インタビュー

脂質異常症の症状

脂質異常症の症状
岸本 美也子 先生

山王病院・国際医療福祉大学 内科部長 (糖尿病・代謝)・ 国際医療福祉大学 講師

岸本 美也子 先生

この記事の最終更新は2016年03月04日です。

脂質異常症と診断されても、多くの人は体の異常を感じていません。しかし治療をせず放置すれば、動脈硬化が進行して狭心症心筋梗塞脳梗塞など命にかかわる病気を引き起こします。脂質異常症が原因となって起こる病気やさまざまな症状について、山王病院内科部長の岸本美也子先生にお話をうかがいました。

しかし、原発性高脂血症や高コレステロール血症では皮膚に特徴的な黄色腫を生じ、診断の助けとなることがあります。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた名画「モナ・リザ」の目元には黄色腫らしきものがみられることから、モデルの女性は高コレステロール血症だったのではないかという説もあります。また、眼球に角膜輪と呼ばれる白い輪がみられたり、高カイロミクロン血症による肝腫大がみられることもあります。

 

黄色腫
目の周りにできた黄色腫

これらの冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患を予防することが、脂質異常症を治療する最大の目的であるといえます。

1. 血中のコレステロールが多くなる

2. 血管の壁にプラークができる

3. プラークがたくさんできると血液の流れを妨げ、ちょっとした刺激でもすぐに破れる

4. 血液と接触すると急激に血栓ができ、さらに血管をふさいで血液の流れを悪くする。

5. 大きな血栓が心臓や脳の太い動脈でできてしまうと、心筋梗塞脳梗塞の原因になる

6. 最終的には心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことがあり、破れなかったプラークもだんだん血管を狭くして血液の流れを悪くしていき、やがて血管の壁が厚く、硬く、もろくなっていく。

HDLは組織内の余分なコレステロールを肝臓に戻す役割があるため、血液中にHDLコレステロールが多いと、血管壁のコレステロールを取り除いて動脈硬化を防ぐ方向に働いていると考えられます。HDLコレステロールの値が低すぎるとよくないとされるのはこのためです。

動脈硬化の危険因子は高血圧喫煙・加齢・性別・家族歴・冠動脈疾患の既往・慢性腎臓病CKD)・糖尿病などです。脂質異常症に加えてこれらの危険因子が重なるほど、動脈硬化が進みやすくなります。

内臓脂肪量が多いほど、空腹時高血糖・脂質異常・高血圧などの合併症が多いことが報告されています。

TGが高いとLDLコレステロールが増え、動脈硬化が進行します。冠動脈疾患の発症は、空腹時のTGが150 mg/dl以上で増加し、TG が165 mg/dl以上になると脳梗塞労作性狭心症突然死が増加することが報告されています。

中性脂肪は肝臓で合成されますが、中性脂肪が多くなると脂肪肝になり、肝機能が低下するとされています。また脂肪肝と同様に膵臓にも脂肪がたまることがあり、さらに多量の飲酒などによりTGが500mg/dl以上に達すると、膵臓に負担がかかり急性膵炎を起こすリスクがあります。

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