B型肝炎とはB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)によっておこる状態の総称です。このHBVとはいったいどのようなウイルスなのでしょうか?今回はこのHBVについて、引き続き尾上泰彦先生に詳しくご説明していただきました。
B型肝炎には一時的な症状で終わる「一過性感染」とHBVを保有し続ける「持続感染」があります。これはあくまでも推定ですが、世界で約4億人が持続感染を起こしていると考えられています。
持続感染とは、出生時や乳幼児期など免疫がまだ十分に機能しない時期にHBVに感染、そのまま保有し続けている状態のことを指します。持続感染した方の約90%には肝炎の症状はあらわれません。しかし残りの約10%の方に慢性肝炎の症状が見られます。この慢性肝炎を患っている方のうち年間約2%の方が肝硬変へと移行、肝細胞がん、肝不全に進行するといわれています。
1964年にBlumbergらによるオーストラリア抗原(のちHBs抗原)の同定から、HBVの研究は開始しました。肝炎の発症にはオーストラリア抗原が関わっているという報告がされたのち、HBVに感染しても肝炎の症状があらわれない「無症候性キャリア」の存在 、慢性肝疾患はHBVが原因となっていたことなど、肝炎に関する様々な報告がなされるよ うになりました。
1970年にはHBVの本態(実態)Dane粒子の同定、1972年にはHBe抗原が発見され、1979年になるとHBVゲノムをクローニングすることが可能となったため、遺伝子の測定が可能となりました。
かつてHBVを保有していた方の体には、HBVが排出するHBs抗原に対抗するためのHBs抗体が存在しています。HBs抗原のスクリーニング検査(集団検診)が日本血液センターで行われるようになり、1986年からは母子感染防止事業に基づき、出生児にワクチンと免疫グロブリンの投与が開始しました。このことにより親から子へウイルスが感染する「垂直感染」によるキャリアが減少、若年者でのHBs抗原陽性率は低下しました。
しかし急性肝炎の患者数は減少していません。これは性行為等によって体内に侵入したHBVが一過性の急性肝炎を起こすことが原因と考えられています。またHBVには8種類の遺伝子型(ジェノタイプ)がありますが、近年の傾向として慢性化しやすい「遺伝子型A」と、ヨーロッパ型(Ae型)が性感染症として急増していることがあげられます。
繰り返しになりますが、B型肝炎とは肝臓の疾患です。しかし日本国内における成人の急性B型肝炎は、性行為等によりHBVに感染して一時的に症状があらわれる一過性の肝炎であることから、性感染症としての顔も持ち合わせています。
B型肝炎の多くは症状が自然に軽快しますが、時として急性化・劇症化し生命にかかわる事態を招くこともあります。肝炎の代表的な症状は倦怠感や赤褐色尿、黄疸などです。こうした症状が現れたときには、すみやかに専門医による診察を受けるようにしましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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