感染症コンサルタント 、北海道科学大学 薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medic...
岸田 直樹 先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...
徳田 安春 先生
Choosing Wisely
あなた自身が治療を受けるときや、知人のお見舞いのために病院へ行くときに、注意しなければならない医療従事者による医療行為が2つあります。ひとつは尿道カテーテルの使用法、もうひとつは潰瘍治療薬の過剰処方です。なぜ、非医療従事者が注意しなければならないのでしょうか。それは、これら2つの医療行為により院内で感染症にかかる危険性が高まってしまうからです。
カテーテルとは、尿を出すために使用される管です。尿道カテーテルは主として手術後に使用されたり、尿量(どれくらいの尿が出る)をみるために使用されます。
しかしながら、尿道カテーテルは必ずしも患者にとって必要とは限りません。カテーテルは医療サイドの都合により使用されることや、留置時間が長すぎるケースが往々にしてあるのです。
カテーテルを留置する時間が長引くと、それだけ細菌が増殖しやすくなり、尿路感染症を引き起こす可能性も高まります。尿路感染症は、米国では院内で起こる感染症のなかでも最多の疾患であり、その発生件数は年間100万件にものぼります。尿路感染症に罹患してしまうと、入院期間が長くなったり、抗菌薬を追加投与せねばならなくなることがあります。ときには感染が血液にまで及び、死に至ることもあります。米国では年間約1300人が尿路感染症により死亡しています。
多くの病院は潰瘍や消化管出血を予防するために消化管潰瘍治療薬を処方します。このような疾患を抱える患者にとっても、薬剤による治療は有用です。また、これらは集中治療を受けている患者に対しても効果的であり、特に人工呼吸器を装着している場合に使用されます。
主に使用される薬剤は、以下2種類です。
・オメプラゾール、エソメプラゾール等のプロトンポンプ阻害薬
・ラニチジン、ファモチジン等のヒスタミンH2受容体拮抗薬
患者の4人に3人がこれらの薬剤を処方されています。しかし、実はこれは過剰な処方であり、多くの患者が本当に必要ではない薬までも処方されているのです。これらを何週間、何か月もの間、継続して服用し続けていることもあります。
また、薬剤により腸内の正常細菌叢(そう)が死滅してしまいます。このような薬剤を服用すると、クロストリジウム・ディフィシルと呼ばれる有害な細菌に2倍感染しやすくなります。クロストリジウム・ディフィシルによる腸炎は重篤な下痢を引き起こし、抗菌薬による治療は困難になります。更に、この薬剤を服用している人は肺炎にもかかりやすくなると考えられています。
・病院経費が高くなる
・病院で潰瘍治療薬を不適切に投与されている患者の約半数が、そのまま退院後も薬を処方され続けており、金額に換算すると年間500ドル(日本円で約6万円)の費用がかかっています。
・尿道カテーテル関連の尿路感染症により、米国では医療費が年間5億ドル(日本円で約600億円)も増加しています。
ご自分や親しい方が病院で入院しているならば、尿道カテーテルが本当にまだ必要なのかと毎日看護師や主治医に尋ねることが重要です。なぜなら、2日以上尿道カテーテルを留置している場合、感染症に罹患する危険性は急激に上昇するからです。
尿量を計測する方法はカテーテル以外にもあり、中でも成人用おむつが尿量管理に使用されるケースが多くみられます。男性には「コンドームカテーテル」という男性器に合う医療器具もあり、選択肢のひとつとなっています。
もし、あなた自身や、親しい人が消化管潰瘍治療薬を服用しているなら、ストレス性潰瘍の危険性が高いのかどうか尋ねてみましょう。
●病院について調べる
米国では20人に1人の患者が、院内で感染症にかかるといわれています。実際に病院に行く前に、インターネットなどで自宅付近の病院について調べてみましょう。
●手助けを頼む
病院内でも、友人や家族と過ごす時間を十分に持ちましょう。医師への質問の際に助けとなるほか、質問に対する回答をメモしてくれたり、自分の容態を注意深くみてくれるでしょう。
●手の清潔さを保つよう、依頼する
手を清潔にすることは、医療従事者が院内感染を予防する際、最も重要になる対策法のひとつです。しかし、研究により多くの医師や看護師がこの行為を軽視していることがわかっています。あなたの治療や介抱を担当する医療従事者が石鹸と水での丁寧な手洗いを怠っていたり、手指消毒剤を使用していないときには、手を洗うよう訴えましょう。
病院にお見舞いに行く場合も、手を清潔にしておかなければなりません。
●手術部位を剃毛する必要があるか聞く
感染症は小さな傷から起こり得るものです。
●声をあげよう
「一体何が起こっているのかわからない」、このように感じる時には、医療従事者に詳細を尋ねましょう。体に不快感や違和感を覚える場合は、躊躇せず声をあげることが大切です。病院においては、質問してはいけないということは何ひとつありません。
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 大阪医科大学医学部医学科 前田広太郎
監修:岸田直樹、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長
感染症コンサルタント 、北海道科学大学 薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medical Academy(SMA) 代表理事
日本感染症学会 感染症専門医・指導医日本内科学会 総合内科専門医日本化学療法学会 抗菌化学療法指導医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
“良き医学生・研修医教育が最も効率的な医療安全”をモットーに総合内科をベースに感染症のスペシャリティを生かして活動中。感染症のサブスペシャリティは最もコモンな免疫不全である“がん患者の感染症”。「自分が実感し体験した臨床の面白さをわかりやすく伝えたい」の一心でやっています。趣味は温泉めぐり、サッカー観戦(インテルファン)、物理学、村上春樹作品を読むこと。 医療におけるエンパワメントを推進する法人を立ち上げ活動している。
徳田 安春 先生の所属医療機関
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