インタビュー

もし男性がトリコモナス症に感染したら

もし男性がトリコモナス症に感染したら
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

この記事の最終更新は2015年12月04日です。

トリコモナス症は男性より女性の症状が激しく多様にあらわれるため、男性のトリコモナス症についてあまり知られていません。しかし男性のトリコモナス症は前立腺癌のリスクを高めてしまいます。男性のトリコモナス症について、引き続き尾上泰彦先生に教えていただきました。

トリコモナス症は、男性ではほとんど症状があらわれません。トリコモナス症を引き起こすトリコモナス原虫は前立腺や精囊などに棲息し、たまたま尿道にでてくると症状があらわれることがあります。 極めて微量な尿道分泌物、尿道のかゆみ・違和感・不快感といった軽い尿道炎をあらわすといわれています。症状が尿道のみの場合、排尿によりトリコモナスが排出され治る可能性がありますが、トリコモナスに感染している男性は前立腺炎を有しているケースが多いようです。

トリコモナス原虫(矢印先)。男性の場合はほとんど症状が出ないために、感染に気づかないことが多い

新鮮な尿道の分泌物を採取して無染色性標本を作製、顕微鏡で動いているトリコモナス原虫を確認するか培養検査を行います。しかし診断は容易ではありません。

治療はメトロニダゾール250mgの1日2回投与を10日、もしくは1.5gの単回の経口投与を行います。この際、メトロニダゾールは発がん性があるので1クールを終えた後は1週間開ける必要があります。 男性の場合はトリコモナスの検査が困難なため、感染に気がつかずパートナーも感染させてしまう「ピンポン感染」の原因にもなります。そのため、もしパートナーがトリコモナスであると診断されたら検査・治療が必要となります。

アメリカのハーバード大学のLorelei Mucci氏らが発表した「腟トリコモナス症が致死的な前立腺癌のリスクを高める」という研究結果が、2009年9月9日にJournal of the National Cancer Institute誌の電子版に掲載されました。 Mucciらの研究チームは、以前の研究で腟トリコモナス抗体が前立腺癌の発症と死亡に関係していることを確認していました。この年の研究では、673人の前立腺癌患者とそうでない673人の男性の血液サンプルの血清中の腟トリコモナス抗体の有無をそれぞれ調べました。 前立腺癌患者の血液サンプルは、前立腺癌を診断された10年前に採取されたものです。

この研究結果では腟トリコモナス抗体が陽性の場合、統計的に有意ではないですが前立腺癌のリスクは1.23倍になりました。しかし前立腺外に広がった前立腺癌を引き起こすリスクは2.17倍、最終的に骨転移へと進む前立腺癌の発症もしくは前立腺癌による死亡リスクが2.69倍という結果となりました。 Mucci氏は「今回の研究結果が大規模な前向き研究で確認されれば、腟トリコモナス症の予防と治療が、悪性度の高い前立腺癌の数少ない修正可能なリスク要因といえるかもしれない」と語っています。

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