インタビュー

脂質異常症の原因

脂質異常症の原因
岸本 美也子 先生

山王病院・国際医療福祉大学 内科部長 (糖尿病・代謝)・ 国際医療福祉大学 講師

岸本 美也子 先生

この記事の最終更新は2016年03月03日です。

脂質異常症とは、血液中の脂肪分(コレステロールや中性脂肪)が基準の値よりも多すぎる、あるいは少なすぎることをいいます。その多くは生活習慣によって起こりますが、中には生まれながらの体質的な要因、または他の病気や服用している薬の影響で血液中の脂質のバランスが悪くなる方もいます。脂質異常症はなぜ起こるのか、その原因について山王病院内科部長の岸本美也子先生にお話をうかがいました。

従来は血液中の脂肪分が多い状態を「高脂血症」と呼んでいました。血液中の中性脂肪(トリグリセライド)や悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールの値が基準よりも【高】いと、動脈硬化の原因となります。しかしその一方で、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールの値が【低】すぎることも動脈硬化のリスクになります。このように「高すぎるとよくないもの」と「低すぎるとよくないもの」があるので、高脂血症という用語は病態を正しく表していないとして、2007年に日本動脈硬化学会が診断名を「脂質異常症」に改訂しました。

ただし、高脂血症という用語がなくなったわけではありません。高コレステロール血症・高LDLコレステロール血症・高トリグリセライド血症・高HDLコレステロ―ル血症などを総称して高脂血症と呼ぶことが否定されるわけではなく、むしろ脂質異常症という用語のなかに高脂血症や低脂血症(低HDLコレステロール血症)が含まれると考えていただくとよいでしょう。

善玉と呼ばれるHDLコレステロールは体の中で余ったコレステロールを回収します。悪玉と呼ばれるLDLコレステロールは体の中で余ったコレステロールを全身に置いていきます。LDLコレステロールが増えてHDLコレステロールが減ると、特に血管の内側に脂肪分がたまって、最終的には動脈硬化を起こしてしまいます。

コレステロールは食事によって体に取り入れられますが、それ以外にも肝臓や小腸で合成されています。そして、人間の体をつくっている細胞の膜を構成する成分として使われます。また、ある種のホルモンの材料にもなっています。

「コレステロール」と聞くと、なんとなく体に悪いもの、不必要なものというイメージがありますが、実は人間が生きていくためには欠かせないものです。しかしそれが多すぎると、動脈硬化を進行させてさまざまな病気を引き起こすのです。

トリグリセライド(Triglyceride; TG)は中性脂肪ともいいます。

コレステロールと同様に食事から体に取り入れられたり、体内で合成されたりしますが、私たちが活動するためのエネルギー源になるものです。運動などをすると燃焼してエネルギーを放出し、使われずに余ったトリグリセライドは皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。

しかしそれ以外にも、生まれながらの体質的な要因、または他の病気や服用している薬の影響で血液中の脂質のバランスが悪くなることがあります。

遺伝子の異常が原因で血液中のLDLコレステロールを細胞に取り込むことがうまくできないため、血液中にコレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまう体質を原発性脂質異常症といいます。これに対して他の病気や服用している薬など、何らかの原因があるものを二次性(続発性)脂質異常症といいます。

脂質異常症と関係がある疾患として、糖尿病やその他の内分泌疾患(クッシング症候群先端巨大症など)のほか、甲状腺機能低下症・肝胆道系疾患・腎臓病(ネフローゼ)などが知られています。

薬剤による影響としては、ステロイドホルモン剤・β遮断薬・経口避妊薬などがよく知られています。ステロイドホルモン薬による脂質代謝異常は薬の直接的作用による一次的なものと、食欲亢進や肥満に伴う二次的なものがあります。また、β遮断薬は代謝異常に悪影響を及ぼすとされていますが、脂質への影響はβ1選択性の薬剤のほうが少ないようです。

このほか、飲酒によるアルコールの一般的な効果として中性脂肪(トリグリセリド:TG)の増加があります。また、女性ホルモンとして知られるエストロゲンが閉経などの理由で低下することもLDLコレステロールの増加を招きます。

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