インタビュー

75歳以上の高齢者に対する脂質異常症治療薬-必要である場合と、必要ではない場合

75歳以上の高齢者に対する脂質異常症治療薬-必要である場合と、必要ではない場合
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...

徳田 安春 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2016年05月14日です。

身体の中では、「コレステロール」という脂質が作られています。食べ物から摂ることができ、身体にとって必要な物質ですが、血中のコレステロールが多くなりすぎると、血管が詰まってしまい心疾患や心臓発作、そして死亡のリスクが高まることがあります。スタチンという薬は、コレステロールを少なくする薬剤です。しかし75歳以上でこれまで心疾患の既往歴が無かった方にとって、スタチンの服用は不利益となる可能性もあります。以下にその理由を示します。

高齢者の多くはコレステロールの値が高いため、心疾患の予防にスタチンを処方されているのが一般的です。

しかし高齢者に限っては、コレステロール値が高いと心疾患や死亡につながるという根拠が明らかではありません。事実、いくつかの研究では反対の結果-コレステロール値が最低レベルの高齢者の群が、実際には最も高い死亡のリスクを抱えていることが示されています。

若年者と比べ、高齢者へのスタチン使用には重大な副作用が伴う可能性が高いです。

スタチンは筋肉痛や筋力低下といった筋肉の問題を引き起こし、まれに横紋筋融解症という重篤な問題に至ることもあります。

また、高齢者はスタチンによって以下のような事故や症状を引き起こすことがあります。

・転倒

・記憶喪失や混乱

・吐き気、便秘、下痢

高齢者はたくさんの薬を服用している場合が多く、これらはスタチンと相互作用を起こし、重大な問題につながることがあります。筋肉痛のような副作用も増えかねません。抗不整脈薬とともに服用されることで、致命的な反応を引き起こすことがあります。

糖尿病白内障、肝・腎・神経障害のリスクも増大させます。

かかりつけ医と共に、スタチンのリスクとベネフィットを注意深く検討すべきです。高齢者で、心疾患をお持ちでないならなおさらです。

高齢者はスタチンの重要な利益を得るほどに長生きできないこともあります。家族と一緒に健康上の不安について医師と話し合うべきです。起こる可能性が非常に低い心臓発作を予防するために過度に心配をしますか?それとも虚弱や怪我、記憶障害などを引き起こしうる副作用を避けたいと思いますか?

ジェネリック医薬品のスタチンを服用するために、一か月あたり4ドルから220ドル(日本円で約480円〜2万5千円)かかります。先発品ならば160ドルから686ドル(日本円で約1万9千円〜8万円)です。副作用が発症しないかをチェックするために、追加の検査費用も支払わなくてはいけない場合もあるでしょう。

心臓発作、脳卒中、ミニ卒中(TIA一過性脳虚血発作)などを経験した人はスタチンを服用すべきです。スタチンは次に起こり得る心臓発作や脳卒中を予防してくれます。

<予防のためのステップ >

健康的な生活習慣を心がけることが、特に高齢者にとっての心疾患の予防には一番重要です。そのための秘訣を以下に示します。

●活動的でいましょう

運動は心臓を強くします。新しい血管を作り、心臓の仕事量を減らしてくれます。また体重や血圧を健康的な範囲で維持することにも繋がります。2時間半/週、または30分/日の適度な運動を心がけてください。適度な運動には散歩、水泳、サイクリング、ダンス、ガーデニングといったものがあります。

●植物性の食事を摂りましょう

たくさんの野菜、果物、雑穀、ナッツ、豆類を摂ると以下のようなメリットがあります。

・カリウムと食物繊維が豊富で、それらは心疾患の予防につながります

・塩分が控えめです

・動脈を詰まらせうる類の脂質を含みません

バターではなく、代わりにキャノーラ油やオリーブ油を摂りましょう。肉類では、魚、赤身の肉、鶏肉などを食べましょう。

●タバコをやめましょう

喫煙者と比べて、喫煙者が心疾患を発症するリスクは、最大4倍高いです。長年喫煙していたとしても、禁煙をすることで心疾患のリスクは下がります。一年間禁煙すれば、リスクは半分になります。

禁煙するためにはカウンセリングを受けたり、ニコチン置換療法を行ったり、あるいはその両方を行うことが非常に効果的でしょう。

●ストレスを減らしましょう

心的ストレスは心臓に有害なホルモンが放出される原因です。リラックスするためにヨガやマッサージ、太極拳や瞑想などをしてみてはいかがでしょうか。入浴、読書、音楽を聴くなども良いです。家族や友人、ペットと時間を過ごすのも良いかもしれません。

 

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 大阪大学医学部附属病院 佐竹祐人

監修:小林裕貴、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

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