インタビュー

脂質異常症とは

脂質異常症とは
岸本 美也子 先生

山王病院・国際医療福祉大学 内科部長 (糖尿病・代謝)・ 国際医療福祉大学 講師

岸本 美也子 先生

この記事の最終更新は2016年03月02日です。

脂質異常症とは、血液中の脂肪分(コレステロールや中性脂肪)が多すぎる、あるいは少なすぎることをいいます。従来は高脂血症と呼ばれていた病態も脂質異常症の一部であるといえます。脂質異常症を放置すれば動脈硬化が進行して、さまざまな病気を引き起こします。脂質異常症の原因・症状・診断・治療について山王病院内科部長の岸本美也子先生にお話をうかがいました。

脂質異常症の多くは生活習慣によって起こります。しかしそれ以外にも、生まれながらの体質的な要因、または他の病気や服用している薬の影響で血液中の脂質のバランスが悪くなることがあります。

遺伝子の異常が原因で血液中のLDLコレステロールを細胞に取り込むことがうまくできないため、血液中にコレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまう体質。

他の病気や服用している薬など、何らかの原因があって起こる脂質異常症。

疾患性

糖尿病やその他の内分泌疾患(クッシング症候群先端巨大症など)のほか、甲状腺機能低下症・肝胆道系疾患・腎臓病(ネフローゼ)

薬剤性

ステロイドホルモン剤・β遮断薬・経口避妊

その他

アルコール過剰摂取・妊娠閉経によるエストロゲン低下

脂質異常症は基本的に症状がないことが多く、血液検査によって見つかることがほとんどです。脂質異常症をそのまま放置していると、動脈硬化が進み、狭心症心筋梗塞脳梗塞を起こしやすくなります。これらの冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患を予防することが、脂質異常症を治療する最大の目的です。また、中性脂肪(トリグリセライド:TG)の値が高いと、冠動脈疾患・脳梗塞・労作性狭心症(→突然死)・脂肪肝急性膵炎などのリスクが高まります。

脂質異常症の診断基準は、空腹時の血液中に含まれる脂質の値によって、以下のように定められています。

※TGが400mg/dl以上や食後採血の場合はnon-HDLコレステロールを使用する。Non-HDLコレステロール=総コレステロール-HDLコレステロール

LDLコレステロールの値は中性脂肪<400mg/dl の場合、次のFriedewald(フリードワルド)の式から求めます。

LDLコレステロール=総コレステロール-HDLコレステロール-中性脂肪/5

 

禁煙し、受動喫煙を回避する

● 過食を抑え、標準体重を維持する

● 肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やす

● 野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす

● アルコールの過剰摂取を控える(純アルコール換算で1日あたり25g以下)

● 有酸素運動を1日に30分以上行う(できれば毎日)

脂質異常症の治療は、生活習慣の改善が基本となります。それだけでは十分な改善がみられない場合は薬物治療が考慮されます。

脂質代謝の改善には有酸素運動が有効です。速歩(早歩き)・水泳・水中歩行・ラジオ体操・社交ダンス・ベンチステップ運動などがすすめられます。高齢の方は日常生活の中での身体活動を増加させるようにします。室内で座ったまま行える軽い筋力トレーニングをすることも有効です。

<主にコレステロールを下げる薬>

● HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)

● 陰イオン交換樹脂

● 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

● プロブコール

<主に中性脂肪(トリグリセライド:TG)を下げる薬>

● フィブラート系薬

● ニコチン酸誘導体

● 多価不飽和脂肪酸

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