伴うおりものの増加などの症状があらわれます。ほかにも性交時に痛みや不快に感じることがあります。 もし腟トリコモナス症の感染に気づかず放置してしまうと、炎症が腟から卵管まで進み細菌性腟症を合併し、最悪の場合不妊症や流産・早産を招く危険性があります。

トリコモナス症を引き起こす、トリコモナス原虫のイラスト

腟トリコモナス症は不妊の原因になる?

腟トリコモナス症は、男性よりも女性に症状が現れることが多く、不妊症の原因として、クラミジアとともに有名な性感染症です。

おりものの増加や悪臭などの変化やかゆみなどの症状は「トリコモナス原虫」が原因ですが、このトリコモナス原虫が腟から子宮、卵管へと深部へ侵入して炎症を起こすと侵入部位に炎症を起こします。もし炎症が卵管に生じると、卵管炎を引き起こし卵子の通り道を塞いでしまうため、腟トリコモナスは不妊の原因となってしまうのです。

男性の腟トリコモナス症は女性に比べて症状が乏しいため、進んで検査を受けにくる方は少ないです。パートナーの女性が腟トリコモナス症と診断された場合には、たとえ症状が無かったとしても男性も積極的に治療を受けるようにしましょう。

妊娠中にトリコモナスになると、どのような影響があるのか

トリコモナスは、トリコモナス原虫が引き起こす性感染症(STI)です。原虫は0.1mmくらいで乾燥にはとても弱いのですが、水中ではかなり活発になるので長時間にわたって感染力があります。そのため性交経験のない女性や幼児にも家族で共有するタオルや便器、浴槽、などを介して感染する可能性があることが考えられます。

女性がトリコモナスに感染すると、典型的な場合は腟にかゆみがあり、緑色で匂いの強いおりものが確認されます。しかし症状のあらわれ方には個人差があるためトリコモナスに感染していることに気がつかない方もいらっしゃいます。

もし妊娠中の女性が腟トリコモナス症になりトリコモナス原虫が子宮に入りこむと、胎児を包む膜に炎症を起こす原因になります(絨毛膜羊膜炎)。絨毛膜羊膜炎は早産の原因となるので、胎児にとって大きなリスクとなります。早産による極低出生体重児、呼吸窮迫症候群、周産期死亡のほかにも、脳性麻痺、肺炎、髄膜炎、敗血症などの病気を発症するリスクが上昇します。

再発を繰り返すケースもある

日本では腟トリコモナスは減少しつつあると言われていますが、その一方で再発を繰り返すケースは増加しています。 再発を繰り返す場合、次のようなケースが考えられます。

○トリコモナス原虫が完全に死滅していなかった

投薬などの治療により症状があらわれなくなり完全に治ったと思っても、腟トリコモナス症の原因であるトリコモナス原虫が完全には死滅しておらず、再発することがあります。

○パートナーからの再感染

トリコモナス原虫を死滅させて完治したとしても、トリコモナスに感染しているパートナーと性交することで再感染、腟トリコモナス症を再発することがあります。 特に男性は症状がほとんど現れないこともあり、また検査を行っても陰性と診断されることがあります。

腟トリコモナス症も他の性感染症同様に、感染が判明したらパートナーの方も検査・治療を行い、再感染を防ぐようにしましょう。

○隣接する臓器からの侵入による感染

腟トリコモナス症を完治させたとしても、トリコモナス原虫が腟以外の部位に侵入生息していることがあります。子宮頸部や卵管などに認められることが多く、腟に戻ってきて再感染することがあります。

男性の腟トリコモナス症の症状

男性が腟トリコモナス原虫に感染すると、尿道からの微量な分泌物が確認されるほか、排尿時にしみるなどの軽い尿道炎症状を起こすことがあります。しかし多くの場合、こうした症状がありません。トリコモナス原虫の感染が尿道のみの場合は尿で排出されることもあります。

トリコモナス原虫は前立腺や精囊などに生息しており、前立腺炎を引き起こすこともあります。また、比較的まれですが、トリコモナス原虫が尿道に出てくると尿道炎を生じます。

矢印で示したのがトリコモナス原虫。トリコモナスは女性の患者が多いが、男性が感染すると前立腺炎、尿道炎を引き起こすこともある