インタビュー

顔面神経麻痺とは-顔の片側が動かせなくなる病気

顔面神経麻痺とは-顔の片側が動かせなくなる病気
村上 信五 先生

名古屋市立東部医療センター 病院長/名古屋市立大学病院 副病院長/耳鼻いんこう科 診療科部長、...

村上 信五 先生

顔面神経麻痺は、顔の表情を作る「表情筋」を動かしている顔面神経が傷つき、顔面が動かなくなることをいいます。多くの場合、顔の右半分または左半分のどちらか一方に症状が出ます。この記事では、顔面神経麻痺の第一人者である名古屋市立大学病院耳鼻いんこう科診療科部長の村上信五教授にお話をうかがいました。

顔面神経麻痺とは

顔面神経麻痺は、原因不明で突然発症する「ベル麻痺」が全体の約6割を占めています。次いで多いのは「ハント症候群」による麻痺で、全体の15%ほどにあたります。これに側頭骨骨折による顔面神経麻痺を加えた3疾患で、顔面神経麻痺全体のおよそ80%を占めています。ベル麻痺では、男女差はなくどの年齢にも発症しますが、40歳代にもっとも多く、10歳以下は少なくなっています。

顔面神経麻痺の症状

突然、顔の片側が動かせなくなり、麻痺した側に以下のような症状があらわれます。

  • 口元からよだれが出たり、飲んだものや食べたものがこぼれる。
  • 頬の中に食べ物がたまる。
  • 口角から空気が漏れてしゃべりにくくなる。
  • 目を閉じようとしても完全に閉じず、白目になったり、涙が出たりする。
  • 聴覚が過敏になり、音が耳に響く。
  • 舌の前2/3に味覚がない。

顔面神経麻痺の分類

顔面神経麻痺の分類

 

【末梢性】

脳幹から末梢(先)の顔面神経に障害が起こる

【中枢性】

脳の中:中枢神経系内に障害が起こる

【特発性】

原因が不明なもの

ベル麻痺

 

【症候性】

原因が明らかなもの

ハント症候群

側頭骨骨折

中耳炎、糖尿病

聴神経腫瘍、顔面神経鞘腫

耳下腺腫瘍

シェーグレン症候群

ギラン・バレー症候群

ライム病(ボレリア感染症)

サルコイドーシス

脳血管障害

(脳出血・脳梗塞など)

 

脳腫瘍

 

その他(変性、炎症など)

顔面神経麻痺は上の表のように、原因となる疾患が明らかな症候性顔面麻痺と原因が不明な特発性顔面麻痺に大きく分けることができます。

  • 症候性顔面麻痺:原因が明らかなもの。ウイルスの感染・腫瘍・糖尿病・中耳炎などによって起こるもの。
  • 特発性顔面麻痺:原因が不明なもの。ベル麻痺。

また顔面神経麻痺は、神経系のどの部分に問題があるのかによって中枢性神経麻痺と末梢性神経麻痺に分かれます。中枢性神経麻痺は大脳から橋(きょう)と呼ばれる部分にある顔面神経核までの間に何らかの問題があって起こるものです。脳出血、脳梗塞などの脳血管障害のほか、脳腫瘍やその他の脳の変性・炎症などが原因となります。主に脳神経外科、神経内科などの診療科が受け持つことの多い領域です。

末梢性神経麻痺は顔面神経核およびその末梢で顔面神経が圧迫され、傷つくことによって起こるものをいいます。この部分は主に私たち耳鼻咽喉科や神経内科、形成外科、麻酔科などの診療科で担当する領域になります。

  • ベル麻痺
  • ハント症候群(帯状疱疹ウイルスの再活性化)
  • 側頭骨骨折などの外傷
  • 中耳炎
  • 耳下腺腫瘍、顔面神経鞘腫、聴神経腫瘍など
  • その他(ギラン・バレー症候群、サルコイドーシスなど)

顔面神経麻痺の大半を占めるベル麻痺やハント症候群はいずれも末梢性神経麻痺であり、以下のような特徴から中枢性神経麻痺と見分けることができます。

末梢性顔面神経麻痺の特徴

  • 顔面の片側全体が麻痺
  • 聴覚が過敏になり、音が耳に響く(アブミ骨筋麻痺による)。
  • 舌の前2/3の味覚障害、麻痺側の目の乾燥(中間神経の麻痺による)。
  • 耳介や後頭部の痛みをともなう。
  • 耳介や口腔粘膜に帯状疱疹をともなう。

中枢性顔面神経麻痺の特徴

  • 下部顔面に比べて上部顔面の麻痺が軽度(口や眼の周囲の麻痺は明らかなのに、眉を上げた時の額のしわ寄せに左右差がない)。
  • 無意識な表情と意図的に表情を作ったときに、麻痺に違いがみられる場合がある。
  • 手足の麻痺や他の脳神経麻痺をともなう。