これまでB型肝炎の症状や感染経路についてご説明してきましたが、そのなかで「キャリア」という言葉がたびたび登場してきました。この「キャリア」とは一体どのような状態のことを指しているのでしょうか?
私たちの体には「免疫」と呼ばれるバリア機能があります。仮に体内にウイルスや細菌、ホコリなどの有害な物質が侵入したとしても、免疫機能のはたらきによりこれら有害物質を攻撃、もしくは体外に排出します。そのため私たちは病気になりにくいのです。しかし何かしらの原因により、この免疫機能が低下することがあります。
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)に感染して起こる状態の総称です。私たちの体には免疫機能が備わっているため、たとえHBVに感染したとしても肝炎の症状を引き起こすことは少なく、仮に肝炎の症状があらわれたとしても、大半の患者さんの場合肝炎の症状は自然に回復することが多いです。HBVに急性感染した人のうち、急性肝炎の症状を訴える(急性肝炎と診断される)のは約3分の1といわれています。
免疫が十分に機能していない方、たとえば機能が未発達の乳幼児や、免疫抑制剤を使用中の患者さん、AIDS(後天性免疫不全症候群)を発症している方の場合、体内にウイルスが侵入しても、免疫機能がHBVをウイルスと認識することができないことがあります。そのためウイルスを保持しているにも関わらず肝炎を発症しないことがあり、このような状態を「持続感染」と称します。
その一方で急性肝炎を発症・治癒した方でも、ウイルスが体外に排出されてHBVに対する免疫を獲得しているにもかかわらず、HBVが肝臓内にごくわずかながら存在し続けていることも明らかになっています。これらのケースのように、B型肝炎における「キャリア」とは、体内にHBVを保有して いる方たちのことを指します。
B型肝炎の原因となるHBVには、A~Hの8種類の遺伝子タイプ(ジェノタイプ)があります。日本では、「遺伝子型B」および「遺伝子型C」のウイルスによる感染が従来からみられます。しかし近年では「遺伝子型A」、特にヨーロッパ型と呼ばれる「Ae型」が性感染症として急増傾向にあります。 これまで日本では、B型肝炎が慢性化するのは免疫能力が低下している方以外ではほとんどないと言われてきました。しかし、近年では遺伝子型AのHBVに感染するとB型肝炎が慢性化する例があるということが知られつつあります。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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